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オープンソース的コラボレーションが社会を変える

2003/11/07 10:00
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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Wired誌の「Open Source Everywhere」という、これまた長文の記事がとてもいい。昨日に引き続き、今日ご紹介するこの記事も長い。

「Software is just the beginning … open source is doing for mass innovation what the assembly line did for mass production. Get ready for the era when collaboration replaces the corporation.」

これがこの記事のサブタイトル。「ソフトウェアは始まりに過ぎない」、つまり、組み立てラインによって大量生産(マス・プロダクション)時代が始まったように、オープンソースによってマス・イノベーション時代が始まる。企業・組織を越えてのコラボレーションが企業・組織を置き換える時代への準備が整ったぞ、というのである。

というわけで、この記事は、オープンソース的コラボレーションの社会的意義についての考察である。

オープンソースプロジェクトがコレラ対策の問題を解決

冒頭は、コレラ対策の話から始まる。

コレラは、19世紀の病気という印象が強いが、発展途上国ではシリアスな問題。現在の処方は、カネがかかる方法か、処方に高いスキルが必要なもののいずれかで、貧しく医療スキルも高くない国にうまく適用できない。Timothy Prestero氏は、チームを組んで開発に乗り出したが、なかなかうまくいかない。そして・・・・。

「So Prestero turned to ThinkCycle, a Web-based industrial-design project that brings together engineers, designers, academics, and professionals from a variety of disciplines. Soon, some physicians and engineers were pitching in - vetting designs and recommending new paths. Within a few months, Prestero's team had turned the suggestions into an ingenious solution. Taking inspiration from a tool called a rotameter used in chemical engineering, the group crafted a new IV system that's intuitive to use, even for untrained workers. Remarkably, it costs about $1.25 to manufacture, making it ideal for mass deployment. Prestero is now in talks with a medical devices company; the new IV could be in the field a year from now.」

オープンソース方式で、ネット上の知恵を結集して、たったの数カ月で、コストも安く、訓練なしに使うことのできる新システムを開発してしまった、という話である。

「ThinkCycle's collaborative approach is modeled on a method that for more than a decade has been closely associated with software development: open source. It's called that because the collaboration is open to all and the source code is freely shared.」

Thinkcycleのコラボレーションアプローチは、もう十年近く、オープンソースソフト開発と密接に関わってきた方法だとこの記事は書く。実は僕もこれは知らなかったのだが、興味のある方は、ウェブサイトをご参照。ThinCycleとは何かについて、ウェブサイトのトップから引用のみしておこう。

「ThinkCycle is an academic, non-profit initiative engaged in supporting distributed collaboration towards design challenges facing underserved communities and the environment. ThinkCycle seeks to create a culture of open source design innovation, with ongoing collaboration among individuals, communities and organizations around the world.」

「ThinkCycle provides a shared online space for designers, engineers, domain experts and stakeholders to discuss, exchange and construct ideas towards sustainable design solutions in critical problem domains. Join the ThinkCycle Community and make a difference!」

Sotto Voceの村山尚武氏は、この記事「Open Source Everywhere」を読んで、背筋をゾクゾクさせるような興奮を味わったとそのBlogで書いている

「内容としてはLinuxなどでお馴染みの「オープンソース」のモデルを発展途上国におけるコレラ治療用の新しい医療機器の開発に適用し、成功したという話から始まって、いかに従来の組織の枠組みを越えたcollaborativeな智恵の集積より新たなモノが生れているか、それがどうやってこれからの企業のイノベーション活動を変えうるか、ということを記述しているのだが、昨日昼食を食べながら読んでいて、しばし仕事に戻るのを忘れさせるぐらい背筋をゾクゾクさせるような興奮を味わってしまった。」

オープンソースの価値はコスト削減ではない

そして、冒頭で引用した文章のすぐ次に出てくる

「Open source harnesses the distributive powers of the Internet, parcels the work out to thousands, and uses their piecework to build a better whole - putting informal networks of volunteer coders in direct competition with big corporations. It works like an ant colony, where the collective intelligence of the network supersedes any single contributor.」

を、こんなふうに読み解いている。

「オープンソースは単にボランティアの活動に依存して独占的でない知的所有権を形成し、コストを引き下げる手段ではない。上の1節に「to build a better whole」、そして「the collective intelligence of the network supersedes any single contributor」とあるように、創造の結果だけでなく過程を共有することによって参加者が互いに触発し合い、これまでに無かったもの、素晴らしいものを作ることができるのだ。それはまた、無数の凡人が互いに思考を共有し、足りない部分を補い、アイディアの連鎖反応を起こすことにより、より大きなインパクトを(大げさに言えば)文明に与えることを可能にするのである。これまた大げさな言い方をすれば、より多くの人に、「自分の生きた証」「自分のいなくなった後に残るモノ」を残す道を開いた、と言っても良いかもしれない。」

また、

「"There's a reason we love barn raising scenes in movies. They make us feel great. We think, 'Wow! That would be amazing!'" says Yochai Benkler, a law professor at Yale studying the economic impact of open source. "But it doesn't have to be just a romanticized notion of how to live. Now technology allows it. Technology can unleash tremendous human creativity and tremendous productivity. This is basically barn raising through a decentralized communication network."」

という文章を引用して、

「「barn raising」というのは村の皆が協力して農家の納屋の棟上げをすることだが、この場合、このサイトにあるように、個の利害を越えた共同体精神のメタファーとして使われている。映画「アポロ13」を思い出して欲しい。宇宙船の中の2酸化炭素濃度が高まり、乗員の生命が危機にされされた局面で、NASAのスタッフが智恵を持ち寄り、あり合わせの材料で空気の浄化装置を作る方法を編み出し、それを無線で乗務員に伝え、作った装置が作動して2酸化炭素濃度が正常に戻ったシーンで指令センターの皆がわっと喜んだシーンがあったが、あそこでセンターの皆が感じていた感覚こそが、「barn raising」により象徴される感覚である。冒頭に紹介されたコレラ治療のプロジェクトに参加した人々も、自分の貢献したアイディアが大勢の命を救う製品に、まるでジグゾーパズルが少しづつ出来上がるようにはまり込んで行く感覚を味わったはずである。」

と解説されている。

ビジネスにロマンを

僕は個人的にも村山氏の識見や人柄をよく知っているのだが、彼はビジネスマンとしての人生について、またビジネスとか経営そのものを、僕なんかよりもずっとロマンチックに、人生の意義という文脈で真剣に考えている人である。話が少し脱線するが、たとえば、彼の以前のBlogの中で、Jim Collins and Jerry Porras共著の「Built to Last(ビジョナリーカンパニー)」と「Good to Great(ビジョナリーカンパニー2)」という経営書に触れて、

「この2冊は「長期にわたり成功し続ける企業の特質」と「そういう特質はいかにして獲得されるか」をそれぞれ論じているのだが、決して「ハウツー本」ではなく、読み手をインスパイアする類いの本である。日本版は読んでいないが、少なくとも、英語ではそう読める。ビジネス本には珍しい、ある種「感動的」な本である。なぜ感動的なのか。人間には、自分のいなくなった後も存続し、世の中にインパクトを与え続ける「何か」を作りたい、残したい、という欲求が多少なりともあるような気がする(それを単なるエゴという事もできるのかもしれないが)。これが芸術家であれば作品を残せるし、科学者であれば何かの発見という形でそれが実現できるが、ビジネスマンというキャリアを選んだ人間にとっては「会社」というのがその「何か」を実現する一つの手段であり、本書はそれを実現(すくなくとも執筆の時点では)するための道しるべを示してくれるからではないだろうか。」

と書かれているが、ビジネスと人生の関係を模索する一貫した彼の姿勢を、この二つのBlogから感じ取ることができる。

読者の皆さんには、今日はぜひ、村山氏の長文解説「Open Source Everywhere」を先に読んで、それから、週末にでもこの「Open Source Everywhere」の原文を読んでみてください。きっと何か新しい発見があると思います。

本欄10月31日の「Blogの増殖で変わる世界について考える」に「ウェブログ@ことのは」からいただいたトラックバックはいいですねぇ。

「「興味のある方は原文をどうぞ」と言われると俺は燃える(笑)。」

この連載をそういうふうに読んでもらえるのが、いちばん嬉しいです。

ではHave a nice weekend!

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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