お使いのブラウザは最新版ではありません。最新のブラウザでご覧ください。

CNET Japan ブログ

ハッカーたちの憧れと不安

2004/03/08 09:10
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
ブログ管理

最近のエントリー

[ゲスト] 川野俊充 Toshimitsu Kawano
3月8日(月)〜3月12日(金)までの間、梅田望夫さんの代わりに川野俊充さんがゲストブロガーとして登板します。川野さんは梅田さんと同様シリコンバレーでコンサルタントをされています。P2PソフトのGnutellaの日本版を開発するJnutella.orgでの活動で知られるほか、テクニカルライターとしても活躍しています。川野さんの経歴については川野さんが運営するAbacus::blogをご覧下さい。

これから5回に渡ってゲストブロガーを務めさせていただきます川野です。ベイエリアに住み始めて3年近く経ちました。このあたりは天気がいいのは嬉しいのですが、日本の美味しい食べ物が恋しくて仕方がありません。離れてみると、日本は本当に食に恵まれた国であることを改めて痛感します。ここで食べ物の話はしませんが、これから少しの間、私の「IT×米国」関連の話にどうかお付き合いください。

さて、第1回目は先日参加して来たCODECON: "The de facto hacker conference for cutting edge applications with working code - codecon.org(実装が進んでいる先進的なアプリケーションを発表する、デファクトハッカーカンファレンス)"で出会ったハッカーたちから感じた「エッジでの憧れと不安」をお届けします。

使いにくくなってきているインターネット

長髪+髭、ストーンウォッシュのジーンズ、くたびれたTシャツになぜかネルシャツという、漫画に出てきそうな出で立ちのハッカーたちが集まっている会場で、名刺交換をしながら参加者と話をしていると、いくつかのトピックが話題になっていることに気がつく。

1つは、『最近インターネットが使いにくい』という話である(文中の『』はCODECONの参加者たちから筆者の耳に入って来た声)。確かに、このところメールボックスやIMにはスパムが溢れ、ウェブでは行き先を間違うと邪魔なポップアップがどかどか開いたり、ウイルスをダウンロードさせられてしまうことが多い。もちろん、アンチスパムやウイルス対策ソフトで対処はできるものの、『対策する労力が惜しい』と思うのはハッカーばかりではない。

また、最近はネット上で何をやっても監視されている感覚があることに嫌悪感を感じている声もちらほら聞こえて来た。企業はアクセスデータなど、あらゆるデータ活用の重要性を訴える中、『(なるべくログが取られないような方法でアクセスする事などで)自分のプライバシーを守るのに本当に手間ばかりかかって仕方が無い』という。

つまり、ネット上のノイズが増えてゴミ溜めのようになって来ているし、「マイノリティーリポート」的な管理社会の足音も聞こえて来ていると、エッジにいる人たちには感じられるのだ。

待っていても誰かが解決してくれる訳ではない

CODECONで3日間に渡って発表を行った15のチームのうち4チームがこうした問題に対処するセキュリティ関連のトピックだった。

PETmail - Permission-based anti-spam replacement for SMTP

Petmail is a permission-based anti-spam replacement for SMTP, using recipient-defined CAPTCHA challenges for new senders, automatic (but revocable) permission-granting for most correspondents, encrypted and signed (but pseudonymous) messages, and provisions for easily changing addresses or transports (including a mechanism to publish remailer SURBs as a destination).


Tor - Second-generation Onion Routing: a TCP-based anonymizing overlay network

Onion Routing is a distributed overlay network designed to anonymize TCP-based applications like web browsing, secure shell, and instant messaging. Clients choose a path through the network and build a circuit, in which each node (or “onion router” or “OR”) in the path knows its predecessor and successor, but no other nodes in the circuit.


OSIRIS - A free Host Integrity Monitor designed for large scale server deployments that require auditable security.

Osiris is a Host Integrity Management System that periodically monitors one or more hosts for change. It maintains detailed logs of changes to the file system, user and group lists, resident kernel modules, and more. Osiris can be configured to email these logs to the administrator. Hosts are periodically scanned and, if desired, the records can be maintained for forensic purposes. Osiris keeps an administrator apprised of possible attacks and/or nasty little trojans. The purpose here is to isolate changes that indicate a break-in or a compromised system. Osiris makes use of OpenSSL for encryption and authentication in all components.


PGP Universal - Automatic, transparent email encryption with zero clicks.

PGP Universal is the world's first security architecture to shift the burden of securing email messages and attachments from the desktop to the network in a way that is automatic and entirely transparent to users. PGP Universal makes it easy to centrally enforce two-way policy, and its Self-Managing Security Architecture (SMSA) provides excellent scalability with little overhead.

それぞれ、CAPTCHA認証を行うアンチスパムSMTP、TCPベースの匿名性を実現するオニオンルーティングプロトコル、ホストの改ざんを防ぐための監視システム、PGPによるメールの暗号化をネットワークレベルに押し込むソリューションである。これらの発表を聞いていて、技術的な面白さよりもむしろ印象的だったのはハッカーたちから「自分たちでインターネットを守る」という確かな意思が伝わってくるということだった。例えばTorの開発者は次のように自己紹介した。

「When I talk to people like you, I say "we work on anonymity software". When I talk to my grandmother, I say "I work on privacy software". When I talk to companies, I say "we work on security software". When I talk to the government, I say "we work on traffic analysis resistant communications network" (Roger Dingledine)」

つまり、「立場によって理由は異なるが、ぼくたちは(健全なネット生活を送るために)みんなが必要としているソフトウェアを作っている」ということなのである。

結局Googleよ、お前もか

もう1つ、印象に残った話題はGoogleのポータル化を面白くないと感じている人がいる、ということだった。

『これまでYahoo!などのパーソナリゼーションポータルに行動を監視されたくない場合は、機能ごとにサービスを変えたりすればとりあえずは良かった。そういう意味で、Googleの美しいところは単機能でシンプルなところだったんだ。それが今やニュースがあり、ショッピングがあり、広告があり、Blogがあり、Social Network Serviceがあり、e-mailも間もなく導入されようとしている。あとIMを持てば、それはポータルサービスそのものだよ』

確かにサーチ三つ巴時代突入を目前にGoogleが打っている手はずを見ると、「ポータル化はしない」というGoogleのこれまでの主張にはあまり説得力が無い。

『それにorkut.comの約款みた?あれじゃあ将来orkut.comで食わせたクッキーをGoogleでも読みますって言っているようなもんだよな。政府がGoogleのビジネスの大きな収入源になっているという噂もあるし、誰が何を検索したか分かるだなんて、なんか感じ悪いよな。例えば爆弾の作り方を一生懸命Googleで調べたりしていたらCIAに踏み込まれたりするかもよ』

いろいろなところで話題となっているorkut.comの約款の一部

「By submitting, posting or displaying any Materials on or through the orkut.com service, you automatically grant to us a worldwide, non-exclusive, sublicenseable, transferable, royalty-free, perpetual, irrevocable right to copy, distribute, create derivative works of, publicly perform and display such Materials.」

でもやっぱりGoogleは憎めないあこがれの存在

もちろん、これは所詮飲み会でのヨタ話に過ぎないのだが(実際に確認してみると、今のところorkut.comから食わされるのは、セッションごとにエクスパイアするセッション管理用のクッキーのみだった)、そういう憶測が彼らから出てくることから分かるのは、前回の記事で梅田さんも指摘されていた「公開を間近にすると、企業経営は変貌を遂げる」ことをギークたちも肌で感じている、ということなのだと思う。

CODECONで象徴的だったのはメインのスポンサーがGoogleとAnonymizer.comの2社だったということ。公開して『帝国側』に行ってしまうことが心配されているGoogleと、匿名アクセスを実現するプロキシサービス(通称:串)の草分けで反乱軍の一派とも言えるAnonymizer.com。この両者がハッカーカンファレンスを支えているのは『すごいことのような、皮肉なことのような』微妙な感覚だ。

『確かにGoogleはこれからどんどん変わるだろうし、その変化の一つに"One of them (MSN and Yahoo!)"になるという方向もあるかもしれない。それでもやっぱりGoogleはクールでいけてる会社であることには変わりないよ。Googleに就職した同級生たちのことをうらやましいと思うし、雇ってくれるならぼくも喜んでGoogleに行くさ』

orkut.comのラウンチパーティで出会った職探し中というスタンフォードの卒業生の言葉にも、Googleに対する憧れと不安が混じっていたことが印象的だった。

ところで、Googleがこのハッカーカンファレンスをスポンサーする意図は明確。

「Googleではいま人をどんどん採用しているので、腕に覚えがある人はぜひ応募してください。今日このCODECONに来ている人たちのレジュメは絶対に見るから私のメールアドレスまで直接送ってくださいね」

そう、人材発掘だ。GoogleにはCODECONに集まってくるような凄腕ハッカーたちを社内に迎え続けることが自社の競争優位の源泉になっているという自覚があるのだ。帝国側に回るかどうかはさておき、Googleがこの自覚を持ち続ける限り、面白くエキサイティングな組織であり続けることは間違いない。

ちなみに、CODECONのサイトにカンファレンス3日分のオーディオアーカイブが最近アップロードされた。興味のある人はmp3ファイルを聞いてみると英語の耳を鍛えるトレーニングにもなるだろう。BitTorrentで300MBのダウンロードだ。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
運営事務局に問題を報告

最新ブログエントリー

個人情報保護方針
利用規約
訂正
広告について
運営会社