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ITが可能にする個人の自由と組織の効率の両立

2004/03/25 09:41
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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Ray Ozzieが、3月14日のBlogで、MITスローンスクール教授・Tom Malone氏の近著「The future of work」をほめている。Ozzieは

「Congrats to Tom Malone for the launch of The Future of Work, a terriffic look at how decentralization is affecting the nature of the organization, the structure of business and our work lives.」

こう書き、本の紹介サイトはこんなふうに始まる。

「Imagine organizations where bosses give employees huge freedom to decide what to do and when to do it. Imagine electing your own bosses and voting directly on important company decisions. Imagine organizations where most workers aren’t employees at all, but electronically connected freelancers living wherever they want to. And imagine that all this freedom in business lets people get more of whatever they really want in life—money, interesting work, helping other people, or time with their families.」

「自分がどこで何をやるかについて決める自由」を上司が部下に与える組織、上司を選挙し重要な企業の意思決定を直接選挙で決める組織、ほとんどのワーカーが従業員ではないが電子的につながっていて、皆が好きな場所でフリーランサーとして生きているような組織・・・をイメージせよ。

個人の自由と組織の効率を両方追求できるように

この本はどうやら、ビジネスにおける個人の自由度(どこに住んで、どういう働き方をして、どういう時間配分をして、何をするか)を最大限追及することが組織にとっても良いことなのだ、という思想に基づいた組織デザインがいまや可能となった、というような話なのではないかと想像できる。

「In The Future of Work, renowned organizational theorist Thomas W. Malone, codirector of MIT’s landmark initiative “Inventing the Organizations of the 21st Century,” shows where these things are already happening today and how—if we choose—they can happen much more in the future.」

確かにその予兆は、探せばいくらでもみつかるのではないか。特に小さい組織では、IT活用による分散化をすぐに組織と経営に反映しやすい。

「For the first time in history, says Malone, it will be possible to have the best of both worlds—the economic and scale efficiencies of large organizations, and the human benefits of small ones: freedom, motivation, and flexibility.」

歴史的にみて初めて、大組織の「the economic and scale efficiencies」と個人が持つ「freedom, motivation, and flexibility」との両方のいいとこ取りを目指す組織が生まれようとしているとMaloneは言う。

こういう表現はずいぶん昔からなされてきたから、ああまたそんな話かという風に思ってしまう人もいるかもしれないが、やっぱり改めてきちんと考えれば、こんな組織が追求可能なゴールに今なってきているのだと思う。

「Four decentralized organizational structures—loose hierarchies, democracies, external markets, and internal markets—that will be enabled by technology but centered around enduring human values」

「The shift from “command-and-control” management to “coordinate-and-cultivate,” and the new skills that will be required to succeed」

「A framework for determining if a company’s situation is ripe for decentralizing and which organizational structure would be most effective」

といったことがテーマになっているらしい。

面白そうだが、僕もまだ読んでいないので、紹介はこのくらいにするが、いずれ話題になる本かもしれません。Boston Globeの紹介記事もあわせてご参照ください。

組織の分散化をITで支援してきたOzzie

さて、OzzieのBlogに戻る。Ozzieはこの本に刺激を受けたのか、自分のやってきた仕事を振り返る。

「When we first launched Lotus Notes in the early 90's, it was an era of Reengineering The Corporation, in which companies were reducing the cost of coordination internally through business process reengineering. Companies embraced Lotus Notes, an advanced communications technology for the time, reflecting the changing nature of the organization from centralized hierarchical structures toward more decentralized work flows.」

90年代初め、Lotus Notesをローンチした頃、「Reengineering The Corporation」の時代であった。企業は、BPR(懐かしい言葉だ!)を通して、内部の調整コストを削減した。Lotus Notesはそれに寄与し、組織は分散化の方向に向かった。

「When I left Iris/Lotus/IBM in 1997, I did so primarily because in '95-'96 I saw, in our customers, the beginnings of something quite significant: they were extending their core business processes and practices outward to partners, suppliers, and in some cases even customers.」

97年にOzzieはLotusを買収したIBMを離れたわけだが、それは95-96年頃から、顧客たる企業が、コア・ビジネス・プロセスを、社内のみならず社外にまで拡張していくという重要な変化が起きていたから。

「When we launched Groove's V1 product in 2001 and began selling it to enterprises, our primary focus was on how it was an advance in decentralized communications that would reduce the cost of coordination externally in a manner not possible with technologies primarily designed for enterprise use.」

着実に変化するアメリカの組織

だからその流れに焦点を絞って、Grooveを2001年に出した。それ以来の彼のGroove事業経験から「組織は着実に変化している」とOzzieは実感し、読者に、あるプレゼンテーション(Powerpoint: 262KB)を読んでみるといいと薦めている。タイトルは、「A 360° View of the Distributed Workforce and Implications for the Future of Work/Life Initiatives」で、WFD Consultingというコンサルティング会社が用意した14ページほどの資料である。テーマは、会社に来ないで働く、という働き方の現状についてである。

この資料では、ワーカーを6種類に分類する。

(1) Ad hoc tele-workers - work from home occasionally (2 days/month avg.)---15%

(2) Regular tele-workers - work from home regularly (2 days/week avg.)---7%

(3) Remote workers - work primarily from home (4.5 days/week avg.)---4%

(4) Mobile workers - work from various locations---12%

(5) Customer site workers - work primarily from customer site---12%

(6) On-site workers---49%

(1)から(3)の違いは、家で仕事する比率。月に2日、週に2日、ほとんど全部家で、という3分類。(4)はフィールドを飛び回って働く人。(5)は顧客に張り付いている人。(6)は普通の勤め人である。横の比率は調査結果である。この6タイプについて、あれこれと分析をしていて、資料の最後の部分に、オフサイト・ワーク、つまり会社に来ないで働くことについての「Myths and Realities」(神話と現実)というまとめがある。サプライズはないが、よくまとまっている。Tom Maloneが「The future of work」で語っているのであろうビジョンと、このコンサルティング会社が用意した地に足のついた現実を比較して、これからどういう方向に向かうのかを考えればいいと思う。ここで大切なのは、「家で働く」ということの意味を、家族との関係で考えるということだろう。資料の中に、

「360° view: co-workers, managers, and family members all agree performance is as good or better than on-site colleagues.」

なんて文章も出てくる。

アメリカの大半は田舎である。ニューヨークのような都会のほうが珍しい。シリコンバレーだって田舎。日本の感覚からすれば皆ずいぶん広い家に住み(家では本当に働きやすいし能率が上がる)、車で会社に通勤する。都会と違って、会社のまわりには別に何も楽しいものはなく、会社だって日本に比べれば、べったりとしたコミュニティ感がうすい。そして、何事も家族が単位の国である。アメリカに住んで10年になるが、アメリカという国の組織は、OzzieがそのBlogの最後で

「This era is one of virtual work performed by a highly decentralized workforce.」

「It should reflect the changing nature of work, from the physical workplace, toward the decentralized workspace. And it most certainly will.」

こんなふうに言う方向に向かっているのを実感する。だからこそ、仕事仲間が近所に住んでいようが、地球の反対側に住んでいようと関係ない、ということになって、オフショアリングが進んでいくわけですけれど。

ライフスタイルと仕事の仕方も重要

さて最後に、先週の「年を取ってから後悔しない人生デザイン」で書き忘れたが、「好きなこと」「やりたいこと」「楽しめること」で「仕事の中身」を考えていくということに加えて、「家族と、どこでどんなふうに生きるのか」というライフスタイルのイメージと、理想的な「仕事の仕方のイメージ」(仕事している時間を、自分がどんなふうにどこで誰と過ごすのかのイメージ)とをマッチさせていく、ということがとても重要だと思う。「解脱状態」とも言えるほどの「好きなこと」「やりたいこと」を見つけてそれを仕事にするのではなく、そこそこ「好きなこと」の中から「得意なこと」「できること」を選んで仕事にしつつ「自分にあったライフスタイル」を追求する生き方も捨てがたい。さて自分はどうかと振り返って考えれば、僕の場合は「解脱状態」を目指して仕事をしてきたのではなく、この「そこそこ好きで得意なこととライフスタイルのハイブリッド型」を昔から目指してきたように思う。そしてこのライフスタイル実現へのITの貢献度ははかりしれない。

OzzieのBlog、Tom Maloneの「The future of work」が語る「仕事のDecentralization」というトレンドは、そんな可能性が、過去に比べてより大きくなってきたことを示しているのではないかと思う。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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