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iPodを可能にしたAppleのデザイン至上主義

2004/03/10 09:13
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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3月8日(月)〜3月12日(金)までの間、梅田望夫さんの代わりに川野俊充さんがゲストブロガーとして登板します。川野さんは梅田さんと同様シリコンバレーでコンサルタントをされています。P2PソフトのGnutellaの日本版を開発するJnutella.orgでの活動で知られるほか、テクニカルライターとしても活躍しています。川野さんの経歴については川野さんが運営するAbacus::blogをご覧下さい。

2004年の第1四半期に7000万ドルの粗利をあげたとされるAppleのiPodはいま最も売れているポータブル音楽プレーヤである。iTunes Music Storeとの「逆カミソリと刃戦略」がビジネスとしての成功要因だとする議論には私も同感だが、プロダクトとしてみた場合、私は「デザイン」を抜きにしてiPodの成功を語る事はできないと思う。

iPodの開発はアウトソースに近い形で始まった

ちょっと古い記事になるが、昨日MyAppleMenuに紹介されていたElectronics Design Chain Magazineの「Inside The Apple iPod Design Triumph」を読んでみよう。AppleがiPodの開発のかなりの部分を外部の企業に委託していたという結構意外な事実が語られている。結論は「自社の強みである『デザイン』にフォーカスし、実現手段にリスクを取らず、必要であればアウトソースをする」という話だ。まあ、書いてしまうと実に単純だが、実行するのはなかなか難しいはずだ。

「It turns out that much of the underlying iPod design was performed by outside companies. The Cupertino folk haven't given up on their heritage of design excellence―they're just bowing to some inevitable directions in consumer electronics by borrowing from established experts linked together for what may be the first design chain for the iPod.」

AppleがiPodのために採用したデザインチェーンアプローチ

iPodの構想があがった当時、まだMP3マーケットが未成熟だったことを考慮し、AppleはiPodのためにアーリーステージの市場にあわせた階層型のデザインチェーン手法をとった。特にAppleにとって画期的だったのは、サードパーティであるPortalPlayerのプラットフォームとレファレンスデザインをiPodに採用したという事だ。

「Realizing that the MP3 market was still in its infancy, Apple developed a layered design chain tuned for an early-stage market to create the iPod. Even more unusual for Apple, it relied on a platform and reference design created by a third party, PortalPlayer, of Santa Clara, Calif. Founded in 1999, PortalPlayer has a stellar cast of Silicon Valley executives and investors, including renowned venture capitalist Gordon Campbell.」

このPortalPlayerが「音質」で他の競合から抜きんでいたことが、Appleに採用される決め手となった。パートナーになった後はこのPortalPlayerが他のサードパーティの選定を行い、デザインプロセスをマネージしたらしい。

「"First and foremost, the product was elegantly designed in classic Apple fashion," says David Carey, president of Portelligent. "They did product design from the outside in." Carey says the company had a vision of what the player should be and what it should look like. The subsequent design parameters were dictated by its appearance and form factor.」

出来上がったiPod(初代)の中身を開けてみると、伝統的なApple様式で美しくデザインされており、「外側から」デザインされた事が分かるという。大切なのは「Appleは携帯音楽プレーヤーとはなんであり、どう見えるべきかという明確なビジョンを持っている」ということだ。その見かけとフォームファクターが決まってから、他のデザインパラメーターが決められて行く。

何を優先するかというポジションをここまで明確に出しているメーカはあまりないかもしれない。

一方で、iPodの開発においてAppleがはっきりと拒否したのはASICなどを作って小型化、省電力化を図ること。これは市場が未成熟で出荷台数の見積もりが立てられない当時としては正しい判断だったと思う

「What Apple conspicuously did not do is use an ASIC or other custom chip to integrate all the functions it needed onto one piece of silicon, which would have presumably saved space and battery life.」

開発期間が長くなってしまったり、開発のトラブルが起こったりするリスクをできるだけ取らないというAppleの明確な姿勢は、ともすると、こういうところで技術力を見せてしまいたくなる日本のコンシューマーエレクトロニクスメーカーに取っては耳が痛い話かもしれない。

ちなみに新しいiPod miniはあの大きさを見る限り、カスタムチップなどが入っている可能性がある。興味のある人は「バラシ」サイトもいろいろとあるようなので確認してみると面白いかもしれない(Sotto Voceで村山さんが紹介されていたiPodloungeのバラシはかなり丁寧だったものの、残念ながらチップまでは見えなかったので見つけた人はぜひ教えてください)。

自社の強みを自覚してそこにフォーカスする

バッテリーはソニー、Codec、DACはWolfson、ディスクドライブは東芝、FirewireはTI、パワーマネージメントはLinear Technologyと多くのパートナー企業をまとめ、PortalPlayerがレファレンスデザインを行ったとはいえ、AppleがiPodを開発した事には変わらない。レファレンスデザインは最終製品とはほど遠く、音質やパフォーマンスを最高の状態に最適化する事は決して簡単な仕事ではないからだ。

「It would be a huge mistake to assume that all the design work happened elsewhere and that Apple had no substantial input. A reference design is far from having a finished product, even electronically. The ultimate circuit design was still Apple's, as far as any outsider can tell.」

結局AppleがiPodというお化けプロダクトを開発し得た成功要因は

・あるべき製品のビジョンが明確
・自社の強みであるデザインとユーザーインターフェースの設計にフォーカスした
・その強みを活かし、開発期間を短くするためにアウトソースを戦略的に実行した

の3つに集約できる(文字にしてしまうと何とも単純だが)。

「Choosing a development platform allowed Apple to focus on its true genius for form factors and user interfaces. "Those two are Apple's strengths," says Vinay Asgekar, director of research for semiconductor and high tech at Boston-based AMR Research. "Apple knows how to make a high-tech product consumer friendly. That has been its core strength from the introduction of the Apple Macintosh. That could be its strategy for iPod."」

「フォームファクターとユーザーインターフェースのデザインの2つがAppleの強み」であることはいまさら強調する事でもないが、ここまで強みを明確に打ち出せる企業があまり多くない事も事実だ。どうやってこの強みを維持するか、もしかするとそこにAppleから学べる事があるかもしれない。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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