最終更新時刻:2008年10月8日(水) 18時08分

-

「楽しい日本の会社」にアンチテーゼを突きつけるデル

公開日時:
2003/11/06 10:05
著者:
umeda

デルについてはずいぶん語り尽くされているように思うが、ビジネスウィーク11月3日号は、カバーストーリーに「What You Don't Know About Dell: A look at the management secrets of the best-run company in technology」というのを持ってきた。長いぞ。また、CFO.comは、「Does Dell Stack Up?」というウェブサイトで5ページの長文記事を掲載している。これも長いぞ。興味のある方は原文でどうぞ。

とてもではないが、この二つの記事全部は紹介しきれないので、今日は、気になった箇所と感想のみにしよう。

いや実は、この連載も半年が過ぎ、だんだんと一回の長さが長くなっているのが自分でも気がかりになってきているのだ。少し自戒しようと思う。ランナーズ・ハイみたいなものかもしれないが、どこかでパッタリいくとまずいので。

余談だが、僕が尊敬している毎日更新サイトに、「松岡正剛の千夜千冊」というのがある。松岡氏が、毎日一冊の本を紹介し、その本を巡ってエッセイを書いている。千回終わると「松岡正剛・生涯の千冊」というようなことにまとまるのだろうと思う。まもなく900回に達しようとしているのであるが、彼がこの千夜千冊をスタートした時の一回の原稿の量に比べて、最近のものはうんと分量が多くなっている。そうねぇ、自然と長くなっていくんだよなぁ、と何だか共感してしまうのだが、いかんいかん。

デルという会社のすごみはなかなか伝わらない

さて本題に戻る。この二つの記事をせっせと読んだ感想として今感じるのは、長い文章でいくら言葉を尽くしても、デルという会社の凄みというのはなかなか伝わらないものだなぁ、ということである。

「It's this combination -- reaching for the heights of perfection while burrowing down into every last data point -- that no rival has been able to imitate. "It's like watching Michael Jordan stuff the basketball," says Merrill Lynch & Co. technology strategist Steven Milunovich. "I see it. I understand it. But I can't do it."」

細部のデータ一つ一つを掘り起こして目を行き届かせつつ、完璧の極みに到達すること、この組み合わせをライバルは真似できないのだ(というような意味だと思う)。「マイケル・ジョーダンがバスケットボールをしているのを見ているようだ。見て、理解できる。でもできない」とは著名なアナリストの言葉だそうである。

そして、デルが徹底的にOperational Excellencyを追求する具体例がたくさん載っている。

「When success is achieved, it's greeted with five seconds of praise followed by five hours of postmortem on what could have been done better.」

何かに成功したら、称賛するのは5秒。そしてそのあとに、どうしたらもっとよくできたかについて5時間の事後検討をする。

「Says Michael Dell: "Celebrate for a nanosecond. Then move on."」

「ナノセカンドのお祝いがすんだら、どんどん前へ進め」とは、マイケル・デルの言葉。

「After the outfit opened its first Asian factory, in Malaysia, the CEO sent the manager heading the job one of his old running shoes to congratulate him. The message: This is only the first step in a marathon.」

マレーシア工場がオープンしたとき、デルは、工場の責任者に、お祝いとして古いランニング・シューズを送ったらしい。メッセージは「これがマラソンの始まりだ」。

「Just as crucial is Michael Dell's belief that once a problem is uncovered, it should be dealt with quickly and directly, without excuses.」

問題がいったん発露したら、速くダイレクトに対処する。言い訳はなし。

「Dell believes every product should be profitable from Day One. To ensure that, he expects his managers to be walking databases, able to cough up information on everything from top-line growth to the average number of times a part has to be replaced in the first 30 days after a computer is sold.」

すべての製品は一日目から利益を出すべきだとデルは信じているから、責任者は数字をすべて把握しながら働く歩くデータベースであることが期待される。

「"There are some organizations where people think they're a hero if they invent a new thing," says Rollins. "Being a hero at Dell means saving money."」

「何か新しいことを発明すると英雄になるなんて皆が思っている組織もあるらしいが、うちではカネを節約した奴が英雄だ」とはデルの右腕ロリンズの言葉。

「The emphasis is on small surgical strikes on defects and waste, not massive restructurings. Consider a Six Sigma meeting one balmy July afternoon. Rollins listened to John Holland, a technician in Dell's server factory, describe how his team replaced the colored paper it used to print out parts lists with plain white paper, saving $23,000. "Where else do you get a supervisor making $40,000 a year presenting to the president of a $40 billion company?" says Americas Operations Vice-President Dick Hunter, Holland's boss.」

パーツリストを打ち出すための色のついた紙をただの白紙に替えたことで2万3000ドル節約できたなんて話まで、いちいちロリンズが聞いているらしい。

「Everyone is expected to sacrifice their own interests for the good of the business, and no one gets to be a star.」

すべての社員がそれぞれのインタレストを犠牲にして、ビジネスにとってよいことを追求する。スターなんかいらない。云々かんぬん。

細部だけを見れば、日本企業でも当たり前にやっていることばかりのようにも思えるし、そうでないようにも思えるし。

「楽しい日本企業」との対照性がデルの本質

でもなぁ、いろんなことがうまくいったら、お祝いもしたいじゃないの、ナノセカンドじゃなくて一晩くらいかけて。

褒めてももらいたいじゃないか、工場を開いたら。ランニング・シューズを送られて、これからマラソンを走れと言われるのではなくて。

日本人の僕は自然にそう思ってしまうのだが、そのあたりがデルを考える本質なのかもしれない。

話は少し脱線するが、僕は、山科けいすけ「C級サラリーマン講座」の書評・「日本企業が持つ「C級性」の魔力」を、二年半前に日経ビジネスに書いた。

実はこのデルの長文記事二本を読んで、「C級サラリーマン講座」を懐かしく思い出してしまったのだ。四コマ漫画の作品そのものはアーカイブに転載できず文章のみなので、雰囲気しか伝わらないのが残念であるが、僕の持論である「楽しい日本の会社」論を、その中で書いた。いくつか引用する。

「本書に描かれる「C級」性の大部分は、会社が「仕事をする場」というだけのシンプルな存在ではなく、「生活の場」さらには「楽しい遊び場」としても機能するゆえに生まれている。」

「仕事を通して遊ぶのは本当に楽しい。それも、特に毎日顔を合わせる連中との「疑似家族的小宇宙」で、仕事と遊びが一体となり、しかも仕事がうまくいっている時の至福といったら何物にも代え難い。これが戦後日本のサラリーマン社会だったのだ。」

「日本の一流企業というのは、こうした避け難い「C級」性を内包しつつも、「C級」性からの逃げ場も豊富に用意し、「コミュニティーとしての会社」としての理想を、世界でも類まれなレベルで達成してしまっている存在だ。」

「私はシリコンバレーに住んで、米国のベンチャーをつぶさに見る機会も多いし、米国大企業に勤めていたこともあるが、米国の会社とは「仕事をする場」以上でも以下でもなく、株主志向経営とスピード経営の徹底でますますその傾向が強まっている。効率はいいが、とても寂しい。仕事以外のイベントなども形ばかりに用意されるが、組織自身を「疑似家族的小宇宙」に見立てて「仕事と遊びを常時一体化して生きる」という「日本の会社の楽しさ」を一度でも経験したことのある者からすれば、物足りないこと甚だしい。しかし一方で、日本の会社は、この楽しさを維持するためにあまりにも大きな代償を払っているのだろう。」

デルという会社は、こうした「楽しい日本の会社」にアンチテーゼを突きつける存在なのだというのが、僕の今のところの感想なのである。むろん半分冗談であるが。

「Since 2000, the company has been adding market share at a faster pace than at any time in its history -- nearly three percentage points in 2002. A renewed effort to control costs sliced overhead expenses to just 9.6% of revenue in the most recent quarter and boosted productivity to nearly $1 million in revenue per employee. That's three times the revenue per employee at IBM and almost twice Hewlett-Packard Co.'s rate.」

「So he and Rollins have sketched out an ambitious financial target: $60 billion in revenues by 2006. That's twice what the company did in 2001 and enough to put it in league with the largest, most powerful companies in the world. Getting there will require the same kind of success that the company achieved in PCs -- but in altogether new markets. Already, Michael Dell is moving the company into printers, networking, handheld computers, and tech services. His latest foray: Dell is entering the cutthroat $95 billion consumer-electronics market with a portable digital-music player, an online music store, and a flat-panel television set slated to go on sale Oct. 28.」

そういうふうにしてデルは、こんな驚異的な数字を出し、さらに売上高を$60Bil、つまり6-7兆円にまで数年で伸ばそうと躍起になっているのである。

そしてビジネスウィークの記事の最後。

「But there are some striking similarities between Dell and another giant retailer: Wal-Mart.」

デルはウォルマートにそっくりだとのこと。そういえば、ウォルマートの特集記事が、最近日経ビジネスに載っていたな。全幹部が集まる年二回の会議は、夏は暑くて暑くて大変なテキサスで行い、冬は寒くて寒くて大変などこかでやるのだとか。理由は、ただただホテル代が安いから、である。楽しくないよなぁ。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

1

コンサルタントの山崎です。
本年5月にHBR(Harvard Business Review)に発表された論文「The Innovator`s Dilemma」(Ph.D. Clayton Christensen)がある。同氏によれば、「Disruptive」ケースは大きく2つに分かれると指摘。
ひとつは、Wal-Martやデル・コンピュータなどに見る『低価格革命』であり、もう一方は、まだ競合が少ない新ワークロードや新たな顧客をターゲットとした『新技術』である。まさに、デルの場合は前者であり、余計な研究開発投資を避け、日本流で言えばトヨタ自動車の『カイゼン』による原価低減と売上増加を徹底することが同社にとって一番大きなROI達成が可能であると予想される。
今後の後者候補を指摘するのは難しいが、少なくとも、
既存技術の改善・改良による製品開発では困難であろう。
自分自身、幾つかのキーワードはアタマの中でブレーン・ストーミングが収束段階にあるのを自覚しつつあることだけは確かである。
分かりやすい例が自動車である。最終的な目標地点は、水素ガスや100%バッテリーによる電気自動車であるだろうが、顧客が購入するには高価すぎると思われる。やはり、トヨタ自動車やホンダが進めているハイブリッド型エンジンこそが、プラクティカル・オートモービル市場における『Disruptive Technology』であると考える。
そこで、IT(情報技術)を考えるわけだが・・・、契約の関係があるので言明は遠慮させていただく。
議論はともかく、ビジネス的には売上・利益を達成したものが勝者である。手段は多数ある。私見ではあるが、優秀な若い社員が絶えることなく入社を希望する企業は、魅力的にうつるのは確かなようだ。

  山崎牧雄 on 2003/11/07

ブログにコメントするにはCNET_IDにログインしてください。

この記事に対するTrackBackのURL: 

このブログについて

ブロガープロフィール

アーカイブ

カテゴリ

  • 未分類

ブログネットワーク

アルファブロガー

外資系エグゼクティブの日々I am Jamming!
外資系エグゼクティブの日々
村上敬亮 情報産業の未来図ネットワーク型産業構造への衣替え?
村上敬亮 情報産業の未来図
クロサカタツヤの情報通信インサイトグッバイ、レバレッジ!(1)
クロサカタツヤの情報通信インサイト
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」9月イベントお知らせ
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
ケータイ時代のスタンダードiPhonista Nightの事後報告
ケータイ時代のスタンダード
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance新サービスをローンチしました
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
鈴木健の天命反転生活日記パラレルワールドとしての電脳コイル
鈴木健の天命反転生活日記

読者ブロガー

木田わをんのパソコン武士道10月13日の週のITイベント
木田わをんのパソコン武士道
インターネットメディアとWebマーケティングの可能性人為的なケアレスミスを防ぐための計算認証(?)
インターネットメディアとWebマーケティングの可能性
素人サーバ管理者のボランティア業務日誌モバイル機器の使いこなしには、挙動の把握が大切なのですが
素人サーバ管理者のボランティア業務日誌
WEB製作者の為のSEO対策スパム
WEB製作者の為のSEO対策

企画特集

KDDI「SaaSソリューション」KDDI「SaaSソリューション」
〜社内コミュニケーションの課題への解決策とは〜
エンタメCGM「gooメーカー☆メーカー」エンタメCGM「gooメーカー☆メーカー」
【第1回】開発者に訊く!各機能と開発の狙いとは

新着コメント

多分、以下のサイトで書かれているようなことを実現したいのではないかと思わ......
こんなPCの使い方はできるのでしょうか?
投稿者:seamus
そういえばWindows liveメッセンジャーもそうですね。ただ、:-)や:-pと打って......
iPhoneがついに”emoji”に対応
投稿者:長尾彰一
おっしゃる通りだと思います。 そして、月5,000円を得るために1か月何時間そ......
月5000円を得るための代償
投稿者:wackey
ikeda.minoruさん、コメントありがとうございます。 高速なモバイル回線も増......
ミニノートは、シンクライアントに最適かも?
投稿者:新倉 茂彦
moroiさん、コメントありがとうございます。 情報を守る側も、情報の本人も......
グーグル、社員の個人情報を盗まれる--人事業務の外部委託が原因 (米国)
投稿者:新倉 茂彦

ブログネットワークとは?

CNET Japan ブログネットワークは、元はCNET Japanの一読者であった読者ブロガーと、編集部の依頼により執筆されているアルファブロガーたちが、ブログを通じてオンタイムに批評や意見を発信する場である「オピニオンプレイス」、また、オピニオンを交換するブロガーたちが集うソサエティです。

広い視野と鋭い目を持ったブロガーたちが、今日のIT業界や製品に対するビジョンや見解について日々熱く語っています。

あなたもブログを書いてみませんか?

CNET Japanやその他サイトが提供するITニュースやコンテンツへの意見や分析、 ビジネスやテクノロジーに対するビジョンや見解について語っていただける方を 募集しています。ご応募はこちらから

ブログの投稿・管理

ブログの投稿はこちらから(※ブロガー専用)

ブログアワード2007開催決定!

今年最も活躍したブロガーを表彰します。詳細はこちらから

αマークって?

これは、CNET Japan 編集部の依頼に基づいて執筆されているCNET Japan アルファブロガーによるブログの印です。

Good!って?

CNET Japan ブログネットワーク内で拍手の代わりに使用する機能です。ブログを読んで、感激した・役に立ったなど、うれしいと思ったときにクリックしてください。多くGood!を獲得した記事は、より多くの人に読まれるように表示されます。

レビュー

[レビュー]2011年画質を備えた高画質、多機能Blu-ray--ソニー「BDZ-X95」
ソニーのBlu-ray Discレコーダー新製品が登場した。2007年から引き継がれる「やりたいことから選ぶ」シリー
今週の新製品総チェック:よりモバイルPCとして進化した「Let's note」が登場
松下電器産業の「Let's note」、デルのデスクトップPCとPC新製品が数多く登場した。Let's noteは9時間駆動
今週の新製品総チェック:フルサイズCMOS搭載のキヤノン「EOS 5D Mark II」が登場
キヤノンからもフルサイズCMOSセンサを搭載した「EOS 5D Mark II」が登場した。合わせてコンパクトデジカメ
今週の新製品総チェック:第4世代iPod nano登場、ソニー「α」、松下「LUMIX」に新機種も
デザインを一新したiPod nano、容量増されたiPod touchなど、新iPodファミリーが登場した。その後を追うよ