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これからは「前向き」なキャリアチェンジを

2003/11/17 10:10
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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キャリアチェンジの考え方について書かれたFast Company誌の「Identity Shift」が面白い。雑誌が届いてすぐ読んで面白かったので、ウェブ上に載るのを待っていたのだが、やっと載ったのでご紹介することにしよう。

この記事で焦点を当てているのは、

「A former Harvard Business School professor, Ibarra is the author of Working Identity: Unconventional Strategies for Reinventing Your Career (Harvard Business School Press, 2003), a book that details her three-year study of approaches to career change.」

ハーバードビジネススクールからヨーロッパのINSEADに移ったHerminia Ibarra氏と、その近著「Working Identity」である。

従来のキャリアチェンジに関する考え方は後ろ向き

この本は3年間にわたる研究成果がまとめられたものらしいが、従来のキャリアチェンジに関する常識に真っ向から対立するものだという。アメリカはキャリアチェンジが当たり前の国だから本屋に行くとそういう本ばかりが並んだ大きな棚があるが(たぶん日本もいずれそうなるだろう)、そういう従来の本で書かれているような常識を総括して、Ibarra氏は、

「That "plan and implement" model, however, has several problems, according to Ibarra.」

従来の常識を"plan and implement"モデルと呼び("plan and implement"モデルは、その人自身の興味やスキルや性格を分析し、適性にあった仕事をアセスメントし、そこから仕事を探していくようなアプローチを取る)、それにはいくつかの問題があると指摘する。

(1) 第1の問題は、前向きでなく後ろ向きであること(it's backward-looking, rather than forward-looking)。キャリアチェンジを考えようとする人は、だいたい「何をやりたくないか」だけはよく語れるが、じゃあ代わりに何をしたいのかを語ることはほとんどできない。過去に経験したことがないことを想像するわけだから、考えてみれば、何が面白くてエキサイティングなのかなんてわかるわけがないからだ。

(2) 第2の問題は、従来のキャリアチェンジの常識が「one-shot deal」つまり一回限りのやり直しの効かないものとしてモデル化されていることだ。だから次の何かを決めるプロセスにやたらと時間をかけることになる。それでうまくいかなければ袋小路に入る。

(3) そして第3の問題は、従来のモデルでは、人にはそれぞれ、人生においてなすべき固有の(唯一の)何かが存在するかのような前提を置いていることだ。だからそれを発見しようという発想になってしまう。天職というような言葉はあるけれど、芸術家のような例外を除き、大半の人は、キャリアについて複数の多様な可能性がある。そして時間や経験とともに可能性は変化していくものだ。

以上3つのポイントは、僕の解釈を少し入れながら要約したもので、正確には原文を当たってください。

試してみることが重要

そして、Ibarra氏が主張する新しい方法は、"test and learn" approach。「試してみて学ぶ」アプローチである。

「"The only thing that can help you figure out your next career is bumping into it," Ibarra says. "So the whole process can be distilled to this: What maximizes the chances that you'll encounter it, then recognize it as a real possibility and develop it?"」

次のキャリアを見つけるには、飛び込んで試してみてそのプロセスの中で見つける以外ないではないか、というわけだ。

「Ibarra has identified the following three practices that form the basis of this strategy and provide logical underpinnings to what can sometimes seem like a messy and unfocused quest.」

そしてIbarra氏は、3つのことを実践するようにアドバイスする。

(1) Craft experiments: 何とかうまいことやって色々な経験を積む。いまの仕事を辞めずに、別の部署や別の仕事を経験できるようにうまく立ち回る。コースを取って新しいことを勉強する。フリーランスで何かやってみる。興味のある分野でアルバイトをしたり無償で仕事を引き受けたりする。休暇を利用して自分の関心に近い分野の経験を積む。

(2) Shift connections: 人脈、コネクションを、これまでの人間関係だけの世界から、ぐっと外に広げるよう努力する。

(3) Make sense: そしてここは原文を引用しよう。

「Create a story that you can tell yourself and others about what you're trying to do and how it connects the old you with the person you wish to become. Think of it as your own personal elevator pitch. Don't be afraid to revise it regularly, based on your progress and your growing understanding of where you want to go.」

あなた自身のストーリーを作れ。それをあなた自身のエレベーターピッチ(起業家たるもの、エレベーターの中の30秒くらいの間で自分の構想を投資家に説明できなければいけない、という意味でこのエレベーターピッチという言葉はよく使われる)だと考えよう。自分がどこに向かいたいについて考えが深まるにつれてそれをどんどん改訂するのを恐れるな、とのこと。

何につけ、30秒くらいで、いつでも自分の考えを語れるよう訓練する癖をつけることは重要だ。エレベーターピッチという言葉には、たとえば突然エレベーターの中で自分がずっと会いたいと思っていた人に会えたという「30秒だけの幸運」に遭遇したときに、そこで自分をどう表現できるのか、そういうことを常に考えておけ、みたいな意味合いもある。シリコンバレーではネットワーキング・パーティというのがよくある。そういう場で、日本人が輪の中に参加できない、なんて話を聞くことがよくあるが、それは英語の問題もさることながら、さまざまなことについての自分の考えをコンパクトにまとめる訓練ができていないということも大きな理由のように思う。

さて本題に戻る。Ibarra氏は、この「Test and learn」アプローチのほうが「plan and implement」モデルよりいいが、一朝一夕にはいかないから3年くらい時間をかけよ、と言う。

「The subjects in Ibarra's study who used this test-and-learn approach had better luck changing careers than those who followed more-conventional approaches. But it can't be done overnight. Most of her subjects took three years to find the work that finally quieted their gnawing sense of discontent.」

そして、

「But, according to Ibarra, the biggest mistake made by would-be career changers is waiting too long to start the process.」

「Ibarra says. "But if you know it's going to take three years, why not start preparing yourself? You might as well take advantage of the slack times, instead of waiting until everybody else is changing."」

キャリアチェンジしたい人が犯す最大の過ちは、そのプロセスをスタートするのを待ちすぎることなのだと主張するのである。興味のある方は原文をどうぞ。

何だ、当たり前のことばかりで面白くねぇな、と思われた読者の方もいたかもしれないが、こういうことを真面目に考えるのも、たまには大切と思う。

悩まずにチャンスに飛びついて必死にもがけば道は開ける

僕がキャリアチェンジで悩んでいる若い人にいつも言うのは、「あんまり悩みすぎないで、目の前にあるチャンスにすぐ飛びつけよ。それで新しい環境の中で必死にもがいているうちにできた人間関係を大切にすれば、そこがうまくいかなくても、必ず次の道は開けると思うよ」ということであるが、その意味でも、この記事のIbarra氏の研究はとても参考になった。

本連載6月20日「運の良し悪しは自分で変えられる」でご紹介した「The Luck Factor: Changing Your Luck, Changing Your Life: The Four Essential Principles (Miramax, 2003)」もアマゾンで立ち読みできるみたいだが、運のいい人とは「リラックスして新しい経験を受け入れるオープンさ」を持つ人である、というこの本の研究成果と、今日取り上げた「Working Identity: Unconventional Strategies for Reinventing Your Career」には、ある種共通した「実践的に人生を切り拓く」知恵やヒントが溢れている。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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