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IT産業の雇用とイノベーションの未来

2004/01/15 10:00
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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SAP Venturesが1月9日のBlog「Offshore Competition」で書いているように、インテルのパレットとHPのフィオリーナというハイテク巨大企業のCEO、2人が、新年に入り、揃ってオフショアリングについて積極的な発言をしたことに対し、アメリカのメディアも、かなり神経質になってきている。SAP Venturesはベンチャーキャピタリストが書くBlogであるから、読まずともまあだいたい想像がつくだろうが、市場経済の自然の流れに抗する保護政策の台頭に対しては批判的である。

今年は、オフショアリング、つまり海外(主として中国・インド)への雇用流出の是非が、米国で政治問題化していくのではないかと考えられる。

IT Jobに関する2つのシナリオ

今日は、そのテーマについて書かれたCIO Magazineの「The Future of Jobs and Innovation」を読んでいくことにしよう。2010年をイメージして、相反する2つのシナリオを提示しているところが面白い。

「EVEN THOUGH SOME IT jobs will continue to move overseas by 2010, the United States will still have a sizable population of IT professionals doing high-level work on strategy, implementation and design」

2010年までに、Some IT Jobは海外に出ていくが、米国は依然として、戦略、実装、設計に関わる高いレベルの仕事に従事するかなり大きなITプロフェッショナル人口を抱え続けているだろうというのが第1シナリオ。

インテルCIOのDoug Buschがイメージする2010年ビジョンは、

「Each spot will specialize in a particular area of expertise for the company's IT department—call centers in Manila, business analysis at company headquarters in Santa Clara, application development in Mumbai. And a full roster of career opportunities—from entry level to senior leadership—will exist at each and every location.」

世界中に分散したIT部門の開発拠点がそれぞれ専門特化して存在し、すべての拠点に、エントリーレベルからシニア・リーダーシップまでのすべてのキャリア機会が存在する、というものである。インテルは既に27カ国にIT部門の開発拠点を持っており、他社もインテルの考え方に追随するだろう、というシナリオである。この第1シナリオでは、

「There will still be a future in IT for smart young Americans.」

米国の若くて優秀な人にとってIT分野に将来あり、という結論になる。

オフショア企業が多国籍化する可能性

では第2シナリオはどうか。第2シナリオは、いきなり2010年のインドの会社の描写から始まる。

「It's 2010. TaTa Consultancy Services has made New York City its de facto worldwide headquarters and opened more than 100 satellite offices around the country.」

インドのTaTaがニューヨークに本社を移転。IBMを凌ぐ「the leading IT services provider in the States—and the world」になるというもの。

「"If Indian firms set up shop in the U.S., that's where the real threat happens," says N. Venkatraman, Boston University School of Management's IS department chairman. If offshore providers transform themselves into multinational corporations, watch out. They'll develop talent at all levels of IT operations.」

オフショア・プロバイダーが多国籍企業に変質することが、米国にとって最大の脅威だという認識である。

「Once the number of jobs available to skilled U.S. IT workers dips below a certain level and the salaries being offered hit rock bottom, "Americans just aren't going to go into the profession anymore," Matloff says.」

そしてそうなってしまえば、米国でITプロフェッショナルを目指す人がいなくなってしまう。これが第2シナリオである。

日本には、もちろん日本語の壁があり、日本企業の慣習の壁がある。

むろんそのことも踏まえたうえで、日本での2010年シナリオを描くとすれば、どんなふうになるのか、興味のある方は思考実験をしてみてください。

この中で議論されている、海外に出て行く仕事、米国内に残る仕事の腑分けについてが、少しはその参考になるかもしれない。特に第1シナリオでは、米国にハイエンドの仕事がかなり残るというシナリオなので、それに関するいくつかの表現を拾っていくことにしよう。

海外に出て行く仕事、国内に残る仕事

海外に出ていく仕事は、

「application development, legacy maintenance, call center operations」(アプリケーション開発、レガシーシステムの保守、コールセンターのオペレーション)

「A standardized problem can be solved anywhere.」(標準化される問題はどこでも解ける)

「"If it can be codified, it can be done remotely and supported by IT,"」(体系化して成文化できる仕事は外に出る)

米国内に残るのは、

「U.S.-based companies will keep work here that requires close contact with the business: strategy development, business process improvement and the actual application of IT to the business.」(ビジネスとの関連の密接な仕事。戦略開発、ビジネスプロセス改善、ITのビジネスへの実際の応用)

「architecture, strategy, project management and business processes」(アーキテクチャ、戦略、プロジェクト・マネジメント、ビジネスプロセス)

「But if you need to understand the business and create value, you must be here.」(ビジネスを理解して価値創造する必要がある仕事)

「If it is still tacit and requires a lot of unstructured discussion, then it must be done here.」(暗黙知に関わり非構造的な議論を必要とする仕事)

「The things that are core, that are tightly tied to business process and the local business community, won't.」(ビジネスプロセスとローカルコミュニティに密接に結びついた仕事)

である。

表現が少しずつ違うだけで、だいたい皆言っていることは同じなのだが、これは少し楽観的に過ぎるだろう。現実には、第2シナリオに行ってしまうおそれを抱かせるに足る海外への雇用流出圧力が、厳然として存在しているからだ。

「The salary for a programmer with two to three years of experience averages $7,500 in India, according to NeoIT, an offshore consultancy. In Russia, it's $10,000. In the United States, it's $65,000. India graduates 75,000 computer scientists each year. The United States, 52,900. China, which currently brings 50,000 new IT workers into the world every year, could eventually provide 200,000 computer science graduates annually, according to Marty McCaffrey, executive director of Software Outsourcing Research.」

米国とインド・ロシアの賃金格差は大きいし、インドでは今でも年間7万5000人(アメリカは年間5万2900人)、中国は今は5万人だが、いずれ年間20万人のコンピュータ・サイエンス学科の卒業生を世界に送り出していく。

冒頭で、政治問題化という話をしたが、この2つのシナリオでも、米国が外国人労働者のビザについてどんな政策をとるかによって、第1シナリオと第2シナリオへの道が大きく分かれてくると書いている。

さて、今日ご紹介したこの記事は、CIO Magazineという雑誌(同誌はCIO.comというサイトも運営している)の1月号のものである。この1月号はとても充実しているのだが、「2010年のITの運命やいかに」というのが全編にわたるテーマで、ご紹介した「The Future of Jobs and Innovation」というテーマ以外にも3つ、「The Future of Software」、「The Future of The CIO」、「The Future of Security」というそれぞれのテーマで、相反する2つのシナリオを提示するという同じスタイルで、長文の解説記事を掲載している。レスター・サローのインタビューもある。この分野に関心のある方にとっては絶好の読み物だと思う。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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