お使いのブラウザは最新版ではありません。最新のブラウザでご覧ください。

CNET Japan ブログ

GoogleがIPOを考える本当の理由

2003/11/05 10:05
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
ブログ管理

最近のエントリー

さて、今日も引き続き、Google のIPOについて。Google 来春IPOという話は、10月24日のFinancial Times(英)が書いた記事が発端になり、それからいろいろなメディアで取り上げられた。報道は各メディアが反射的に取り上げた第一波と、一応少しは取材と分析をして書かれた第二波に分類できる。前者については、ワシントンポストの「Banking on Google」で概観することができる。このワシントンポストのFilterというコーナーは、その日その日の注目すべきテクノロジー・ニュースを、他のメディアの報道にリンクを張りながら解説するスタイルになっている。

第一波の報道のエッセンスは、

(1) Googleが2004年3月までにIPOしそうだ。その準備に入った模様。

(2) IPO方式としてOpenIPOという新しい方法を使うかもしれない。

(3) 公開時の時価総額は、$15-25Bilになるのではないか。

(4) Googleの今年の売り上げが$800milくらいで、$100-200milくらいの利益が出るらしい。

という、実はすべて「しそうだ」「かもしれない」「らしい」ばかりの報道だった。でもFinancial Timesという老舗メディアが取り上げたので一気に話題になった。CNET Japanの「米グーグル、2004年3月にもIPOか?--英FTが報道」もあわせてご参照。

そして先週後半の第二波報道を眺めてみることにしよう。1つはニューヨークタイムズの「Microsoft and Google: Partners or Rivals?」。

2つ目は、サンノゼ・マーキュリーの「Friendster spurns Google」。

3つ目は、エコノミスト(英)の「How good is Google?」。

4つ目は、ビジネスウィークの「What's Google Really Worth?」である。

ニューヨークタイムズは、

「Microsoft - desperate to capture a slice of the popular and ad-generating search business - approached Google within the last two months to discuss options, including the possibility of a takeover.」

マイクロソフトが、買収も含みとして持ちつつ、Googleにアプローチしたというもの。Googleとマイクロソフトの幹部が様々な含みを持ってミーティングするのは当たり前のことで、買収云々の信憑性は高くないと思う。Googleがこんな段階でマイクロソフトに買収されるなんてことは、シリコンバレーの皮膚感覚ではあり得ないことである。この記事については、川崎裕一YUBLOG「MicrosoftとGoogleはライバル?」の解説をお読みください。

Friendsterの買収に失敗したGoogle

さて、2つ目の「Friendster spurns Google」は、GoogleがFriendsterを$30milで買収しようとして断られたという話。Friendsterとは「the hot Sunnyvale online dating site that lets users meet and date friends of their friends.」である。GoogleがFriendsterを買おうとしているという噂はずいぶん前からシリコンバレーで流れていた。そのあたりの話は、渡辺千賀BLOG「On Off and Beyond」が1カ月前の「Google・Friendster・星新一の世界」で書いている。

「Friendsterのポイントは、自分のプロファイルが知り合いの知り合いだけに公開されるところ。Match.comのように不特定多数と出会うのではなく、「友達の友達(のそのまた友達)」だけの閉じたネットワーク。」

「友達の友達、ということであれば、少なくとも最低限のチェックが済んでいるということも大きい。Match.comで知り合った人とデートしたら、変な人で怖かった経験がある、というシングルの友達は結構いる。」

Googleは、こんな領域にまで触手を伸ばしているのである。そして、1カ月前時点では、

「Googleは今年になってBloggerサイトをやっているPyraを買収、さらに昨日9月30日には、6月にStanfordからスピンアウトしたばかりのKaltixを買収。どちらも恐らく数億円(もしかしたらそれ以下)のミニミニディール。Friendsterもエンジェルから100万ドル集めただけで無料サービス中だから、かなり小ぶり。しかもどれも数名のチームの会社なので、買収先のチームを社内に統合するのも楽。(実際、新入社員を採用するのとそれほど大きく違わないはず)中々お買い物上手だ。」

とあるが、GoogleはFriendsterを$30mil出しても買えなかったのである。そのオファーを断ったFriendsterは、

「But the offer was less than the $53 million valuation that Benchmark and Kleiner were willing to set on Friendster during the latest investment round.

Industry insiders say Friendster's valuation is unusually high for a company that has been up and running for less than a year. But investors clearly think the company, with 1.5 million registered users, has great potential. Just two months ago, Friendster was valued at $12.5 million.」

たった2カ月前の$12.5milから$53milに企業価値をアップさせて資金調達。こうなってくると、シリコンバレーは、俄然、元気が出てくる。だから皆、GoogleのEXITを、今か今かと心待ちにしてきたのである。

ネットスケープを連想させるGoogleのIPO

さて、3つ目のエコノミスト(英)の「How good is Google?」は、

「Google's board (which includes two of Silicon Valley's best-known venture capitalists, John Doerr of Kleiner Perkins Caufield & Byers and Michael Moritz of Sequoia Capital) has been deliberating how to translate that power into money. They appear to have decided to bring Google to the stockmarket next spring. Bankers have been overheard estimating Google's value at $15 billion or more. That could make Google Silicon Valley's first hot IPO since the dotcom bust, and perhaps its biggest ever.」

Googleのボードがとうとうパワーをカネに変えることに決めたのだと書く。史上最大のIPOになるかもしれないと。この記事についても、渡辺千賀BLOG「On Off and Beyond」に解説がある。

「Microsoftが血の匂いをかぎつけた、ということで、MSはサメか・・・。ちなみに、MicrosoftはNetscapeを叩き潰すときに、ブラウザーのバージョンアップをやたらに頻繁にした。競合製品がバージョンアップをすると、自分たちもバージョンアップをしなければ、とあせってしまう。で、Netscapeは浮き足立ってしまった。」

「Microsoft側は、この「頻繁なバージョンアップで敵を狙い撃ちすること」を「hamster」という隠語で呼んでいたそうだ、というのは一時MSの子会社にいた人の話。ハムスターは、よく丸い滑車の中をくるくる回っているが、やたらあくせく速く動くだけでどこへも行けない。そういう状態に敵を陥れよう、という陰謀。競合がのさばってくると「Let's hamster them」とかいって、バシバシとバージョンアップをする戦術に出るということ。」

Googleとマイクロソフトの今を描いて面白い。詳しくは、エコノミストの原文をご参照ください。

そして4つ目のビジネスウィークの「What's Google Really Worth?」は、

「Some on the Street say the search engine's IPO might fetch $25 billion. Use a different yardstick, and that sum seems way too high」

$25bilなんて高すぎるぞ、GoogleをeBayやAmazonのようなコマース企業と比べるのはおかしくて、Overtureとこそ比べるべきだ、というやや凡庸だが真っ当な議論を展開している。

記事の最後で、

「It hasn't yet made financial disclosures to the Securities & Exchange Commission, a mandatory step before going public.」

とあるように、Googleはまだ事業の詳細数字をSECにディスクローズしていないから、それが出た時点で改めて、Googleの企業価値はどのあたりが適正かの議論が再燃すると思われる。

IPOを考えるには理想的なタイミング

さて、半年前の本欄「GoogleがIPOしない本当の理由」で、GoogleのIPOについて論点を次のように整理した。

(1) IPOできるに足る実績を挙げているか。

(2) 株式市場がどうか。IPOするに足るだけの株式市場に戻ってきているか。

(3) IPO本来の目的は資金調達。Googleは今、資金調達をする必要があるのか。特に、競争者と比較して十分な将来への投資ができるだけの資金があるか。

(4) IPO後に時価総額が下がり買収されてしまうリスクはどうか。

半年前と比べて、Googleへの注目はぐんと上がった。それはもちろん、可能性だけでなく、事業の実績が本当に凄いということが明らかになってきたからだ。つまり(1)は半年前からYesだったが今は絶対にYes。そして(2)も、株式市場が戻ってきたし、特にネット株が高騰している今がチャンスという感じになってきたのでYes。(3)については、Googleへの注目が上がると共に、列強のGoogleへの競合意識が半年前に比べて格段に上がってしまった。昨日の本欄では、時価総額の大きさで、企業の成長段階を、A、B、C、Dに分類し、GoogleはC段階(Yahoo, Amazon, eBayクラス)で公開しようとするから、あと目指すはD段階(マイクロソフト、インテル段階)しかないのだ、という話をした。そこを目指すためには、これから列強たちとなりふり構わぬ戦いを続けなければならず、それには軍資金がいる。だから(3)についてもYesになってきた。そして、IPO後に本当にこれだけの時価総額になるとすれば、そうそう簡単には買収されない、というわけで(4)のリスクもクリアー。さらに加えて、もう少しIPOを待てばもっと高額でのIPOができるかと言えば、それもちょっと難しいという判断があったのだと思う。理想的なタイミングとして、考え抜いた挙げ句に、来春IPOという構想が実現に向けて動き出したのである。

さて最後に、皮肉な口調のエコノミスト誌を引用して終わることにしよう。Googleを取り巻く状況には、これからも目が離せない。

「Now that the worst of the dotcom hangover is clearing, they wonder, will Google become one of the few valuable internet survivors, joining Amazon and above all eBay? Or will it simply be the next overhyped share sale to make its founders rich only to wither away miserably, either for lack of a sustainably profitable business model, or, like Netscape, because it finds itself in the path of that mighty wrecker, Microsoft?」

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
運営事務局に問題を報告

最新ブログエントリー

個人情報保護方針
利用規約
訂正
広告について
運営会社