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シリコンバレーを悩ます過剰投資の問題

2004/01/27 09:33
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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ニューヨークのベンチャー・キャピタリストのBlog「A VC」から「Overfunding Companies」が、頭を刺激するのにいいエントリーであった。

「The biggest problem facing the venture capital business these days is that we can't seem to stop overfunding businesses. The prevailing sentiment seems to be if its a good deal, let's put in as much money as we can. Well I think that's crazy and I wish we'd stop doing this.」

今日のベンチャーキャピタル・ビジネスが直面している最大の問題は、ベンチャーへの過剰投資をやめる気配がないということだ。もしいい投資案件ならば、投資できるだけ投資しようという気分が依然として溢れている。これが狂っているのであって、やめなければならないというのが、このBlogの筆者の主張である。

7兆円以上の金が有望市場に殺到する

この「Overfunding Companies」という文章は簡潔でわかりやすいので是非、原文をあたっていただきたいと思うが、例として、必要なだけの資金調達をしてソリッドにビジネスを立ち上げかかっているベンチャー(彼の投資先)の領域に、有力VCをバックに一気に大量の資金を調達したベンチャーがどんどん登場することの問題点を語っている。

1月19日のSan Jose Mercury Newsでは、超大物ベンチャーキャピタリスト3人(Tim Draper of Draper Fisher Jurvetson、Jim Breyer of Accel Partners、John Doerr of Kleiner Perkins Caufield & Byers)によるパネル・ディスカッションの内容を報じているが、やはりその中でも、Overfundingの問題が出てくる。

「The sharpest disagreement came on the topic of venture capital itself. Doerr pointed to the $66 billion waiting to be invested, much of it left over from the Internet bubble, and said the excess cash is causing ``dramatic overfunding in many of the most interesting technology segments.''」

未投資のVC資金が$66Bil(7兆円以上だ!!!)もあるという状況ゆえに「最も面白い技術セグメントに過剰投資が起こっている」と、ジョン・ドーアは指摘するが、

「``There is never enough venture capital,'' shot back Draper, drawing cheers from under-funded audience members. ``We're all underestimating the creativity of the world. There are some great things people can do with money.''」

ティム・ドレーパーは、「ベンチャーキャピタル投資資金にこれで十分なんて額はないのだ。」と言って、会場の資金調達に苦しむ起業家たちから喝采を浴びたという。ドレーパーは言う。我々は世界の創造性を過小評価しているのだ、人々がカネを使ってできる偉大なものはもっともっとあると。

このパネルはお祭りみたいなものなので、ご紹介もこのへんにする。AlwaysOnでもカバーしているし、Yublogでも取り上げているのでそちらもご参照。

ただ、過剰投資はきわめて重要な問題提起なので、きちんと考えていこう。

ベンチャーキャピタル産業論と成功要件

まず、ベンチャーへの過剰投資の問題は、ベンチャーキャピタル産業論とベンチャー成功要件論の2つに分けて議論することが重要だと思う。

たとえば、「A VC」の原文からの

「Less is more in my mind. I am in the return on investment business. It's always easier to make a good return when you have less money at work. And I think if you look back at the way the venture business operated in 70s and 80s, you'll see that most of the really huge successes were built on relatively small amounts of capital invested. I think we need to return to that model. But its going to be hard if this overfunding craze doesn't stop.」

という文章は、過剰投資してもちゃんとリターンがあり得るのかという、ベンチャーキャピタル産業論であり、

「Because my experience tells me that more money doesn't usually translate into a better business. In fact, most of the time more money has translated into a worse business. Sure you need enough to do what matters, but too much money leads to all kinds of mistakes that I expect our competitor will end up making.」

という文章は、ベンチャー成功要件論、つまり調達資金が豊富であることとベンチャーの成功の関係について語られているものである。

まず前者は、バブル崩壊後のシリコンバレーの最大の課題であり、依然としてその構造的問題は克服されていないという点で、「most of the really huge successes were built on relatively small amounts of capital invested」という古きよき時代に戻らなければならないという「A VC」の問題提起は、筋の通ったものだと思う。

今も残るバブルの後遺症

僕は、CNET Japanでこの連載を始める前、約3年半にわたって月一回、日経ビジネスでコラムを連載していたのだが、その最終回(2002年9月)に行なった問題提起は、「バブルの後遺症続くベンチャー投資」だった。

「このカネ余り状態が一体何をもたらすのだろうか。それは、未公開ベンチャー企業への過剰投資である。バブル崩壊で多くのベンチャー(特にドットコム企業)が淘汰されて総投資額は減少した。しかし依然として巨額の余剰資金が投資先を求めているため、有望そうな技術を持つベンチャーには投資が集中する。

現代の経済は、ある周期で技術革新が生まれることを前提として成り立っている。これをイノベーション経済と呼ぼう。そのためには、「まだ見ぬイノベーション」を生み出すために持続的かつ巨額の投資が必要になる。楽観的に見れば、リスクマネーがふんだんにあるということは、技術ベンチャーにとって十分な資金を確保できているということになる。米国経済を駆動してきたイノベーションとマネーの還流メカニズムは、その規模こそ縮小したものの依然として動き続けている。

しかし、その一方で悲観的な見方もある。VC投資が急増した1999年頃からインターネットや通信、バイオ、ナノテクノロジーなどの注目技術にはほぼすべての分野で活発に投資が行われてきた。各技術領域で数十のベンチャー企業がひしめき合う熾烈な競争となったが、資金が枯渇してもVCが次から次へと追加投資したため、将来性の薄いベンチャーの淘汰が進まなかった。そうした状況はバブル崩壊後の今でも変わっていないというのだ。

その結果、本当に有望な技術ベンチャーも過当競争に巻き込まれ消えていくことが少なくない、と筆者は考えている。技術ベンチャーを支える経済メカニズムとは本来、多産多死を前提としたものだが、度が過ぎれば、つまり有望なベンチャーも多く死んでしまうようだと、VCシステム全体が機能不全に陥りかねない。」

この問題は、いまだ解決されていないのである。

1月19日の「気になるショートトピックス8本」の中で軽くご紹介したForbes誌Rich Karlgaardの「Silicon Valley's Future」で書かれていた

「And Silicon Valley's venture capitalists will have to find a way of earning their keep with sub-$100 million acquisitions.」

ということの意味は、投資先ベンチャーの成功が「$100mil以下の買収」程度のexitであっても、VCの経営がちゃんとまわるようにしなければならない、ということだが、これがまさに「古きよき時代」のモデルなのである。しかし本当に「古きよきモデル」に戻れるのか。

技術の高度化と開発コストの上昇

悩ましいのは、70年代、80年代に比べて、技術が格段に複雑化したために、分野(特に半導体ベンチャーなどに顕著)によっては、意味のある製品やサービスを作るまでにかかるコストがぐんと上がってしまっていることだ。開発に$50milかかる結果のexitがよくて$100milでは、誰もリスクマネーなど供給できなくなるから、悩ましいのである。イノベーションを引き起こすためのコストと、exitの高さと、成功確率とによって、必要な資金がどんな主体(さまざまなタイプの金融機関、事業会社、個人)によってどんな意図で供給されるかが決まるわけだが、そのあたりの試行錯誤がこれからも続いていくのであろう。

さて、この「Overfunding Companies」へのコメント欄には、こんな書き込みがあった。

「I agree. Less is more in this game. Companies with fewer resources learn how to be more resourceful...which often translates into superior execution.

The Oct. issue of Darwin Magaazine published an article titled "What Makes Some Startups Succeed? The authors write about a study initiated by Crescendo Ventures on the same subject. One of the first findings -- "Companies raising the most capital don't have the strongest chance to succeed."」

こちらはベンチャー成功要因論についてのコメントである。「たくさんカネを集めたからといって成功するとは限らない」という実証研究らしい。さっそくDarwin Magazineの「What Makes Some Startups Succeed?」という当該記事を探してみたら、幸いなことに、無償で読めるものだった。

今日は過剰投資についての産業論の視点ばかりになってしまったが、こちらも題材に加え、明日は、同じ過剰投資の問題をベンチャー成功要因論の視点から考えてみたいと思う。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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