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年月を経ても色あせないアンディ・グローブのIT産業経営論

2003/11/12 10:10
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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アマゾンの「Search inside the Book」サービスはやっぱり素晴らしい。使えば使うほどそう思う。出版社や著者との利害相反等の難題を乗り越えて、何とか存続・発展の道をたどってほしい。アマゾンの素晴らしさに応えて、本連載でも微力ながら、アマゾンのこの新サービスをうまく取り入れた新しいコンテンツを考えて、少しずつでも実践していきたいと思う。

時間が経っても古くならない良書をじっくり紹介する

やはり本になったコンテンツの中には、ウェブ上のコンテンツとは比較にならないくらい、カネと時間と情熱がかけられた素晴らしいものがある。ロングセラーたり得る良書は、本という永続的なフォーマットをきちんと意識し、長期にわたって価値が出るように工夫して書かれている。

しかし残念ながら、めまぐるしく動く世の中で、次から次へと溢れてくる新しいコンテンツの渦の中で、真に素晴らしい本が、時を経つにつれて忘れ去られてしまっているのも事実である。

「いやぁ、IT産業は変化が激しいから、半年前に書かれたものでも、もう古いですよね」

なんて訳知り顔で言う人に限って、実は何かを「わかったつもり」になってどんどん流行を追いかけているだけで本質は何も身についていない、という場合も多いわけで、IT産業に関する本といえども、時代の流れに淘汰されない素晴らしい本が、そう数は多くないが、ある。

新しい実験として、僕が折に触れて何回も何回も再読する「座右の書」のいちばんいいところを選んで、アマゾンのこのサービスでサーチしながら解説を加え、少しゆっくり時間をかけて、その本の背景にある思想や、現代にも通用する意義を読み解いていく、ということをやってみたいと思う。今売れている話題の本を取り上げて中身を解説するというのではなく、忘れられたとまでは言わないけれど最近はあまりアテンションがかかっていない本を紹介するのだから、少しは本の売れ行きに寄与することだろう。少々立ち読みしたところで、出版社も著者も文句は言わないはずだ。

日々起こっていく最先端の事象の把握については、若干粗っぽくも本質をぎゅっと鷲掴みにして表現することに意味があるが、良書については、するめをじっくりと口の中で噛み続けるようにして解説するほうがいいのかな、と今のところは考えている。やってみながら修正をかけていくことにしよう。

IT企業の経営に関するバイブル

ところで僕の専門は経営コンサルティングである。経営コンサルティングの中でも「IT企業の経営」が専門である。そして僕の信念は、他産業の企業経営とIT産業の企業経営は全く違う、というものである。その信念が高じて、自分でコンサルティング会社を作るに至ったわけだが、そんな僕の偏見で、IT産業の企業経営についての指針となる本を一冊選べと言われれば、僕は迷わず、アンディ・グローブの「Only the Paranoid Survive」を挙げる。1996年に書かれたものだが全く古びていない。

この本は経営ノウハウ本でもなければ、IT産業の解説本でもない。正真正銘の経営思想書だと言っていい。それもIT産業という、ムーアの法則によって刺激されるイノベーションが連続的に起こり、激しい技術革新が産業全体に大変化を起こし続ける世界において、経営とはどういうことなのか、経営者とは何をするべきなのか、そういう産業に携わる我々一人一人はどういう気構えで生きていかなければならないのか、といった本質的な問題について、何度読んでもそのたびに示唆が得られる素晴らしい本なのである。

僕は、顧客に対するコンサルティングというテクニカルな文脈でこの本を読むこともあるが、小なりといえども会社を二つ経営している身として、自分を取り巻く激しい環境変化の中をどんなふうに生きていくか、どんなふうに苦しい決断を下すか、というような観点で、この本から強く影響を受けている。それは「Paranoid(病的なまでの心配性)だけが生き残る」というこの本のキー・メッセージに、僕自身のParanoid的性格が呼応したせいかもしれないのだが。

実は何回に分けてこの本の話をするかはまだ決めていない。もちろん日々の世の中の流れを放り出して、何日も続けてこの本について書くということはしないから、連載の折々に挟み込むようにして続けていこうと思う。今日は、そのさわりだけをまず。

アマゾンでこの本にたどり着き、Search inside this bookというところをクリックするとこの本を立ち読みすることができるページに来る。たとえば「That guy is always the last to know」というキーワードで「Search inside this book検索」すると、本文21ページを中心に前後5ページを読むことができる。今日はここを読むことにしよう。

大変化を乗り越えるには神経を研ぎ澄ませ

この部分が末尾となる第一章は、94年にインテルを襲った大変化をアンディ・グローブが乗り切ったときの実感と、そこからの教訓が詳細に書かれている。ほんの一部だけ引用しよう。といってもウェブ上のコンテンツと違ってカット&ペーストができないので筆写する。それほどたくさんは引用しませんので、あしからず。

「The trouble was, not only didn't we recognize that the rules had changed --- what was worse, we didn't know what rules we now had to abide by.」(20ページ)

「You know only that something has changed, something big, something significant, even if it's not entirely clear what that something is.」(同)

「It's like sailing a boat when the wind shifts on you but for some reason, maybe because you are down below, you don't even sense that the wind has changed until the boat suddenly heels over.」(同)

「The lesson is, we all need to expose ourselves to the winds of change. We need to expose ourselves to our customers, both the ones who are staying with us as well as those that we may lose by sticking to the past. We need to expose ourselves to lower-level employees, who, when encouraged, will tell us a lot that we need to know.」(22-23ページ)

「As we throw ourselves into raw action, our senses and instincts will rapidly be honed again.」(23ページ)

たったこれだけの引用でも少しは感じていただけるかと思うが、アンディ・グローブは、IT産業というのは常に大変化が自社を襲うものだということを前提に、そしてその変化というのはそれ自身何だかよくわからないもので、しかも何の前触れもなくひたひたと組織に忍び寄るものであると認識する。そしてだからこそ組織全体の神経を研ぎ澄ませて「変化の予兆」を感得できるようにならなければならない、と言っているのである。

そのためにもの凄い緊張感を組織全体に漲らせなければならない、という彼の思想は、Paranoid(病的なまでの心配性)たる彼自身の性格をきっちりと組織にインプリメントすることに他ならず、それ以外にはIT産業でサバイブする方法はないと、彼はこの本の第一章でまず主張するのである。「We need to expose ourselves …」のリフレインはこの本の基調となっているのだ。

我田引水を承知で言えば、この「英語で読むITトレンド」連載では、日本のIT企業が、そしてIT産業に従事する日本人一人一人が、激動する産業の中でサバイバルするために、「We need to expose ourselves to what's going on in the United States」と念じながら見つめ考えるべき事象を日々切り取って、その意義を解説しようと試みているものである。比較的よく取り上げるグーグルやアマゾンやオープンソースやBlogといった現象は、これから我々の身に起こる大変化を某か象徴しているものだからこそ登場頻度が高いのだと思っていていただければと思う。

アンディ・グローブと「Only the Paranoid Survive」については、またいずれ。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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