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ソーシャルネットワーキング、ビジネス化の視点

2004/02/17 09:15
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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ソーシャルネットワーキングについての話が、日本のBlog・日記サイトでも、英語圏でのBlogでも、やたらに盛り上がっているようだ。特にGoogleによるOrkutでの実験的参入以来、そのエントリー数は増している。

誰でも簡単に参加でき、その雰囲気を経験することができるので、自分の意見を表明しやすいからだろう。面白いと興奮する人もいれば、くだらないと一顧だにしない人もいる。ソーシャルネットワーキングは、それぞれの人を映す鏡みたいな性格も併せ持っているようで、それへの反応は読んでいてとても面白い。

ニューヨークのソーシャルネットワーキング・カンファレンス

2月10日にニューヨークで開かれた「SOCIAL NETWORKING: WHAT'S NEXT?」というパネルディスカッションを観察した「A VC」のBlogエントリーを今日の題材としよう。

「The explosive rise of social network platforms is one of the most discussed technology trends of the year. As leading-edge companies position themselves to capitalize on the power of these rapidly evolving technologies to help individuals tap relationship networks and improve the efficiency of everything from dating to sales -- they are stirring up media excitement, entrepreneurial zeal, patent battles and millions of dollars in private investments. Please join us for this invitation-only executive event as we take a critical look at this exciting and evolving sector of the market. A panel of leading CEO's who are on the front lines of the social networking space will share their unique insights and answer the hard questions as we examine the issues and opportunities that lie ahead in this sector.」

がこのパネルの紹介サイトでのイントロである。ここでは「explosive rise of social network platforms」という表現をしているが、ソーシャルネットワーキングを、個々のサービスという視点からというよりも、ネット全体におけるプラットフォームの可能性として見つめている。

パネラーは「leading CEO's who are on the front lines of the social networking space」とのことで、実際には、「Antony Brydon, Founder and President, Visible Path Corp.」、「Reid Hoffman, CEO, LinkedIn, Ltd.」、「Mark Pincus, Co- Founder and CEO of Tribe Networks, Inc.」、「Andrew Weinreich, Founder and CEO of I Stand For, Co-Founder and Former CEO of Six Degrees」、「Adrian Scott, Founder and CEO, Ryze」の5人である。昔、同じコンセプトでSix Degreesの事業立ち上げに失敗した経験のあるAndrew Weinreichも入っている。

僕もこういうパネルは、ここ10年、数限りなく参加したが、「A VC」の総括コメント

「To be honest, I thought the discussion was boring and way too rambling and unfocused.」(失望感)

を読んで、まぁそうだろうな、と思った。こういうパネルのディスカッション自身が面白かったという例は稀有なのである。

むしろ、つまらない議論を聞きながら、頭の中でいろいろと考えたことや、せっかく来たんだから1つか2つは「いい言葉」を拾って帰ろうと、パネル終了後の参加者との雑談でパネルの悪口を言い合う中で耳に残った言葉のほうが価値が大きかったりするものだ。その意味では、「A VC」のこの総括コメント直後の「But there were a few highlights.」以降が、終了後の雑談の中で光っていた言葉に相当するもの。

「In particular, I just loved Andrew Weinrich's initial vision for Six Degrees. He wanted to build a "social network operating system" for the Internet. Six Degrees was to be a huge relationship map that would get plugged into everything on the Internet; eBay, Amazon, Monster, Match, etc. When you used any of these and other Internet services, you would see what your relationships knew about, said about, or did with any of these services. That was, and is, a big idea, and I wish it existed.」

パネルがいくらつまらなくても、こういう言葉さえ拾うことができれば、一晩を費やす価値がある、と数年前だったら思ったことだろう。でも今は丹念にBlogを読んでいくと、こんなエッセンスだけを集められるのだからありがたい。でも、こんなふうに一気に知のオープン化が進んでいっていることに、実は戸惑いも禁じえない。これからの知の競争は、特にこれから世の中に出ていこうとしている若い人達にとって、ますます厳しくなるなぁと。

ソーシャルネットワーキングOSというビジョン

ところで、この文章は、ソーシャルネットワーキングのもともとのビジョンを簡潔に表現したものである。もともとのビジョンとは、Six Degreesが創業された時点でAndrew Weinrichが表明したもので、彼はインターネットにおける「social network operating system」を構築したかったのだ。OSとはつまり、Six Degreesが作る「a huge relationship map」(人と人の関係についての巨大マップ)が、インターネットのすべて(eBay, Amazon, Monster, Match, etc)にプラグインされるイメージである。

さてここで重要なのは、この短い文章の中に、ビジョンレベルと戦略 (ビジネスモデル)レベルの話が混在していることだ。ビジョンレベルとは、「a huge relationship map」を作るのがゴールだということ。戦略 (ビジネスモデル)レベルとは、「that would get plugged into everything on the Internet; eBay, Amazon, Monster, Match, etc.」という部分、つまり、その巨大マップを作ったら、それを他のすべてのサービスにプラグインしてビジネスを成立させよう、という構想のことである。

そして、これからのソーシャルネットワーキングというビジネスについて考えるときに大切なのは、この2つをきちんと分離することである。

「a huge relationship map」を作るというゴールは不変であろうが、それが本当にOSのような事業にできるのか(すべきなのか)、それとも、すべてを垂直統合的に囲い込んで勝負するか、あるいは・・・・、という戦略 (ビジネスモデル)レベルで、まだまだ真剣な試行錯誤が必要な時期にあるということである。それが第2次ソーシャルネットワーキング戦争の争点なのだと思う。

「I also liked a concept of network interoperability that came out in some of the comments, but was never really drilled down on. None of us wants to join 10 or 20 social networks. The headache of filling out the profiles, interacting with the systems, etc is just too time consuming for most normal people. But we'd all like to be part of LinkedIn and Ryze for business networking, Tribe for classifieds, Friendster if we are dating, etc. Will there be a way that I can have one profile like I have one email address and each social network just takes that profile applies its own business logic and rules for its particular application and delivers value to me? I don't know, but I'd like that to happen.」

これが「A VC」が書いている文章の次のバラグラフであるが、戦略(ビジネスモデル)レベルでの争点がまさにそこにあるから、彼が言うような「network interoperability」は容易には実現しない可能性が高い。

「The other highlight was Antony Brydon's announcement that Kleiner Perkins had invested in Visible Path and that Ray Lane was joining his board. That's a big deal because Kleiner now has both a consumer-focused social networking investment, Friendster, and an enterprise-focused social networking investment, Visible Path.」

そして、この文章によると、クライナーがVisible Pathに投資することを決めた(そして元オラクルCOOのRay Laneがボードメンバーになった)らしいが、これでクライナーは、Googleの大株主である上に、コンシューマー系ではフレンドスター、ビジネス系ではVisible Pathをポートフォリオに持った。同じくGoogleの大株主のセコイアは、Visible Pathの競合であるLinkedInに投資している。

本欄1月27日「シリコンバレーを悩ます過剰投資の問題」でも詳述した、ホットなエリアへの過剰投資が過当競争を引き起こしかねない、という問題の具体例が出現しているともいえよう。

戦略の選択とその執行が難しい

ただ、ソーシャルネットワーキングという分野は、ビジョンレベルは壮大だが、戦略(ビジネスモデル)レベルの選択とその執行がすこぶる難しいという、ハイリスク・ハイリターン型事業創造の典型である。よって、今、競争しているすべてのベンチャーが倒れて、あとからもっと凄いのが登場するというような可能性(Googleが検索エンジンについての22番目のベンチャーだったことを思い出そう)もある。試行錯誤が何年も何年も続いて、結局誰もビジョンレベルに到達できないという可能性もある。一気にGoogleが色々なベンチャーを蹴散らして疾走する可能性もある。資金量豊富なクライナーやセコイアのようなVCが、ビジョンレベルで信じて、途中でつぶれる連中が出ようが、最後まで何とかゴチャゴチャやりながら、カネを突っ込み続けていくことによって、ソーシャルネットワーキングの鉱脈にぶちあたるという可能性もある。

「So my bet is that social networking is more than a fad that will come and go quickly. It's a real business opportunity, but it will take time before these services become useful to more than technology enthusiasts and online daters」

「リアルなビジネス機会ではあるが時間がかかる」という「A VC」の結論は、基本的に正しいと思う。ただ、時間がどれだけかかるのか、途中にどれだけ困難があるのかという条件をすべて加算していったときに、あまりにも困難のほうが大きく時間とカネがかかるとなれば、逆に「リアルなビジネス機会」とは言えなくなる。ソーシャルネットワーキングの今後は、そんな観点から見つめていくべきものだと思う。

さて、最後に、このパネルディスカッションサイトに掲げられた、ソーシャルネットワーキングについてのKey Questionsを引用して終ることにしよう。アメリカで開かれている色々なコンファレンスやセミナーには、日本の読者の皆さんは物理的に出られないケースが多いと思うが、ネット上に公開されているこうしたKey Questionsを自分の問題として考えるのは、いい訓練になるはずだと思う。ちょっとビジネススクールっぽい一般的過ぎるKey Questionsではありますが。僕はこの中では、(6)が最も本質的な問いではないかと思っている。

(1) What are the different types of social networking platforms?

(2) How are social networking platforms likely to evolve in the business and consumer markets?

(3) What are the prevailing business models, and which models are likely to succeed?

(4) What are the critical success factors for social networking?

(5) What is the real significance of social networking platforms - passing fad or sustainable new market?

(6) What role does technology play in creating sustainable social networking businesses?

(7) Will social network applications stand on their own or be incorporated into existing applications?

(8) What is the measurable impact of today's implementations, and what are realistic expectations for the next two years?

(9) What are the privacy and adoption issues that could threaten maturation?

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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