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松下亀とソニーウサギ

2004/01/26 09:11
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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「松下亀がソニーウサギを跳び越えた」のだそうだ。

Forbes誌最新号の記事「The Tortoise Jumps the Hare」(亀がウサギを跳び越えた)の亀は松下、ウサギはソニーの意味。たまには日本のことを書いた英文も読んでみることにしようか。

まず、いちばん笑ったのは次のくだり。

「How did Nakamura get so much accomplished in so little time? One trick: As soon as he became president he gave each of the company's top 400 company executives an Internet-equipped mobile phone and said all reports to him had to be done by mobile e-mail. Nakamura had taught himself how to type e-mail rapidly with only one thumb, Japanese high-school-girl-style. Other executives, many of whom had never even learned how to use a keyboard, had to follow his example. They were forced to summarize their reports in a few words or sentences. The result has been faster communications and decision making.」(いかにして松下の中村社長はこんな短い間に大きな達成を果たすことができたのか。種明かしはこれだ。彼が社長になると同時に、彼は400人の経営幹部に「Internet-equipped mobile phone」を与え、自分宛のすべての報告書はモバイルe-mailで送らなければならないと宣言した。中村社長は、日本の女子高校生がやるような親指一本で素早くe-mailを打つ訓練を自らに課した。大半はキーボードの使い方すら習ったことのなかった幹部も、中村社長にならった。経営幹部は皆、報告書を、「in a few words or sentences」、数行でまとめざるを得なくなったわけだが、それが結果として迅速なコミュニケーションと迅速な意思決定につながったのである。)

唖然。内情に詳しい読者の方々、松下の業績回復と経営幹部の親指の関係について、ぜひ感想をお寄せください。

ソニー・出井批判と松下・中村人気

つい最近、Business Week誌がソニーの出井会長をワースト経営者に選んだが、米国メディアでは最近何かとソニー批判が多く、この記事は、ソニーと松下を比べて、松下を持ち上げるという書き出しになっている。たとえばこんなふうに。

「Undercutting the grand pronouncement was the fact that the plan, calling for cost cuts, more power to younger workers and the production of a new generation of networked products, was close to a carbon copy of one outlined (with little fanfare) three years ago by Kunio Nakamura, president of archrival Matsushita Electric Industrial.」

このくだりは、昨年11月のソニーが発表した計画について書かれた部分。ソニーが掲げた「コスト削減、若手の抜擢、新世代ネットワーク製品の開発」は、松下の中村社長が3年前に発表した内容のカーボンコピーである、と。

またまた唖然、という感じもあるが、怖いもの見たさで、何が書いてあるかざっと読んでいくことにしよう。

大型テレビでのシェア争い、DVDレコーダ市場創造、SDメモリー・カードフォーマットもDVDレコーディング標準でもソニーに勝った。これは「真似した電器」からの大いなる脱却であると、最近の松下の成果を並べる。

そして、中村社長がいつも早く帰宅して本をたくさん読む読書家であるという記述があって(日本の多くの経営者と違うタイプだということを表現したかったのだろう)、冒頭の親指メールの秘密の話になる。

続いて、

「The real battle will come over the next two or three years as TVs connect to fiber-optic cables.」

本当の戦いは、テレビが光ファイバーにつながるときであり、その勝負のカギは半導体で、そこでも松下とソニーが競争しているという記述があり、松下はコンテンツ事業撤退のあと「more sharply defined itself as a pure consumer-hardware company」に徹したので、多角化するソニーとは、競合するエリアが重ならない部分も多くなっているという話に飛ぶ。

「"Our genes are in manufacturing," Nakamura says. He doubts many people will want to be stuck in a "Sony world"--using a Sony TV to watch a Sony movie and order Sony financial products like life insurance. "There are other companies, like Disney and Universal," he says.」(「我々の遺伝子は製造業である」と中村は言う。多くの人々が、ソニーのテレビでソニーの映画を見て生命保険のようなソニー金融商品を注文するような「ソニー・ワールド」に絡め取られたいと思っているわけがなく、「ディズニーやユニバーサルのような別の会社もある」と中村は言う)

そして、

「When Nakamura took over, in some ways Matsushita was being managed by the ghost of founder Konosuke Matsushita, who died in 1989.」(中村社長就任まで、1989年に亡くなった松下幸之助の幽霊によって経営されていた)

から創業者の話になる。

「To this day, and much to the embarrassment of younger staff, employees are obliged every morning to sing the company song and chant Konosuke's motto. It can be summarized: "As industrialists we will work to improve life and contribute to human progress."」(今日に至るまで、そしてそれは若い社員には「embarrassment」、迷惑な話であるが、毎朝、社員は社歌を歌い、幸之助のモットーを繰り返し唱和する)

そして、中村社長の語る日本的経営論になる。企業は人の集団なのだ、という話に続き、

「"The best-paid employee should not earn more than ten times more than the lowest-paid employee," Nakamura says. Japanese public companies typically don't reveal executive pay, but he earns $500,000 to $1 million a year.」(中村はこう言った。「いちばん給料の高い社員が、いちばん給料の安い社員の10倍以上稼ぐべきではないのです」と。日本企業のトップの給料は非公開だが、中村社長の報酬は50万ドルから100万ドルの間であろう)

とあり、中村社長は松下幸之助を信奉してはいるがレイオフを行なったという話が続き、チャンピオンではなくて挑戦者なのだという社員の意識改革が次のチャレンジで、

「Nakamura shrank Konosuke's management pyramid from as many as 13 layers to 3, and much power has been transferred to women designers and other employees in their 30s and 40s. Nakamura doesn't want old men designing home appliances that are used by women」(中村は幸之助の13階層の経営ピラミッドを3階層に減らし、権限を女性のデザイナーらに委譲した。中村は、女性によって使われる家電製品のデザインを年寄りの男にやらせたくないのである)

「He also transferred much of the product-planning power away from engineers and to marketers.」(そしてまた、多くの製品領域で、商品企画の権限をエンジニアからマッケターに移した)

米国誌の日本紹介記事は浅い

こういう施策から大型フラットテレビの成功が生まれた、というのが最後。断片的に面白いところはあるものの、この記事は、短い文章の中にあれもこれもと盛り込みすぎて、すべてが浅くなっている。そしてFactを淡々と書き写す以外の部分は、そこそこの一流誌Forbesにしてこんな程度である。全体に「ラスト・サムライ」的違和感が漂っている。

最近読んだ日本企業論では、ネットでは読めないが、フォーサイト誌最新号の喜文康隆氏の連載「経済報道「解読ノート」」が最高に面白かった(この連載は毎号面白いのだが、今回は特に面白かった)。「ゴーン革命の先鞭をつけた石原俊の死」というタイトルの文章の中で、松下・中村論を、日産の歴史との比較で論じている。

こんな深さは、英語の日本記事に望むべくもないが、日本の新聞記者か業界ウォッチャーのどなたか、実名でやるのは無理かもしれませんが、匿名ででも、英語で、日本のエレクトロニクス企業の経営の根幹や現実についてのBlogでも始めていただけませんか?

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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