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インターネット時代をリードできない「PC世代の限界」

2004/04/21 09:08
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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1973年にゼロックスPARCで最初のPersonal Computer「Alto」を設計して作った4人組に「National Academy of Engineering's Draper Prize」が与えられた。「Meet the Movers Behind the First PC」によれば、

「Although few outside of the world of computer research might know who they are, Bob Taylor, Alan Kay, Charles "Chuck" Thacker, and Butler Lampson probably should be household names. These four are this year's winners of the prestigious Draper Prize, which recognizes contributions in engineering. As part of the first "class" of researchers at Xerox's Palo Alto Research Center in California in the 1970s, these technologists were key to the invention of the PC.」

受賞したのは、Bob Taylor、Alan Kay、Charles "Chuck" Thacker、Butler Lampsonの4人である。

「Together at PARC, the four designed and built in 1973 the first device that resembled what we now know as the personal computer. It's pretty much agreed that Taylor was the "impresario" who guided the project, Kay supplied the vision (including laptops and tablet PCs replete with wireless connections), Thacker engineered the computer known later as the Xerox Alto, and Lampson created its operating system.」

Taylorがプロジェクト・リーダー、Kayがビジョン提示、Thackerがハード、LampsonがOSを担当したという。

PCのビジョンを作ったPARCの研究者達

そして、PARCの研究者(この4人以外も含めて)について、

「That isn't all. Kay came up with many elements we now consider standard on any window-oriented system: icons, overlapping windows, and the concept of clickable objects on a desktop. Thacker's and Lampson's names appear--with those of two other PARC alumni, Bob Metcalfe and David Boggs--on the patent for the Ethernet networking standard. Another PARC colleague, Gary Starkweather, invented the laser printer, and still another, Charles Simonyi, created the first graphical word processor.」

Alan Kayは、現在は標準と考えられているウィンドウズ型のシステム、アイコン、ウィンドウのオーバーラップ、クリックできる机上オブジェクトといった概念を提示。Bob MetcalfeとDavid Boggsがイーサネット、Gary Starkweatheがレーザプリンタ、Charles Simonyiがグラフィカル・ワード・プロセッサを、それぞれ構想して開発した。

「Their basic goal was to invent what Apple later commercialized in 1984 with the Mac: "A computer for the rest of us."」

彼らが目指したのは、後にアップルがマックを称して「A computer for the rest of us.」と呼ぶようなものを発明することだった。「A computer for the rest of us.」というのは、アップルが自社ビジョンとして標榜し続けてきた言葉で懐かしい。

「But the foursome's work was more than that. The founding group of PARC researchers, under Taylor's guidance, envisioned and then invented the "office of the future." Much of what you see today at work and home comes from a four-year burst of creativity by fewer than 100 PARC researchers. The 2004 Draper Prize winners were recognized as the catalysts of that "golden age" of computer research.」

まさに、コンピュータ研究の黄金時代。先人たちの功績を心から称えたいと思う。

このBob Taylor、Alan Kay、Charles "Chuck" ThackerそしてButler Lampsonは今、

「Taylor retired in 1996.」

「Kay, a Hewlett-Packard Fellow and president of Viewpoints Research Institute, pursues an ongoing interest in childhood education.」

「Perhaps ironically, Lampson and Thacker both now work at Microsoft.」

Bob Taylorは引退、他の3人は、HPかマイクロソフトに勤めている。

ビジョナリーにも「PC世代の限界」

そしてもう1つ、この4人に未来のビジョンについて尋ねた記事「Tech Pioneers Preview the Future」がある。興味のある方は原文を当たっていただきたいが、この記事を読んで、僕は正直なところ、あまり感心しなかった。そしてそれは「PC世代の限界」によるものなのだろうなぁ、とも感じた。

別の例を出そう。僕が師匠(メンター)と仰いでいるGordon Bellという天才がいる。彼がいまマイクロソフトでやっているMyLifeBitsプロジェクトについては、本欄でも何回かご紹介した。しかし彼と話をしていて思うのは、彼ほどの天才にしてもなお、やはり世代的限界があるのだなぁ、ということだ。このMyLifeBitsプロジェクトは、「人生のさまざまな局面でのあれこれを皆ビット化、つまりコンピュータの中に記録してしまおうというプロジェクト」だが、プロジェクトをドライブしているGordonの情熱は、「ムーアの法則の継続によって厖大なコンピューティングリソースを個人が安価で所有できるようになる」「ものすごく高価なメインフレームやスーパーコンピュータを個人で所有できる時代になったじゃないか」という興奮から来ている。言うまでもなくコンピュータ産業史の2つの大きな節目は、PCとインターネットであるが、Gordonの場合、(そして、PARCの4人の場合も)、相変わらず第1の節目の延長線上での興奮が、彼の研究をドライブしているのである。ちなみに、Gordonとインターネットの話をしても、彼本来の天才的切れ味を感じたことはあまりない。

チャンドラーとGmailの違い

もう1つ例を出そう。本欄昨年11月13日「汎用ソフト開発で一攫千金を夢見る時代は終わった」で、Mitch Kaporへのインタビューを転載したが、彼も、PARCの4人より少し若い世代の、PC時代を切り拓いた先達の1人である。そして彼はいま「Chandler(チャンドラー)」という個人情報管理ソフトウエアを開発しており、

「チャンドラーは、パーソナルな情報マネジャーという縛りのなかで、パソコンのアプリケーションをゼロの状態から考え直すという試みです」

と語っているが、この試みと、GoogleのGmailとを比較してみるといい。世代間で根本的に発想が異なっていること、チャンドラーと比較してのGmailの斬新さが、よくおわかりいただけるであろう。Mitch Kaporには、インターネットの「あちら側」に情報マネジャーを置くなどというパラダイムシフトは発想できない。これが「PC世代の限界」なのである。Mitch Kaporには、Googleに居る連中に代表される若い世代の持つインターネット観は、醸成されていない。

「個」から「世界的なつながり」への変化

PC時代のキーワードは言うまでもなく「Personal」。個人のEmpowermentであった。しかしインターネット時代のキーワードは、「World Wide Web」の「ワールドワイド」であり、「ウェブ」であり、「ネット」だ。「個のEmpowerment」ではなくて、「世界中がつながった状況全体のEmpowerment」である。この感覚を心の底から持てないところに、「PC世代の限界」がある。評論程度のことであれば、勘さえ良ければ何とかついていける。でも何かを創造することはできないのである。よって、「PC世代」の創造者である先達たちが、今も引き続き何かを創造するためには、土地勘のある慣れ親しんだ世界でのイノベーションという枠の中にとどまらざるを得ないのだ。

世代の限界は、若いときからの「インターネットと向き合ってきたエネルギーの総量」ゆえに生じるのだと思う。インターネットは、実にインタンジブル(目に見えない)な世界だから、実際にそこにどっぷりと漬かった生活をしなければ、その本当に意味するところがわからない。

Googleがやりはじめていることも含め、次の時代の新しいコンピューティング環境を作り出すのは、中学や高校の頃からインターネットを当たり前のものとして育った、いま20代の若い世代なのだと思う。

そして、「物心ついた小学校の頃にはもうインターネットが存在していた」というさらに若い世代が、そろそろ大学生になる。

「世界中がつながった状況全体のEmpowerment」に関わるイノベーションは、これから、そういう世代の若い人たちによって本格的に生み出されてくるのである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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