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地域差を利用した米国ナレッジワーカーの新しい生き方

2004/04/22 09:30
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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アメリカには「必要ならば、生活コストの安い場所に移動する」という考え方が根強い。

アメリカに住むようになって何年かたち、アメリカ人の友達が増えてから、そういうことを実感するようになった。

Rich Karlgaardのコラム「Outsource Yourself」を読んで、そうそう、こういう考え方するアメリカ人って多いよな、と思った。

職住の地域差を鞘取りする

コラムのキーワードは、Geographic Arbitrage。Richはこれを、GeoArbと勝手に省略する。地域差の鞘取りだ。

「Thanks to technology, more American white-collar workers can engage in what we'll call Geographic Arbitrage (GeoArb). Let me explain. If you move to a small city like Bismarck or Biloxi and then insert yourself into the local salary structure, you really haven't gained much. You'll have lowered your cost of living, true, but more than likely your paycheck will also shrink.

But what if you could enjoy the best of both worlds--live in a small town and get paid like you're in a big city?」

生活コストの高いことが前提の「大都市圏標準サラリー」を稼ぎ、生活コストの安い田舎の小さい町に住むことで、2つの世界のいいとこ取りをしよう、というのがGeographic Arbitrageである。

80平米でも狭い

登場人物はシスコに勤める若いエンジニア、Renaud。

「As Renaud explains: "My wife, Janeen, and I met at Cisco. We lived in an 800-square-foot condominium in Palo Alto, which was fine while we were childless. But in 2001 we had a baby girl, and Janeen didn't want to go back to work. Suddenly our 800-square-foot condo seemed like a closet."」

若い夫婦は、パロアルトの800 square-footのコンドミニアムに住んでいた。Square-footというのはだいたい平米の1/10だから、出てくる数字のゼロを1つ取って平米をつけると、日本人の感覚で簡単に変換できる。80平米の家は、子供が生まれて、クローゼットのように狭く感じられた。

特に田舎育ちのアメリカ人は、土地だけはだだっ広い環境で育つということもあり、閉所に弱い。大学に入り都会に出てくると、まずは狭いアパートや寮に住むようになるが、家庭を持つと、それからは、いかにして「ある程度の広さ」の家に住むか、ということが、彼らのクオリティ・オブ・ライフを考える上で、ものすごく重要な要素になる。80平米で十分と、日本人のようには考えられないのである。

「In search of an affordable house, the Renauds thought about moving to such Bay Area exurbs as Livermore or San Ramon, where houses cost half as much as those closer to Cisco. But the commute along Interstate 680 is clogged and long. "I would never have seen my daughter during the week," says Renaud. That's when Renaud decided to risk a chat with his boss about moving out of state and telecommuting. The boss agreed--why not, he said, since Cisco makes products that permit just such remote work.」

そして、まずはシリコンバレーの中心地であるPalo Altoではなくて、通勤圏の近郊であるLivermoreやSan Ramonに移ることを検討するが、家のコストは半分程度にしか下がらない割に、渋滞がちのハイウェイでの通勤がきつく、平日は娘とも会えそうにない。職住接近で甘やかされているアメリカ人には、電車で片道1時間半以上かけての通勤なんて、考えられないのである。

シスコ流の在宅勤務を実現

そこで、カリフォルニア州を出て、在宅勤務で働く働き方について上司と相談。シスコも、顧客にそういう仕事スタイルを提案している手前、why not、ということになり、めでたく、彼は田舎に移り住むのだ。

「The Renauds then got out their maps of the U.S. Next they went on the Internet to evaluate home prices, school quality, recreation and local arts scenes. Janeen, a software engineer, even went so far as "data dipping" into FBI crime files, since safety was a high priority for the Renauds. In March 2003 the young family wound up buying a 5,000-square-foot house, with a 1,500-square-foot finished basement, on one acre of land. The house cost $600,000--just a bit more than their 800-square-foot condo in Palo Alto.」

そして、家の価格、学校の質、リクリエーションや地域文化、安全などを条件に、住む街を決め(実際には、Johnston, Iowa, ten miles northwest of Des Moines)、床面積約500平米、地下に150平米のスペース、土地は1エーカーという家を、60万ドルで購入。1エーカーは4,000平米くらい。アイオワのこの家と、パロアルトの80平米のコンドミニアムがだいたい同じ価格だ、ということである。

田舎で成り立つアメリカ

アメリカに住んでしばらくしてつくづく思うのは、アメリカという国は、ほぼすべて田舎で成立していて、その田舎の生活やエコノミクスを理解しないと、結局は何もわからないということ。Renaudsが選んだアイオワのこの地区は、かなりいいエリアであって、パロアルトに比べればうんと安いけれど、それでも高い。アメリカ全体を見渡せば、もっともっと広い家がもっともっと安い値段で買える田舎ばかりで、アメリカという国はできあがっている。

日本とは比べ物にならないほどの生活コストの地域差、特に単位面積あたりの住宅価格差が、アメリカには存在する。

よって、自ら生活コストの安い場所に移動して、もし以前と同じだけのサラリーを稼げれば、それは素晴らしいじゃないか、という考え方が極めて自然に出てくるのである。

「"We live like feudal lords," says Renaud. "My home office is larger than our condo." Better equipped, too. Renaud installed a 3-megabit cable modem, a Cisco IP phone and a Polycom ViaVideo-conferencing system that he uses to confer with his team members in Silicon Valley, Raleigh, Austin and Missoula. Once a month Renaud hops on a plane and spends three days in Silicon Valley or Raleigh.」

そして彼は、「feudal lords」、大名、封建領主のような暮らしをしつつ、昔の家よりも大きなホームオフィスで、IT武装によってシスコの各オフィスのチームと一緒に働いている。

「GeoArb」はナレッジワーカーの新しい生き方

Renaudの場合、

「He toiled for eight years at Cisco headquarters, met colleagues face-to-face and established a professional reputation and contact list.」

シスコでの8年間にわたる仕事を通して確立したプロとしての評判や人脈ゆえ、こうした新しいライフスタイルを勝ち得たわけだが、RichはGeoArbという概念を広く取って、

「GeoArb could become a way of life for millions of knowledge workers. Suppose you were forced to take early retirement from your glitzy white-collar job in a big city. What would you do? (略) In all likelihood you'd set up a home office and try your hand as a consultant. That's what 250,000 or more Americans have done since 2000.」

これが何百万人のナレッジワーカーにとっての新しい仕事の仕方なのだと結論づける。つまり、大都市圏での派手なホワイトカラーとしての仕事をアーリーリタイアしたら(これには解雇される場合も含まれる)、コストの安いところに移動し、ホームオフィスを作って、コンサルタント(つまり日雇いホワイトカラー)になる生き方である。

シリコンバレーに来てまもなく10年になるが、これまで日本の年配の方からいちばん多く受けた質問は、「シリコンバレーも若いときはいいかもしれませんが、中高年世代はシリコンバレーのどこに居るのですか?」というものであった。「一部の例外を除き、生活コストの安い地域に移動した」が正解。ただ、こう答えると、質問された方が何だか腑に落ちないという感じを示すのが常だったのであるが、アメリカというのは、そういうふうにできている国なのである。

だから、「Best Places For Business And Careers」なんていう特集が、毎年毎年、シリアスに組まれる。

ちなみに、昨年のベスト10は、Austin, TX、Boise, ID、Raleigh-Durham, NC、Atlanta, GA、Madison, WI、Provo, UT、Omaha, NE、Des Moines, IA、Dallas, TX、Washington, DC-Northern VA。

Renaudが移っていったJohnstonは、第8位「Des Moines, IA」の近郊である。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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