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「楽しい日本の会社」にアンチテーゼを突きつけるデル

2003/11/06 10:05
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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デルについてはずいぶん語り尽くされているように思うが、ビジネスウィーク11月3日号は、カバーストーリーに「What You Don't Know About Dell: A look at the management secrets of the best-run company in technology」というのを持ってきた。長いぞ。また、CFO.comは、「Does Dell Stack Up?」というウェブサイトで5ページの長文記事を掲載している。これも長いぞ。興味のある方は原文でどうぞ。

とてもではないが、この二つの記事全部は紹介しきれないので、今日は、気になった箇所と感想のみにしよう。

いや実は、この連載も半年が過ぎ、だんだんと一回の長さが長くなっているのが自分でも気がかりになってきているのだ。少し自戒しようと思う。ランナーズ・ハイみたいなものかもしれないが、どこかでパッタリいくとまずいので。

余談だが、僕が尊敬している毎日更新サイトに、「松岡正剛の千夜千冊」というのがある。松岡氏が、毎日一冊の本を紹介し、その本を巡ってエッセイを書いている。千回終わると「松岡正剛・生涯の千冊」というようなことにまとまるのだろうと思う。まもなく900回に達しようとしているのであるが、彼がこの千夜千冊をスタートした時の一回の原稿の量に比べて、最近のものはうんと分量が多くなっている。そうねぇ、自然と長くなっていくんだよなぁ、と何だか共感してしまうのだが、いかんいかん。

デルという会社のすごみはなかなか伝わらない

さて本題に戻る。この二つの記事をせっせと読んだ感想として今感じるのは、長い文章でいくら言葉を尽くしても、デルという会社の凄みというのはなかなか伝わらないものだなぁ、ということである。

「It's this combination -- reaching for the heights of perfection while burrowing down into every last data point -- that no rival has been able to imitate. "It's like watching Michael Jordan stuff the basketball," says Merrill Lynch & Co. technology strategist Steven Milunovich. "I see it. I understand it. But I can't do it."」

細部のデータ一つ一つを掘り起こして目を行き届かせつつ、完璧の極みに到達すること、この組み合わせをライバルは真似できないのだ(というような意味だと思う)。「マイケル・ジョーダンがバスケットボールをしているのを見ているようだ。見て、理解できる。でもできない」とは著名なアナリストの言葉だそうである。

そして、デルが徹底的にOperational Excellencyを追求する具体例がたくさん載っている。

「When success is achieved, it's greeted with five seconds of praise followed by five hours of postmortem on what could have been done better.」

何かに成功したら、称賛するのは5秒。そしてそのあとに、どうしたらもっとよくできたかについて5時間の事後検討をする。

「Says Michael Dell: "Celebrate for a nanosecond. Then move on."」

「ナノセカンドのお祝いがすんだら、どんどん前へ進め」とは、マイケル・デルの言葉。

「After the outfit opened its first Asian factory, in Malaysia, the CEO sent the manager heading the job one of his old running shoes to congratulate him. The message: This is only the first step in a marathon.」

マレーシア工場がオープンしたとき、デルは、工場の責任者に、お祝いとして古いランニング・シューズを送ったらしい。メッセージは「これがマラソンの始まりだ」。

「Just as crucial is Michael Dell's belief that once a problem is uncovered, it should be dealt with quickly and directly, without excuses.」

問題がいったん発露したら、速くダイレクトに対処する。言い訳はなし。

「Dell believes every product should be profitable from Day One. To ensure that, he expects his managers to be walking databases, able to cough up information on everything from top-line growth to the average number of times a part has to be replaced in the first 30 days after a computer is sold.」

すべての製品は一日目から利益を出すべきだとデルは信じているから、責任者は数字をすべて把握しながら働く歩くデータベースであることが期待される。

「"There are some organizations where people think they're a hero if they invent a new thing," says Rollins. "Being a hero at Dell means saving money."」

「何か新しいことを発明すると英雄になるなんて皆が思っている組織もあるらしいが、うちではカネを節約した奴が英雄だ」とはデルの右腕ロリンズの言葉。

「The emphasis is on small surgical strikes on defects and waste, not massive restructurings. Consider a Six Sigma meeting one balmy July afternoon. Rollins listened to John Holland, a technician in Dell's server factory, describe how his team replaced the colored paper it used to print out parts lists with plain white paper, saving $23,000. "Where else do you get a supervisor making $40,000 a year presenting to the president of a $40 billion company?" says Americas Operations Vice-President Dick Hunter, Holland's boss.」

パーツリストを打ち出すための色のついた紙をただの白紙に替えたことで2万3000ドル節約できたなんて話まで、いちいちロリンズが聞いているらしい。

「Everyone is expected to sacrifice their own interests for the good of the business, and no one gets to be a star.」

すべての社員がそれぞれのインタレストを犠牲にして、ビジネスにとってよいことを追求する。スターなんかいらない。云々かんぬん。

細部だけを見れば、日本企業でも当たり前にやっていることばかりのようにも思えるし、そうでないようにも思えるし。

「楽しい日本企業」との対照性がデルの本質

でもなぁ、いろんなことがうまくいったら、お祝いもしたいじゃないの、ナノセカンドじゃなくて一晩くらいかけて。

褒めてももらいたいじゃないか、工場を開いたら。ランニング・シューズを送られて、これからマラソンを走れと言われるのではなくて。

日本人の僕は自然にそう思ってしまうのだが、そのあたりがデルを考える本質なのかもしれない。

話は少し脱線するが、僕は、山科けいすけ「C級サラリーマン講座」の書評・「日本企業が持つ「C級性」の魔力」を、二年半前に日経ビジネスに書いた。

実はこのデルの長文記事二本を読んで、「C級サラリーマン講座」を懐かしく思い出してしまったのだ。四コマ漫画の作品そのものはアーカイブに転載できず文章のみなので、雰囲気しか伝わらないのが残念であるが、僕の持論である「楽しい日本の会社」論を、その中で書いた。いくつか引用する。

「本書に描かれる「C級」性の大部分は、会社が「仕事をする場」というだけのシンプルな存在ではなく、「生活の場」さらには「楽しい遊び場」としても機能するゆえに生まれている。」

「仕事を通して遊ぶのは本当に楽しい。それも、特に毎日顔を合わせる連中との「疑似家族的小宇宙」で、仕事と遊びが一体となり、しかも仕事がうまくいっている時の至福といったら何物にも代え難い。これが戦後日本のサラリーマン社会だったのだ。」

「日本の一流企業というのは、こうした避け難い「C級」性を内包しつつも、「C級」性からの逃げ場も豊富に用意し、「コミュニティーとしての会社」としての理想を、世界でも類まれなレベルで達成してしまっている存在だ。」

「私はシリコンバレーに住んで、米国のベンチャーをつぶさに見る機会も多いし、米国大企業に勤めていたこともあるが、米国の会社とは「仕事をする場」以上でも以下でもなく、株主志向経営とスピード経営の徹底でますますその傾向が強まっている。効率はいいが、とても寂しい。仕事以外のイベントなども形ばかりに用意されるが、組織自身を「疑似家族的小宇宙」に見立てて「仕事と遊びを常時一体化して生きる」という「日本の会社の楽しさ」を一度でも経験したことのある者からすれば、物足りないこと甚だしい。しかし一方で、日本の会社は、この楽しさを維持するためにあまりにも大きな代償を払っているのだろう。」

デルという会社は、こうした「楽しい日本の会社」にアンチテーゼを突きつける存在なのだというのが、僕の今のところの感想なのである。むろん半分冗談であるが。

「Since 2000, the company has been adding market share at a faster pace than at any time in its history -- nearly three percentage points in 2002. A renewed effort to control costs sliced overhead expenses to just 9.6% of revenue in the most recent quarter and boosted productivity to nearly $1 million in revenue per employee. That's three times the revenue per employee at IBM and almost twice Hewlett-Packard Co.'s rate.」

「So he and Rollins have sketched out an ambitious financial target: $60 billion in revenues by 2006. That's twice what the company did in 2001 and enough to put it in league with the largest, most powerful companies in the world. Getting there will require the same kind of success that the company achieved in PCs -- but in altogether new markets. Already, Michael Dell is moving the company into printers, networking, handheld computers, and tech services. His latest foray: Dell is entering the cutthroat $95 billion consumer-electronics market with a portable digital-music player, an online music store, and a flat-panel television set slated to go on sale Oct. 28.」

そういうふうにしてデルは、こんな驚異的な数字を出し、さらに売上高を$60Bil、つまり6-7兆円にまで数年で伸ばそうと躍起になっているのである。

そしてビジネスウィークの記事の最後。

「But there are some striking similarities between Dell and another giant retailer: Wal-Mart.」

デルはウォルマートにそっくりだとのこと。そういえば、ウォルマートの特集記事が、最近日経ビジネスに載っていたな。全幹部が集まる年二回の会議は、夏は暑くて暑くて大変なテキサスで行い、冬は寒くて寒くて大変などこかでやるのだとか。理由は、ただただホテル代が安いから、である。楽しくないよなぁ。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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