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CNET Japan ブログ

Blogでバーンアウトする人と、しない人の違い

2004/02/25 09:38
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プロフィール

umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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2月18日の「Blogを書くことの心理的負担とそれを上回る魅力」にはずいぶんトラックバックをいただいたし、トラックバックはなかったけれど言及されていたサイトもいくつかあった。それをもとに色々と考えることができて面白かった。

18日のエントリーでは、ゲストブログをお願いした村山氏が紹介した「マイクロソフトのRobert Scobleがバーンアウトした」という話を取り上げ、Scobleのこんな発言をピックアップした。

「It's hard to write well for any one audience when you're trying to please them all. In the old days I didn't have disparate audiences, I just was talking to my blogger friends.」

Scobleは、「disparate audiences」(共通点のない本当にいろいろな人達)に囲まれてバーンアウトしたのであるが、果たして、「disparate audiences」を前に、どういうタイプのBloggerがバーンアウトし、どういうタイプのBloggerがバーンアウトしないものなのだろうか。そんなことを、このエントリー以来、つらつらと考えていた。

セキュリティ分野の第一人者であるブルース・シュナイアー

実は昨日、本欄にも転載しているダイヤモンド社LOOP誌連載の仕事で、セキュリティ分野の第一人者であるブルース・シュナイアーと会って、話を聞く機会を得た。有難い機会であった。

シュナイアーと近著「Beyond Fear」については、まずは「Sotto Voce」の解説(第1回第2回)をご参照ください。この解説でも書かれている通り、シュナイアーは、

「Applied Cryptography(邦題:暗号技術大全)」、「Secrets & Lies(邦題:暗号の秘密とウソ)」という2冊の著書を持つ暗号技術の第一人者であるとともに、企業のネットワークシステムを常時モニターし、セキュリティ上の問題の検知・対応そしてコンサルティングを行うサービスを提供するCounterpane Internet Security社の創業者兼CTOでもある。」

「Schneierは近年、特に9・11テロ事件以降ではコンピューターセキュリティの領域を超え、安全保障問題全般に関する論評・コンサルタントとしても活躍しており、最新の著書(ちょっと前にも触れたが)は、「Beyond Fear」と題され、「セキュリティ」とは何か、有効かつ適切な「セキュリティシステム」とは何か(「システム」はこの場合、ITシステムを指すのではなく、安全保障のための「仕掛け」、という意味)といった問題につきさまざまな事例を紹介しつつ、誰にでもわかるような平易な言葉と文章で論じている。」

「Crypto-GramというEメールニュースレター(日本流に言えば「メルマガ」か)が毎月発行されている」

という人である。

シュナイアーの使命感と困難

彼と会って話してまず痛感したのは、この人は、「disparate audiences」(共通点のない本当に色々な人達)に囲まれても、絶対にバーンアウトしないな、ということであった。なぜか。Missionaryという言葉が適切かどうかちょっとわからないが、彼の内部には「社会全体に向けて語られるべきこと」が充満していて、それが語られることに「強い使命感」を抱いていたからだ。

Beyond Fear」という本は、昨年後半に出版されてまだ日本語訳が出ていないが、この本は前著たちとは趣を変え、コンピュータにとどまらないセキュリティ全般についての思想書に仕上がっている。また、Crypto-Gramという彼のニュースレター(ここでバックナンバーをすべて読むことができる)においても、彼は、911テロ後の米国安全保障政策について強い反対意見を表明し続けている。今日はテーマが違うので取り上げないが、いずれ機会を見て、彼の最近の米国安全保障政策に対する意見をご紹介したいと思う。

シュナイアーは、「911テロは極めて珍しい特異点なのであり、今の米国は、特異点に過ぎなかったものを、恐怖にかられて過大評価し、ゆえに過剰反応している」という強い考えを持っている(彼ははっきりと何度も強くそう語った)。そしてそういう思想を理論化し、でき得れば世の中を変えるために、彼のセキュリティについての知見や発想を総動員する覚悟で、社会全体に対して問題提起しているのである。

現在の米国において、彼の主張は「口にするのには、とても勇気がいる」類のものである。意見表明すれば、当然、ネガティブな反応がたくさん来るはずだし、現実にたくさん来ているらしい。問題が問題だけに、マイクロソフトのRobert Scobleが「disparate audiences」(共通点のない本当に色々な人達)から受け取ったネガティブな反応とは、比較にならぬほどのハードさだと思う。

「そういうネガティブな反応に対してはどう対処しているのか」という質問に対して、彼は、ネガティブな反応も含めてすべて、建設的な議論がこれからできるようになるために必要不可欠なことだ、と淡々と語った。彼がネガティブな反応によってバーンアウトするなんてことはないのである。

信念系と観察系、Blogに対する2種類の欲求

当たり前の発見かもしれないのだが、今のBlogger世界には、「語るべき何か」が内部から沸き出てくるゆえ「信念を持って意見表明」しようとしている「信念・意見表明系Blogger」と、「語るべき何か」のきっかけは主として自分の外にあり、それを観察して、知を他の人と共有することに楽しさを感じたり意義を見出したりする「観察・啓蒙系Blogger」が混在しているのではないか。そしてRobert Scobleの本質は、後者にあるのではないかと思う。ちなみに、もともとBlogの語源となった「Web Log」という言葉には、Web上の何か面白いサイトのURLを他者に紹介して共有したい、という観察・啓蒙的欲求がルーツとして存在している。

僕も、間違いなく後者「観察・啓蒙系」である。ということが、「信念・意見表明系」のシュナイアーと会ったことで、改めて強く確認することができた。僕の場合、特に社会全体に向かって語りたい何かなど持っていない。専門領域に関係して、語りかけるべき対象(日本のIT産業、顧客企業、進路を迷っている若くて優秀な技術者、などなど)を特定すれば、某かの意見を持たないわけではないが、それを主張してどうしても相手を変えたいというような強い情熱は持たない。某か参考にしてくれればいいさくらいの感じで書いているので、やっばり、「信念・意見表明系」ではなく「観察・啓蒙系」なのである。

この連載を始めてから、英語圏のBlogだけでなく、日本語で書かれたBlogや日記サイトなどもよく読むようになったが、極めて個人的な独り言的なものを除いて大別すると、洋の東西を問わず、書き手は、「信念・意見表明系」と「観察・啓蒙系」に分けられるように思う。

「信念・意見表明系」と「信念・意見表明系」の間の議論は、ヒートアップしつつも噛み合う。お互い確信犯としてやっているからだ。そして、「観察・啓蒙系」と「観察・啓蒙系」の間の議論は、「信念・意見表明系」から見ると「ぬるい」と感じるような、ある種、和気藹々とした感じになる。

思わぬ誤解による疲労は、「信念・意見表明系」と「観察・啓蒙系」という異質なものの間で生まれるような気がする。「観察・啓蒙系」だって、時には感想めいたことを意見として発する。あるいは特定の「読み手」セグメントを意識しつつ、意見が述べられる。そしてそういう意見が、「信念・意見表明系」の「disparate audiences」(共通点のない本当に色々な人達)に囲まれてしまうとき、「観察・啓蒙系」はバーンアウトするのではないだろうか。

身近な例でいえば、CNET Japan Blogの僕以外の3人(レッシグ、江島、森氏)は皆、どちらかといえば「信念・意見表明系」である。よって時にディカッションが確信犯的にヒートアップする(「信念・意見表明系」と「信念・意見表明系」の間で)。一方、村山氏の「Sotto Voce」や、昨日の最後でご紹介した「SW's memo」や、「FPN(Future Planning Network)」、「Passion For The Future」などの人気Blogは、どちらかといえば「観察・啓蒙系」である。むろんこういうサイトで意見表明がないわけではないが、「信念・意見表明系」の苛烈さはなく、ちょっと雰囲気が違う。僕としては、日本語のBlogや日記サイトに、「信念・意見表明系」だけでなく、さらに質の高い「観察・啓蒙系」が増えて、和気藹々とした中で知が共有・深化されていくのは、楽しく、そして意義があることではないか、と考えている。

シュナイアーのオーラみたいなものに当てられて考えたことを、今日はちょっと書いてみた。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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