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僕も参考にしたEDVentureをCNETが買収

2004/03/22 09:27
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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CNET NetworksがEsther DysonのEDVenture Holdingsを、先週金曜日に買収した

「CNET Networks Inc. said Friday it acquired tech thinker Esther Dyson's EDventure Holdings for an undisclosed amount of cash and stock.」

買収金額は定かにされていないが、EDVenture Holdingsは「収益性の高いスモールビジネス」だから、金額的にはそれほど大きなトランザクションではなかろう。

「CNET, of San Francisco, said the acquisition advances its growth strategy by adding Dyson's "thought leadership and analytical prowess" to the company's editorial team, and adds to its stable of tech brands, which include News.com, ZDNet and TechRepublic.」

Esther Dysonの「Thought leadership」と「Analytical prowess」を編集チームに加えることで成長戦略を推進する、というのはその通りだろう。

「Dyson will become editor-at-large of CNET's Business Technology division.」

EstherはCNETのビジネス・テクノロジー部門の編集顧問みたいな役割を果たすようになるそうだ。

CNET Japanも、本社によるこの買収をうまくレバレッジして、より知的で斬新なテクノロジー・メディアを目指してほしいと思う。余談になるが、以前にADLという外資系コンサルティング会社の日本法人に勤めていて楽しかったのは、本社が「山椒は小粒でもぴりりと辛い」的な面白い会社を買収したときだった。会社に「新しい知」が加わったとき、その「新しい知」と日本法人の「地域のカバレッジ」を結びつければ、かなりの確率で面白い事業機会が生まれるからだ。仮に新事業を生むことができなかったとしても、それを構想するプロセスでさまざまなことを学ぶことができるし、新しい出会いがあった。CNET Japan幹部も、この機会を利用して何か面白いことをぜひ考えてください。

僕の独立に大きな影響を与えた会社

さて、Esther DysonのEDVenture Holdingsという会社は、IT産業・会員制高級倶楽部のようなものを運営している会社である。The Street.comの記事に、

「EDventure Holdings is best known for Release 1.0, a monthly newsletter devoted to new technology, and PC Forum, an annual gathering of industry movers and shakers.」

「The session is priced at $4,195 (hotel room not included); Release 1.0 subscriptions cost $795 annually.」

と書かれているように、EDVenture Holdingsの事業は、年間購読料795ドルのニュースレター「Release 1.0」の事業と、参加費4195ドルのフォーラムを年1回開催するコンファレンス事業からなっている。実は、EDVenture Holdingという会社は、僕が自分の力で生まれて始めて立ち上げた小さい事業(企業内新規事業みたいなもの)に多大な影響を与えてくれた会社だった。今日はそんな話をしてみたい。

僕がADLでまだ駆け出しのコンサルタントだった1991年から1992年、社内のエクスチェンジ・プログラムに応募してサンフランシスコ事務所で1年間、修行する機会を得た(ちなみに僕の直前に、そのエクスチェンジ・プログラムでADLボストン本社に行ったのが、若かりし頃のネットエイジの西川潔社長である)。

多くのコンサルタントが「産業に特化したコンサルタント」になるのを嫌がる中、僕は皆と違って、「シリコンバレー、コンピュータ産業」という切り口に特化した仕事を、できるものなら続けていきたいと考えていた。それで、アメリカでさまざまなものを観察する中で、自分の将来のロールモデルとして見出したのが、このEsther DysonがやっていたEDVenture Holdingsという会社と、Regis McKennaがやっていたハイテク産業に特化したブティック・コンサルティング会社だった。

だから、このEDVenture Holdingsの事業というのは、当時、隅から隅まで、穴があくほど勉強した。だってものすごい儲かり方をしている会社で、気になって気になって仕方なかったからだ。もちろんベンチャー・ビジネスではなくてスモールビジネスだったけれど。

当時は、ニュースレターの年間購読料が500ドル。フォーラム参加費が2500ドルくらいだったと記憶している。ニュースレター発行部数5000部で250万ドル。フォーラムには500人は参加していたから、それ一発で125万ドル。ざっくりいえば、売り上げ数億円規模の、固定費構造のものすごく小さくてすむ、1人ビジネスに限りなく近いスモールビジネスが、目の前に存在していたからだった。

実は、当時のADL日本法人も、ADL全体も、コンピュータ産業プラクティスはあんまり強くなかった。だから、サンフランシスコから日本に帰った後、コンピュータ産業に特化したコンサルティングをやるためには、自分でプラクティスを立ち上げなければならない。どうしようかとサンフランシスコでいつも考えていたのだが、そのヒントになったのが、このEsther Dysonのビジネスモデルだった。

日本流にビジネスモデルをアレンジ

しかし、同じビジネスモデルを日本に持ってくることは絶対に無理であった。なぜなら、日本は大企業中心のコンピュータ産業で、しかも個人という概念がないから、いくらいいニュースレターを5万円か10万円で発行しても、会社のある部門が買って、社内で全部コピーして回覧されてしまう。特にページ数の少ないニュースレターは、すぐコピーできちゃうので、きつい。アメリカの場合は産業全体がベンチャー中心で、しかも人が動くから、個人を単位としたニュースレター事業が成立するけれど、日本ではダメだ。またEsther Dysonのフォーラムも、2泊3日、リゾート地でやって宿泊費以外で30万円取るわけだが、これも日本では無理。

そこで、帰国してすぐ、1993年に立ち上げた「ADL情報電子産業フォーラム」という新事業では、次のようにビジネスモデルを日本流にアレンジした。

「フォーラムは年1回ではなくて毎月1回、3時間、都内のホテルで開催。ニュースレター形式で送付するのではなくて、毎月、コンピュータ産業の最先端で何が起こっているか、日本企業にとってのその意味についての報告書を用意して、その報告会をフェース・トゥ・フェースで行なうという形にする。参加費用は1社年間200万円。その200万円で会員企業になれば席を2席確保。3席目以降は1社50万円追加。毎月、その会社から同じ人が参加してもいいし、違う部門の人が参加してもいい。3カ月に1回は、参加企業のメンバーの人達との懇親会と、役員クラスの人を対象とした朝食会を開催する」というものだった。詳しくは説明しないが、日本企業がどういうタイプのカネなら気前よく支払い、どういうタイプのカネならびた一文出さないかを、考え抜いたモデルで、これがうまく当たった。ものすごい量の営業活動は、もちろんしましたけれど。

そして最盛期はこの事業だけで売り上げ1億円を超えたが、もっと良かったのは、このフォーラム事業をやっていることが、そのまま大型コンサルティング・プロジェクトのセールス活動にもつながったこと。またそれと同時に、日本企業の中核をなす人達との強いネットワーキングができたことだった。このフォーラムは1993年から、僕がADLを退社して独立する1997年まで続けたのだが、会員となった日本企業からの参加者は40代の部長クラス、役員になったばかりの50代前半の人たち。性格的に共通するのは、世界の動きに敏感で(ドメスティック営業系ではなく国際派、アメリカ派)、自社の現状に強い危機感を抱いている人達ばかりだった。そういうタイプの50代前半の人たちが、90年代後半に日本企業が苦境に陥るに伴い、その再建のために皆、副社長、社長へと引き立てられていき、そういうタイプの40代の人たちが皆、役員になっていった。

ED Ventureと僕とCNETの奇妙な縁

Esther DysonのEDVenture Holdingsの事業に刺激を受けて、93年に「ADL情報電子産業フォーラム」を立ち上げていなかったら、僕はきっと今とは全く違う仕事をしていただろうと思う。(ただ、97年に独立してシリコンバレーに作ったMUSE Associatesというコンサルティング会社の事業モデルは、EDVenture Holdingsよりも、Regis McKennaがやっていたブティック・コンサルティング会社の事業モデルのほうを、構想の土台にした。インターネットの勃興で、パッケージ情報提供型のスモールビジネスには将来性がないと確信したから。同じようなフォーラムをMUSEの名前で始めようかとも創業時にずいぶん真剣に悩んだが、結局は踏み切らなかった。今から思えば、それは正しい判断だった)。そして今ここでこうして毎日連載を続けている「CNET」という媒体が、その「EDVenture Holdings」を買収するとは。なんと奇縁だなぁと感慨深く、思わず懐かしくなってしまいました。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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