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世界に広がる人力分散システム

2004/03/11 10:43
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プロフィール

umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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[ゲスト] 川野俊充 Toshimitsu Kawano
3月8日(月)〜3月12日(金)までの間、梅田望夫さんの代わりに川野俊充さんがゲストブロガーとして登板します。川野さんは梅田さんと同様シリコンバレーでコンサルタントをされています。P2PソフトのGnutellaの日本版を開発するJnutella.orgでの活動で知られるほか、テクニカルライターとしても活躍しています。川野さんの経歴については川野さんが運営するAbacus::blogをご覧下さい。

さて、Guest Blogもあっという間に今日で4日目。今日はこれまでに頂いたトラックバックやコメントなどから刺激を受けたものをいくつか紹介させていただく事にしよう。今回ここでご紹介できない方も、折りをみて私の個人ブログでこぼれ話を交えながらご紹介したいと思っている。今後もよろしくお願いします。

人手をスケール化してしまう人力分散系オンラインプロジェクト

まずは「辺境から戯れ言」さんから頂いたコメント、分散コンピューティングいろいろで「各種分散コンピューティングプロジェクトの紹介-人力系」を紹介していただいたが、そこには私が紹介した「はてな」や「Linuxのバザール型開発」以外の様々な人力分散系のオンラインプロジェクトが整理されている。

日本語のインターネット図書館である青空文庫では著作権の消滅した作品と、「自由に読んでもらってかまわない」とされたものを、テキストとHTML形式で提供されており、活動に賛同したボランティアが青空文庫でまだ公開されていなく、入力中でないものを選びメールで連絡後、入力・校正することでコンテンツが整備されている。現在の収録作品数は3683点。

Wikipediaは誰もがエントリを追加できるフリーの百科事典だ。利用は無料で用途は商用も含め完全に自由である。

「Wikipedia is an encyclopedia written collaboratively by its readers. The site is a WikiWiki, meaning that anyone, including you, can also edit any article right now by clicking on the Edit this page link that appears in every Wikipedia article.」

2001年の1月に始まったプロジェクトが現在英語では22万項目まで成長し、日本語版を含めて69カ国語でのエントリ入力作業が進められている。システムの運用には公開されているウェブページを閲覧者が簡単に編集を加えて保存ができるWikiWikiが利用されており、閲覧と編集が思いのままにできる仕様がプロジェクトの性質とぴたりマッチしている。

Open Directoryはインターネット上にあるページの分類を人手で行うオープンディレクトリだ。

「The Open Directory Project is the largest, most comprehensive human-edited directory of the Web. It is constructed and maintained by a vast, global community of volunteer editors.」

これはいわば黎明期のYahoo!がURLを人手で1つずつ分類してデータベースに入れていた頃の作業をインターネットに繋がった「膨大に増え続けるネチズン」にボランティアベースで行ってもらうというものだ。(実は筆者も学生時代、設立直後のYahoo! JapanでURLを分類するアルバイトをしたことがあるが、この仕事、聞くとつまらない単純作業の様に思えるが、少しやってみると実に頭を使う知的な作業だった事に驚いた。ディレクトリ構造をイメージしながら、新しいコンテンツをどこにマッピングすべきか、あるいはマップそのものを広げる(ディレクトリを掘る)べきか、それがディレクトリ全体にどのような意味を与えるのか、結構クリエイティビティを出す余地があるのだ)。

「The web continues to grow at staggering rates. Automated search engines are increasingly unable to turn up useful results to search queries. The small paid editorial staffs at commercial directory sites can't keep up with submissions, and the quality and comprehensiveness of their directories has suffered. Link rot is setting in and they can't keep pace with the growth of the Internet.」

このプロジェクトのモチベーションは、急激に増え続けていくウェブを検索する手段としてGoogleなどの自動化された検索エンジンが次第に有用な検索結果を出せなくなる、という仮説に基づいている。この仮説はとてもここで議論しきれる話ではないが、直感的には「単一のロジックをシステムで膨大にスケール化することにより、人には生み出せない知識のマップを作ろうとするアプローチ」と「少しずつ知恵を出し合う人の頭数をインターネットで膨大にスケール化することで機械には生み出せない知恵のマップを作ろうとするアプローチ」の違いになるのだと思う。いずれかがより優れている、という話ではなく、どう共存して行くのか、得意/不得意の差がどう出てくるかが非常に興味深い。

ビジネスモデルとしての人力分散系

上記のプロジェクトを一歩引いて眺めると、どれも「人手を集める対価はプロジェクトの成果を享受できることで支払う仕掛け」で動いていて、プロジェクトの大きさがあるクリティカルマスを超えれば、あとは放っておいてもコンテンツや成果が自己増殖して行くという期待に基づいていることが分かる。

先日紹介した「Linuxのバザール型開発」も同じモデルだが、「人力検索はてな」だけはちょっと異なる。人手を集める対価とプロジェクトの成果を享受する仕組みの間にポイント制を導入し、そのポイントをカネと交換できるようにしているところだ。つまり、誰かに検索をやってもらうためにはポイントを購入してそれを使ってもいいし、誰かの検索をやってあげることでポイントを稼いでそれを使ってもいい。ビジネスの観点から「はてな」を見たときに、モデルとして画期的なのは、「はてな」が単に人手の仲介業をしているだけではなく、そこで起こったトランザクションによる成果(知恵:この場合は質問とその答え)が「はてな」に蓄積されて行くところだ。この蓄積がクリティカルマスを超えれば、ビジネスの次のステップに向けたタネになる。

これはオークションサイトeBayがそこでの売買によって生じた物品の膨大な取引情報を記録/分析する事で「商品の時価」を再販するビジネスを始めた事とちょうど対応する。

「Developed in collaboration with PGA.com, the official online home of the PGA of America, eBay, one of the world's largest online marketplaces for golf equipment, and 3balls.com, a leading online retailer and eBay PowerSeller of like-new and used golf equipment, the PGA.com Value Guide seeks to provide golfers with a National Standard Source for credible and continually updated golf club Trade-In and Re-Sale values.」(PGA Value Guide)

米国のゴルフ協会PGA.comがeBayからの価格情報と3balls.comからの商品情報を組み合わせて、新品/中古品のゴルフクラブの適正価格を情報提供するサービス「PGA.com Value Guide」を始めた事はeBayのデータ再販ビジネスの一例として注目されている。

WikipediaもOpen Directoryもサービスをお金儲けの手段にしないというモデルだからこそ共感する人が増えて、プロジェクトとして成長して行っていることは間違いないが、そこには大きな問題として「ただ乗りと搾取の構造」があることも事実だ。つまり、一部のボランティアの(往々にして自己満足に根ざした)貢献にその他大勢のただ乗りユーザがぶら下がっているという構造だ。これはP2P系の分散ファイル共有システムでもこれまでに散々指摘されて来た問題であり、Blogによるネット上への知識・知恵の提供についても村山さんが「電池系」と表現されていたり、梅田さんが「心理的負担」と表現されていた問題の本質のように思う。

これを解決する方法は例えば「はてな」的な仕組みであり、伝播投資貨幣であるPICSYのような発想になると私は思うのだが、この仕組みを一気に成長させるためには、オタクパワーというか、強烈な「自己満足」が自己増殖していくところに、「等価交換の仕掛け:ベネフィットを享受するためには貢献をするか、カネを払う」を突っ込む事が鍵になるのではないかと思う

その意味で「本日の寝言〜現在過去未来も、何か夢見ちゃってます」で紋次郎さんから頂いたトラックバックはこうした「未開拓の自己満足パワー」の広がりの可能性を感じさせる内容だった。

「「やおい」は一ジャンルに過ぎず、流行したり社会現象になったことなどないし、まして市民権など得てないと思ってましたが、そう思ってるのは当の日本の女の子だけで、やおいは「YAOI」として世界に広がってたんですね。

ありえない・・・・

つか、このあたりが発展したとしてもどういうカタチで社会に貢献出来るのか想像もつきません」

いや、「好き」を共有できる人の数がある大きさを超えるとそれだけで社会現象になるのだと思います。言葉の壁はあるかもしれませんが、ネットでちょっと海の向こう側を覗いてみてください。そこには自分たちと同じ価値観を持つ人たちが大勢いるはずですよ。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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