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オフショア開発で明暗別れるプログラマーのキャリア

2004/03/01 09:35
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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Business Week誌最新号のカバーストーリーは、題して「SOFTWARE」である。サブタイトルは、

「Programming jobs are heading overseas by the thousands. Is there a way for the U.S. to stay on top?」

米国にとってのソフトウェアは、日本にとっての製造業と同じような意味合いを持っているから、昨今のインド、中国への仕事のシフトは、米国にとって本当に深刻な問題なのである。ここから雑誌全体の目次が見られて、それぞれの記事や図表へのリンクもたどれる。まずは記事の中に挿入された図表の中から、ソフトウェア・ピラミッドを、ご紹介することにしよう。

米国300万プログラマーのピラミッド構造

まず、「Software programming is the iconic jobs of the Information Age, but not all programmers are created equal. Here’s the breakdown of software jobs and their prospects」と書かれているように、この図では、ソフトウェアに関する仕事のピラミッドを6階層に分類し、それぞれの階層ごとの今後について一覧したものである。ちなみに、米国全体では約300万人が、このピラミッドにどこかに位置している。

まず、頂点に位置するのが、Architect階層(第1階層)である。「A few thousand tech visionaries sketch out entire systems to handle complex jobs.」というわけで、この階層は数千人の世界。例としては、BEA SystemsのChief ArchitectのAdam Bosworthが挙げられている。年収は15万ドルから25万ドル。アウトソーシングの影響はいっさい受けない。

さて、次が、Researcher階層(第2階層)である。ここがイノベーションのためのカギで、米国にとっての生命線である。ここに2万5000人くらい居るとBusiness Week誌は推定している。年収はアカデミアだと5万ドル。在野だと19万5000ドル。基本的にはこの階層の将来は明るいが、この仕事もオフショアに出て行く可能性がある。

そして、Consultant階層(第3階層)。企業のテクノロジー・ニーズについてアドバイスし、新しいソフトウェアをインストールしたり、新しいアプリケーションをスクラッチから作ったりする、ビジネスに精通したコンサルタント。年収は7万2000ドルから20万ドル。この階層の将来は明るい。

次が、Project Manager階層(第4階層)。グローバルソフトウェア工場の重要な歯車。異なる国、異なるタイムゾーンで働くチームをコーディネートして、仕事を時間通りに完遂する仕事。これに関連しては、本連載2月12日「グローバル化が進む分散開発体制の今」も合わせてご参照。年収は9万6000ドルから13万ドル。ここでいいマネージャーになれば、仕事は安泰。

そして下から2つ目が、Business Analysts階層(第5階層)。ビジネスニーズからプログラマーのためのスペックに落とす人。年収は5万2000ドルから9万ドル。ビジネスセンスがあって、コミュニケーションスキルがあるプログラマーにとって比較的安全な場所(仕事が外に出て行かない)。

そして最後が、Basic Programmers階層(第6階層)。「The foot soldiers in the information economy」(情報経済における歩兵)で、アプリケーション用のコードを書き、アップデートして、テストする。年収は5万2000ドルから8万1000ドル。仕事が海外に出て行ってしまうという意味では、ここが一番危ない。この階層における仕事の18%が、6年以内に、オフショアに流れていくというのがフォレスターの予想。

ネット企業のソフトウェア・エンジニアはこれから

このソフトウェア階層構造について一言コメントするとすれば、昨年10月20日の本欄「雇用なき景気回復とITエンジニアの雇用をめぐる大転換」の最後で問題提起した、ネット企業におけるソフトウェア・エンジニアが、きちんと分類されていないように思った。その件に関連しては、CNET Japan山岸編集長がそのBlogで、

「とにかく、何か新しいビジネスをオンラインで立ち上げるためには、ユーザーのフィードバックを集めながら、Plan -> Do -> Check -> Actionを繰り返していけるような体制を社内に集めないとだめだろうということです。いちいち用件定義して、仕様書書いて、SIerに発注なんてしていたら、時間もお金もかかりすぎて、事業として成り立ちません。オンラインのオペレーションは変化の連続ですが、アウトソーシングしてコストメリットが出るのは枯れたオペレーションだけなので、ここを外に出すとかえってコストは上がるし、スピードは下がるし、品質は悪化するしで、良いこと無しだろうと思うんです。」

と書いているが、まさにこういう仕事は、このソフトウェア階層モデルのどこに入るのだろう。よくまとまってはいるが、この6階層モデルは若干古いかな、という気もしなくはない。

4人の登場人物

ただいずれにせよ、この特集記事は、好むと好まざるとに関わらず、まずこういうピラミッド構造の現実を認識した上でキャリアを考えるべきだ、というアメリカ的な発想に貫かれている。そして、この記事には、4人の人物が登場する。

登場人物は、1人目がDeepa Paranjpe。24歳。女性。独身。在インド。インド工科大学の修士をまもなく卒業。

「Starts in June as a data-mining engineer at Veritas Software's facility in Pune. Pay: $10,620 per year」

6月からVeritas Softwareにデータ・マイニング技術者として働く。年収1万620ドル。ゴールは起業家になって大成功すること。インド工科大学といえば、膨大な人口を抱えるインドの高校生の中からトップクラスの学生だけがいける大学。その修士卒業生で、さぁこれからと未来に目を輝かせている若い技術者を、きちんとやれば年収1万ドル少々で雇えるのだから、アメリカの卒業生も厳しい。

登場人物の2人目がStephen Haberman。22歳。男性。既婚。在アメリカ。奥さんもプログラマーだが仕事がない。カーネギーメロン大学のソフトウェア・エンジニアリングの修士をまもなく卒業。仕事はまだ見つかっていない。ゴールは「To start a software-services company in Omaha and become a millionaire」。彼は10代からマイクロソフト主催のプログラミング・コンテストに出たり、アルバイトでかなり難しいプログラムを書き続けてきた逸材。その彼をして、

「And Stephen, if he misplays his hand, could find himself competing with lowballing Filipinos or Uruguayans.」

と称されてしまうところが、競争の厳しさを示している。

3人目の登場人物は、Florentin Badea。27歳。男性。在ルーマニア。Polytechnic University of Bucharest卒。専攻はコンピュータ・サイエンス。「Day job designing Web pages for an American tech company, which he declines to name. Finds freelance work on RentACoder.com. Clears $3,000 per month」で生計を立てている。ルーマニアで$3000/monthといえば、かなりの収入といえる。

最後の登場人物は、Hal Reed。34歳。男性。Wesleyan University卒。数学専攻。在アメリカ。「Answered an ad for entry-level programming work at cMarket, in Cambridge, Mass., for $45,000. Quick promotion to software architect nearly doubled his pay」。新聞広告でベンチャーに4万5000ドルのエントリーレベルの仕事で就職し、すぐにソフトウェアアーキテクトに昇進して、年収は倍に。ゴールはこのベンチャーを一気に立ち上げること。

この「SOFTWARE」という長文記事は、この4人を実例として取り上げながら、米国ソフトウェア産業のこれから、オフショアリングのこれからが、わかりやすく解説されている。アメリカからの視点ばかりでなく、インドからの視点も合わせてある。サプライズはないが、ソフトウェアの世界で、日本の外では、今どんなことが起きているのかを考えるには、とてもいい読み物だと思う。

トム・ピーターズのオフショア論

さて、オフショアリングについては、Tom Petersが、「"Off-shoring" Manifesto/Rant: Sixteen Hard Truths」を書いているので、それも興味のある方は、ぜひご参照ください。John RobbはそのBlogで、

「His conclusion: we need to train many, many more creative, risk-taking entrepreneurs. That will require a massive shift in how we educate our youth. The only reliable indicator of whether you will be an entrepreneur: you are the son or daughter of an entrepreneur. If that skillset can't be transferred more generally, most people will be left behind.」

とTom Petersの論を総括している。オフショアリング・トレンドは避けられないのだから、アメリカはもっともっとたくさんの創造的でリスクを取る起業家を生み出さなければならない、というのがTomの結論。そのためには根本的に教育から考え直す必要があると。もしオフショアリングを期に、アメリカがこういう方向に真剣になると、創造性とか起業家精神といった意味では日本の教育からはさらに2周、3周先を行き、全く質の違うどこかに行ってしまいそうだ。

また、シリコンバレーからの日本語Blog「死んでしまったら私のことなんか誰も話さない」では、このTom Petersの論も含めた詳細な解説「海外アウトソーシングの波にアメリカはどう立ち向かうのか」があります。このBlogも、最近登場した「観察・啓蒙系」で質の高いものの一つですね。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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