最終更新時刻:2008年8月30日(土) 2時12分

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グーグルとデルとウォルマートの共通点

公開日時:
2003/11/18 10:10
著者:
umeda

Forbes誌のRich Karlgaardのコラムは本欄でもよく取り上げている。4月3日「IT産業に迫る「価格破壊の10年」」で取り上げた「The Cheap Decade」、5月20日「「価格破壊の10年」を面白くするシリコンバレーの反権威的パワー」で取り上げた「The Big Cheap Chance」の続編に相当する「Disruption High and Low」が最近掲載されたので、行きがかり上、これも読んでみることにしよう。

デフレ下での成長は至難の業

「Now that the economy is expanding again, stock markets like growth companies with higher multiples. What CEO or shareholder doesn't want a higher multiple? So the pressure in boardrooms once more is for growth. At the same time, a new force this column has termed the Cheap Revolution (e.g., the combination of cheap technology, excess capacity and Internet-based pricing arbitrage) is exerting a powerful deflationary gravity.」

ご承知のようにアメリカ経済は復活の兆しを見せている。株価も高くなってきた。それで、企業のCEOには「成長」という課題が久しぶりに突きつけられた。しかし同時に、価格破壊革命が進行中でもの凄いデフレ引力が働いているぞ、と書くRich Karlgaardの指摘は、当たり前ではあるが、核心をついている。ここ数年の米国企業はサバイバルモードにあったから「成長」はあまり考えなくても良かったわけで、彼が言うCheap Revolutionという新しい革命的変化の中で、企業がいっせいに「成長」を目指すというのは、もの凄くしんどい話だということである。このあたりは、これからのアメリカ企業を見ていく上で重要な視点である。

「They must grow their companies with little pricing power and against tough and seemingly endless global competition. Want that job?」(ほとんど価格決定力もなく、苛酷で終わりのないグローバル競争の中で、彼ら(CEOたち)は、企業を成長させなければならない。おい、そんな大変な仕事をやりたい奴がいるのか?)

というわけである。

そこで、彼は2つの道しかないと書く。1つはLow Disruption。もう1つはHigh Disruptionである。その中間はあり得ないのだと。

「Low Disruption means leveraging the Cheap Revolution for all it's worth to introduce products and services that are stunningly cheap yet make money because their cost basis is so low. Think Google.」

びっくりするほど安い製品やサービスを提供しつつ、価格破壊革命をレバレッジしてそれでも利益が出るように事業展開するのが、Low Disruptionである。その代表例にGoogleを挙げる。

「It's ranked third in the world in Web pages served daily. The search engine's IT infrastructure is built entirely from Linux software and computers that are so cheap they're junked instead of fixed. Ravi Aron, a Wharton professor, thinks Google's cost per Web page served is ten times below the industry average.」

Googleという会社の凄みは、新しいイノベーションとそれを支える技術が高度だというだけでなく、産業の水準に対して10分の1のコストで、Karlgaardの言葉を借りれば「価格破壊革命をちゃんとレバレッジして」システムを実装してしまっている点にもある。このあたりもGoogleがポストバブルを象徴する企業であることの証座であろう。

価格破壊で利益を上げるテクノロジー

そして2003年のcheap techとして列挙されているのが、

(1) throwaway servers

(2) open-source software

(3) Wi-Fi

(4) voice-over IP

(5) radio-frequency identification chips(RFID)

(6) Web services from Salesforce.com, RightNow or the new Siebel/IBM alliance

(7) network applications from One Network Enterprise

(8) utility computing from Mercury Interactive

(9)"on-demand" computing from IBM

(10) programmers working from India

(11) engineers from China

(12) Web designers from Estonia

である。まぁ、年末になるとよく出てくる「1年の総括」のチェックリストとしてでも使ってください。確かに皆、安い。そして、そこで勝つ企業の例は、

「Of course, Dell and Wal-Mart are the exceptions to this rule. Both started as cheap disrupters, yet even in middle age they leave little space for newer and cheaper disrupters from below. Here is what Dell and Wal-Mart have in common: headquarters in cheap locations; the best supply chains in the world; and massive sourcing from China. Dell makes half of its computers in China, through Quanta, a Taiwan-headquartered company. Wal-Mart now consumes 10% of China's exports to the U.S. and 1% of China's GDP. 」

あっ、またデルとウォルマートだ。本欄「「楽しい日本の会社」にアンチテーゼを突きつけるデル」もあわせてご参照。

さてもう1つのHigh Disruption。

「High Disruption is what BMW, Mercedes and Lexus did to Cadillac and Lincoln in premium automobiles (although Cadillac, under new leadership, has fought back impressively of late).」

「It is what Miele did to Maytag in washers and dryers.」

「It is what Pixar is doing to Disney in animation (even as those two companies remain connected).」

「It is what NetJets is doing to commercial carriers in the battle for first-class business travelers.」

として、BMW、Mercedes、Lexus、Miele(我が家でも、実は1,000ドルもするMieleの掃除機をつい最近買ったので、妻は大変喜んでいる)、Pixar、NetJetsの例が出ている。

「High Disruption is the act of directing a premium product or service at today's affluent customers. Good news: Around the world, these customers are growing in number. Bad News: Such customers are more discerning and fickle than ever before.」

グローバルに見れば増加の一途をたどる富裕層に向けてのプレミアム商品・サービスを、という話である。

まぁ結論から言えば、いいまとめにはなっているがあまり新味のないコラムでありました。

ただ、Rich Karlgaardが、Low Disruptionの範疇の企業として、グーグルとデルとウォルマートの3つを併置している点が少しだけ心に残る。グーグルとデルとウォルマートを一緒にして考えたことはなかったから。頭の片隅において、また引き続き、考えてみることにしよう。

「イノベーションのジレンマ」の続編が参考書

さて、Richが最後に、Low Disruptionを考える参考書として掲げているのが、

「To learn more about Low Disruption, read The Innovator's Solution: Creating and Sustaining Successful Growth by Clayton M. Christensen and Michael E. Raynor.」

話題の新刊「The Innovator's Solution」。「イノベーションのジレンマ」のClayton Christensen教授の第二作である。「イノベーションのジレンマ」は、江島健太郎さんが、その理論を、企業の情報システムにあてはめて論じているのでそちらも参考になる。「イノベーションのジレンマ」は名著として名高く、第二作が待たれていた。そのせいもあって、各メディアは「The Innovator's Solution」出版と同時にいっせいに取り上げた。アマゾンで立ち読みすることもできるほか、Forbesに抜粋が掲載されているし、ハーバードビジネススクールのWorking Knowledgeでも書評が出ている。CoranteのIdeaflowというサイトは、ずっとこの本のことばかり10月からずっと書き続けていた。僕はまだちゃんと読んでいないのでコメントは差し控えるが、興味のある方はぜひ原著をどうぞ。すべて読み終えたSotto Voceの村山氏(在シリコンバレー)は、そのBlogで、この「The Innovator's Solution」の読後感を

「自分や周囲の思考・行動両方におけるアウトプットを照らし合わせる自分なりのチェックリストの項目を増やしてくれるような本である。これは私見だが、「経験を積む」ということは、そういうチェックリストが形成され、「洩れ」が減りながら整理が進む過程なのだと思うし、「ユニークな価値を出す」というのはリストの中身が他人とは違っていることに起因するのだと思う。無論、「本」というメディアは一手段でしかないが、優れた本は自分が直接経験することによって一つずつ獲得するチェック項目には無い、複数のチェック項目を「体系化された」パッケージとして与え、それまで自分の中に溜まってきたチェック項目を整理し、新たな視点で考えるきっかけを与えてくれるものだと思う。」

「総括めいたことを言えば「Innovator's Solution」は、ユーザーに新たな価値を提供する製品なりサービス(決して「技術」そのものではない)をどう市場に出していくか、という命題に対し、新興企業・既存企業それぞれ固有の立場からどう取り組むかというテーマについて、納得感の高い「チェック項目」を体系的に提供している本である。」

「そして、本書を読んで役立てることのできる人は、英語の勉強をするのに英和辞典を使うのでなく、あえて英英辞典やThesaurus(類語辞典)を買って英語の語彙を増やすことを選ぶタイプの人なのかもしれないな、と思う。ちょっと抽象的な話が過ぎたかな?」

こうまとめておられる。

アメリカの新刊書が日本語のBlogでたちまち解説されるようになる時代もまもなくやってくるかもしれませんね。人より早く英語の新刊書を読んで知ったかぶりするだけでは何の付加価値も出ない時代がやってくるのは、けっこうなことであります。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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