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ビル・ジョイが語るITの未来

2004/02/16 09:07
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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1月14日の「スティーブ・ジョブズ、コンテンツ産業の未来を語る」はアクセス数も普段よりかなり多く、評判も良かった。ひとえに、スティーブ・ジョブズのインタビュー内容そのものが面白かったからだと思う。

トラックバックもたくさんいただいた。トラックバックからは教えられることも多く、改めてそれらとつきあわせながら原文を再読してみたが、とても勉強になった。特に、「iPodとiTunes music storeは如何にしてクリエイタの理解を得たのか」(by デジモノに埋もれる日々)は、僕が引用した部分や論点とは違った部分を原文から抽出していて参考になった。

さて今日は、Wired誌によるビル・ジョイのインタビュー「Hope Is a Lousy Defense」(希望は最低の防御だ)をご紹介することにしたい。ジョブズのインタビューのような華はないが、独特の味がある。ジョブズのは読後に心地よい感じをもたらすが、ビル・ジョイのはそうじゃない。どうそうじゃないかは、読んでからご判断ください。

ジョブズのローリングストーン誌でのインタビューが他のメディアでのインタビューに比べて格段に面白かったのは、彼とローリングストーン誌のフィットゆえであったと思われるが、それと同じことが、Wired誌とビル・ジョイの間にもあるように思う。

「Why the future doesn't need us」の続編的位置づけ

ビル・ジョイのこのインタビューは、かの有名な論文「Why the future doesn't need us.」(Wired誌2000年4月号)から3年半たち、彼がサンを辞めた直後に、論文を掲載した同じWired誌によって行なわれたものである。

冒頭のリード文では、こんなふうに紹介されている。

「In 2000, he wrote the Wired cover story "Why the Future Doesn't Need Us," a Cassandra cry about the perils of 21st-century technology and a striking display of ambivalence from a premier technologist.」

この2000年4月の論文は「21世紀の技術の危険についてのカサンドラの叫び」だったのだと。カサンドラについては、「グローブ流経営術「変化を察知する予言者を社内に見つけろ」をご参照。

さて、インタビュー内容に進もう。

冒頭の質問「We're tempted to say, "End of an era."」は、「IT成熟論を皆がいっているけれど・・・」みたいな意味ととればいいと思うが、その答えの中のこのフレーズがいい。

「I try to work on things that won't happen unless I do them.」(自分がやらない限り絶対に起こらないことをやろうとしている)

サンの創業者が皆いなくなって、CEOのスコットだけになったことについては、

「We're all still alive.」(皆、生きているよ)

と答え、「いや、会社を辞めたという意味だけど」という問いには、

「We're still there in spirit. There are an awful lot of good people at Sun who have been there a long time. Sometimes, founders leaving is a good thing. You start to get in the way.」

と言う。創業者が退くのも、ときにはいいことなんだよ。

偉大なシステムはスモールシステムから始まる

ここまでがイントロ。ここからは、ソフトウェアのこと、次の十年のこと、オープンソースのことなどが語られるが、気になった部分を拾っていこう。

まず、「スモールシステム論」から。

「I've always said that all successful systems were small systems initially. Great, world-changing things - Java, for instance - always start small. The ideal project is one where people don't have meetings, they have lunch. The size of the team should be the size of the lunch table.」(これはいつも言っていることだが、すべての成功したシステムは、最初はスモールシステムだったということだ。偉大な世界を変えたシステム、たとえばJavaだって、皆、最初は小さくスタートした。理想的なプロジェクトは、ミーティングなんて持たないもの。チームのサイズは、ランチテーブルのサイズでなければならない。)

イノベーションは死んだのではないかという質問には、一言「ナンセンス」と答えた上で、こう言う。

「Moore's law still has at least a decade to go with conventional silicon. That's a factor of 100 in performance, which means that with some work to make the algorithms run faster, we've got maybe a factor of a thousand improvement still to come. If you give me machines that are a thousand times as powerful as today's at the same price, I ought to be able to do something radically better.」(ムーアの法則は次の十年続く。とすればハードだけで100倍の性能。アルゴリズムで10倍の性能アップできれば、同じ値段で1000倍の性能向上が見ているわけだ。そういう環境では、ラディカルに良い何かを実現できるに違いない。)

そして、

「existing operating systems, especially the ones provided by the reigning monopolist here, are deeply flawed. So there's enormous opportunity.」

とマイクロソフトのOSを「deeply flawed」と断定する。そこからのやり取りによって、「Reliable and secure systems」が彼の今の関心であることがよくわかる。そしてこう言う。

「My goal is to do great things. If I do something great, maybe it'll beat Microsoft. But that's not my goal. I find Windows of absolutely no technical interest.」(自分のゴールは偉大なことをすることだ。もし偉大なことができれば、それはマイクロソフトを破るだろう。でもそれは自分のゴールじゃない。ウィンドウズには何の技術的な興味ももてないから)

1月19日にご紹介した、Joel Spolskyの「Biculturalism」のUnix programmer対Windows programmerの対比の話を思い出す。

Linuxとオープンソースの意味

Linuxとオープンソースについてはこう言う。

「Re-implementing what I designed in 1979 is not interesting to me personally. For kids who are 20 years younger than me, Linux is a great way to cut your teeth. It's a cultural phenomenon and a business phenomenon. Mac OS X is a rock-solid system that's beautifully designed. I much prefer it to Linux.」(1979年に自分がデザインしたものを再実装することについて、個人的には全く興味がもてない。自分より20歳若いキッズたちにとっては、Linuxは最初の経験として素晴らしいと思うけれどね。Linuxはカルチャー現象でありビジネス現象だ。美しくデザインされたMac OS Xのほうが、自分は好きだよ)

「Open source is fine, but it doesn't take a worldwide community to create a great operating system. Look at Ken Thompson creating Unix, Stephen Wolfram writing Mathematica in a summer, James Gosling in his office making Java. Now, there's nothing wrong with letting other people help, but open source doesn't assist the initial creative act. What we need now are great things. I don't need to see the source code. I just want a system that works.」(別にいいけれど、偉大なOSを作るのに世界中のコミュニティなんて要らないんだ。Unixのケン・トンプソンを見よ。夏休みの間にMathematicaを書いてしまったStephen Wolframを見よ。JavaのJames Goslingを見よ。別に、たくさんの人々の助けを求めることを否定はしないけれど、オープンソースは最初の創造的な行動をアシストできるものではない。今、我々に必要なのは偉大なこと(great things)だ。別にソースコードなんて見る必要はない。ちゃんと動くシステムがあればそれでいいんだ)

「Why the future・・・」の読み方

さて、最後に、「Why the future doesn't need us.」(Wired誌2000年4月号)に関わる部分の読み方だけご紹介しておこう。

この「Why the future doesn't need us.」は、とにかく長い。ウェブサイトで11ページにわたっている。僕の理解では、つい最近まで、翻訳はなかった。ようやく翻訳が読めようになったのは、最近出版された「「マトリックス」完全分析」(グレン・イェフェス編)においてである。「なぜ未来はわれわれを必要としないのか?」に全文訳が掲載されている。

今日ご紹介したWired誌インタビューの後半を読むと、この「Why the future doesn't need us.」論文を書いた3年半前から、ビル・ジョイの考え方はあまり変わっていないことがよくわかる。

「Our problem is no longer "going faster," getting to the future as fast as possible, but rather dealing with limits - limiting our own greed to avoid disaster in the environment and limiting what rogue individuals and states can do. Market mechanisms don't address these problems.」(我々の問題は、もう未来に向かってできるだけ速く到達することではなくて、限界との対処にある。この環境における大惨事を避けるべく、我々の欲に歯止めをかけることだ。市場メカニズムはこうした問題にアドレスできない。)

「Meanwhile the markets continue to pour money into the fields that worry you - genomics, nanotechnology, and robotics.」(市場は相変わらずジェノミクス、ナノテク、ロボティクスにカネを投入し続けているが)

との質問には、

「Because they don't have to pay the bill.」(投資する連中がつけを払うわけではないからさ)

と言い、

「But I'm afraid we're not going to have this discussion until there's a really big accident, and maybe not even then.」(とんでもない事故が本当に起こるまで誰も議論しないという状況を懸念する)

と語っている。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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