最終更新時刻:2008年10月10日(金) 23時50分

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Gmailをめぐる、日本語ブログの質の高い考察

公開日時:
2004/04/12 09:17
著者:
umeda

吉岡さんが4月8日のダイアリーで、

「この一月くらいblogというか日記を書いてみて大昔「シリコンバレー日記」を書いていたころとの違いというか変化を実感した。日記を書くためにいろいろなblogとかを読んだのだけれど、恐いくらい面白いblogがいっぱいあった。すげーなあ」

「わたし自身はblogと日記の違いを厳密に意識していないので、おおざっぱにblogとしてくくると、この7〜8年の変化。

・圧倒的な量と質の向上

とてつもない数の良質なblogが氾濫している。当事者にしか語れない一次情報を発信する人々。有機的に絡み合う良質な議論がそこにはある」

と書かれている。僕にとっても、Blogが盛んになってきたことの本質は、この「圧倒的な量と質の向上」の面白さだと思う。

Gmailの理解を深める日本語Blog

今日は、Gmailをめぐって日本語で書かれた質の高い考察をご紹介しよう。

Keijiro Takahashi さんのRadium Software Development「The Google File System

井上俊一さんのエッセンシャル・サーチエンジン「メールサービスの運用について

川崎裕一さんのYublog「GmailでGoogleは何をしたいのか。

この3つを読めば、GoogleのGmailについての理解が、多角的に深まること請け合いである。

僕が先週火曜日に「Googleの本質は新時代のコンピュータメーカ」でご紹介したもともとの英文は、Topix.netの創業者兼CEOのRich Skrentaが書いた「The Secret Source of Google's Power」なので、この3つの日本語Blogを読んだ後に、改めてRich Skrentaの原文に当たると、若い人にとってはいい勉強になると思います。

Google File Systemの競争力

まず、Radium Software Development「The Google File System」は、Richの文章からリンクされていた「The Google File System」(PDFファイル)もきちんと読んだ上で、極めて本質的なこんな技術的な解説を書かれている。ぜひ本欄の読者の方々に読んでいただきたいので、長く引用する。Takahashi さん、お許しください。

「GFS は Linux システム上に構築される分散ファイルシステムであり,数百テラバイトの記憶領域に対して高速な読み書きアクセスと高い冗長性を提供する。分散の構造としては,ひとつのマスターサーバに対して数百のチャンクサーバがぶら下げられるようなものとなっている。マスターサーバはチャンクのインデクシングのみを行い,実データへのアクセスはクライアントとチャンクサーバが直接にやりとりすることによって実現される。マスターサーバを敢えて一個に限定することや,インデクシングに用いられるメタデータ構造を RAM 上に収めることなど,いくつかの「割り切り」を行うことによって比較的シンプルな設計を保つことができているようだ」

「Skrenta 氏が指摘しているのは,そのシステムの冗長性の高さと,管理コストの安さだ。 GFS は,各チャンクに対して標準で3つのレプリカを別々のチャンクサーバ上に作成する。このレプリカが破壊されると, GFS は自動的にレプリカの再構築を試みる。論文に提示されている例によれば, 600GB の容量を持つチャンクサーバをひとつ潰したところ,そのレプリカが再構築されるまでに 20 分程度の時間がかかったとのことだ。 20 分と言うと少し長めにも感じられるけれど,稼動しているアプリケーションに大きな影響を与えることなく,秒間 440MB もの速度で復帰を行うことができているのだから,大したものだと思う」

「更に重要なのは,この冗長性はサーバ単位によって実現されているということだ。 Skrenta 氏の指摘によれば, Google ほどの大規模システムにもなると,通常の RAID システムでは埒が明かなくなってしまう。故障の際にハードディスクを交換する手間がばかにならないし,そもそも RAID ハードウェアが比較的高価であることが問題となってしまう。その点, GFS のようなシンプルかつ自動化されたシステムならば,管理も比較的楽に行うことができる。 HeartBeat メッセージを送信してこなくなったブレードをラックから引っこ抜き,新しいブレードと交換するだけでいい。あとの復帰はファイルシステム側が勝手に行ってくれる。安価な専用ハードウェアを利用していることも重要なポイントだ」

「この GFS に代表されるようなウェブアプリケーション専用の大規模クラスタリング環境を確立できていることこそが Google の強みであると Skrenta 氏は指摘している。 Google の競合他社は, Google の提供する特定のサービスと張り合うことばかりを意識しており,汎用性のある技術的バックボーンを構築することに対して十分な関心を払うことができていない。パフォーマンスとコストがクリティカルな要素となるウェブアプリケーションの世界において,このような基礎技術の開発は非常に重要な任務となるはずだ。その点において Google に勝つことのできる企業が現れない限り, Google の天下は当分続くことになるのだろうと思う」

こういう文章が、Gmail発表からまもなく日本語で読めるのは、本当に素晴らしいことである。

フリーメール運用に関する課題

エッセンシャル・サーチエンジン「メールサービスの運用について」は、エキサイトのチーフ・テクノロジー・オフィサーである井上俊一さんならではの視点を体感することができる。ポータルを運用する立場の視点から、いかにフリーメールのサービス提供が大変であるかを6点にまとめられている。

「(1) システムが複雑である。サーチと比べると登録システムやバックエンドのメール送受信が加わる。

(2) システム構築・運用にコストがかかる。GoogleのGFSのように汎用的に出来たスケーラブルかつ冗長かつ安価なプラットフォームを使わない限り、通常の発想では非常に冗長な構成にならざるを得ない。もしメールが消えたりしたら例えフリーサービスであっても新聞沙汰になる(gooの例を思い出して欲しい)。

(3) ロイヤルユーザーが多いためサービスダウンやパフォーマンスの低下に非常に敏感。すなわちカスタマーサポートの量が非常に多い。これは登録型サービスの宿命だ。人間が答えない訳にはいかない。

(4) プライバシーに対してもきちんとした対応が必要。個人のプライバシーだけでなく、オークション詐欺などにフリーメールが使われるケースが非常に多く、法務部等がきちんとした誠実な対応を警察に対してする必要がある。

(5) メール機能について、各社の独自拡張や機能の誤実装、文字化けなどローカライゼーションに対しても迅速かつ適切に対応する必要がある。

(6) スパム対策やウィルス対策が必要となる。攻撃を受けることも多く、自動化できる部分と常に人が対応しないといけない部分がある」

そして、

「そこで私が思うに、「GFSがすばらしいのは分かった。Googleなら確かに安く出来るんだろう。でも実際に動いてこの目で見て、使って、安定していることを確認するまではなんとも言えない。」というのが正直な感想だ」

と書かれている。

Googleが、あるいはGoogleの競争者が、フリーメールサービス戦争において乗り越えなければ挑戦の質が、明確に列挙されて、見晴らしがよくなる。

Gmailで何をしたいのか

そして最後に、Yublog「GmailでGoogleは何をしたいのか。」は、きっと自分の頭で、自分の問題として考え抜いたのであろう、荒削りだがスリリングな論考である。冒頭に「長文失礼。妄想失礼。」とあるが、面白いから一気に読める。ぜひ原文を通読してください。文章の最後はこう締めくくられている。

「GmailはGoogleだからこそできるサービスであることは疑いようが無い。Adwords、それに基づくAdsenseがあるからこそ生きるサービスだ。では、似たようなアプローチを新興企業ができないのか、というとそういうわけでもなさそうだ。確かに分散コンピューティングのアプローチを用いたGoogleの検索技術のコスト優位性、このコスト優位性を横展開して行われているGmailに関しては圧倒的な優位性があることも理解できる」

「だがアフィリエイトプログラムとGmail的発想を組み合わせることで、日本の新興企業もできることはあるのではないかという仮説を自分は持っている。例えばAdsenseは洗練されたサービスである一方で、Amazonや楽天のアフィリエイトはお世辞にも洗練された仕組みには見えない。そしてそれを効率的に行うことのできるAPI公開とつなぎこみを行うためのウェブサービス周りを見ても、まだまだ洗練されてない。私がいう洗練されているものというのは、誰でもその恩恵に与れるサービスを示す。そこで、アフィリエイトは発展する可能性があると思うのである。ただ、まだここで書ける段階まで整理されていないので、そのうちに」

Blogで書くのがもったいないような素晴らしいプランに仕立てあげて、ぜひ新しい事業を生み出してください。

ベンチャーキャピタリストはBlogのチェックを

日本のベンチャーキャピタリスト諸氏よ。皆さんは、こういう質の高いBlogを書く人たちを、足を棒のようにして、ちゃんと訪ね歩いていますか?

クライナー・パーキンスのジョン・ドーアは、若き日に、スタンフォード大学の研究室に入り浸って、才能を持った尖った連中と長い長い時間を過ごし、彼ら彼女らが自分でも気づいていなかった才能や可能性を、引っ張り出したのである。日本に足りないのは、在野の才能ではなく、ベンチャーキャピタリスト側の才能発掘努力なのではありませんか?

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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