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GoogleのIPOは一般投資家にとって、うまみがあるか?

2003/11/04 10:05
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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さて今日は、来春と噂されるGoogleのIPOについて考えよう。これから半年くらいの間に、戦争やテロや天変地異などで、株式市場や米国経済がガタッと崩れるようなことがない限り、Googleが早晩IPOすることは、ほぼ間違いないと言っていいだろう。

このGoogleのIPOをどう考えるかについては、先週、それぞれの新聞や雑誌が独自の取材でそれぞれに解説記事を書いているので、追ってご紹介するが、Google・IPO問題の本質は、ネットバブル崩壊にまでさかのぼって考えることが重要である。本欄でGoogleのIPOについて詳述したのは、約半年前の4月11日。この連載をスタートしてすぐのことであった。この「GoogleがIPOしない本当の理由」を書いたのは、創業者Sergey Brinの「しばらくはIPOしない」発言の意味について解説するためであった。

そこから、もう少し時間をさかのぼりたい。

バブル崩壊で事情が変わったベンチャーの株式公開

2001年4月23日、もう2年半前のことだが、僕がはじめてGoogleについて書いた「グーグルはいつEXITできるのか」([BizTech eBusiness]に寄稿)という文章に戻って、Google・IPO問題の本質を考えたい。2001年4月といえば、ネットバブル崩壊して間もないときで、僕も少し弱っていた。だからこそ、この文章は、こんな書き出しで始まっている。

「米グーグルほどの会社がもしEXIT(株式を公開または自社売却すること)できないようだと、シリコンバレーやネット産業のこれからは信じられないほど厳しい。そう強く思う。その意味で、グーグルがこれからどうなるのかを見つめることの重要性は、どれだけ強調しても、し過ぎることはないだろう。」

シリコンバレーの最近の状況はどうですか、とよく顧客の日本企業の方に聞かれるが、2001年4月当時のバブル崩壊後の暗澹たる気分、それからほどなくして起きた9月11日の同時多発テロの衝撃、そして戦争へとひた走っていった2001年から2002年にかけての米国の「先が全く見えない不安な状況」に比べると、シリコンバレーは完全回復したとまでは言えないものの、その復活ぶりは、隔日の感がある。Googleはその復活の象徴なのであるが、単純に喜んでばかりというわけにもいかぬ難しい問題をはらんでいる。

この2001年4月に書いた「グーグルはいつEXITできるのか」のエッセンスを引用しておこう。

「一言で言えば、グーグルというのは、インターネットの世界で最も本質的な技術の一つである「検索エンジン」という領域で、世界一の技術を持つベンチャー企業である。既にこの領域では「ワン・アンド・オンリー」への道をひた走り、その地歩を固めつつある。」

「簡単に総括すれば、技術(領域の意味と秀逸さ)、人材、経営者、投資家、事業開発の進展度合いから考えて、グーグルという会社は、バブル崩壊前ならばもうとっくに株式公開(IPO)できて、株価が高騰していただろうということだ。」

「今シリコンバレーは、バブル崩壊の反省から、「未公開段階できちんと利益の見込める会社にしてからでないと公開できない」という新しいルールで動いている。」

「またこれだけ賭け金が上がってくる(投資総額が大きくなる)と、中途半端なEXITでは、関係者は誰も満足しないだろうから、大型IPOか巨額買収を目指して大きな勝負を続けていくに違いない。果たしてグーグルはいつEXITできるだろう。その答えが見える頃に、ネットバブル崩壊の意味が、より明瞭になってくることと考えられる。」

ポイントは、僕がこの文章を書いた2年半前から現在までの間に、バブルの反省ゆえに作られた「未公開段階できちんと利益の見込める会社にしてからでないと公開できない」という新しいルールが適用されたシリコンバレーで、実際に何が起きていたのかにある。

結論から言えば、ほとんどの凡庸なベンチャー(と言っては失礼だが、Googleとの比較ではどんなベンチャーも凡庸に見える)の場合、焦ってIPOせず、未公開段階で長い時間を過ごすという新しいルールは、結果としてよかった。

公開後すぐにダメになるような会社は、もうあらかた整理されつつあるので(もちろんまだ残っているのもあるけれど)、そんな会社のIPOで、一般投資家がひどい目にあうということは避けられた。きちんと時間をかけていい会社になる基盤をじっくり作ることができた「サバイバルしたベンチャー群」が売上高数十億円規模に成長し、そこここでいい仕上がり具合になってきている。創業まもない段階で利益を重視するあまりに成長できず縮小均衡に陥って苦しんでいるベンチャーも多いが、それはそれで仕方ないことであろう。

未公開のまま怪物になってしまったGoogle

しかし皆がこんなふうにバブル崩壊後の調整期間をごく普通に過ごしている中で、Googleだけが、さらなる資金調達もすることなく(つまり事業で売り上げを立ててきちんと会社をまわしながら)、ひとり未公開のまま、「怪物」へと成長していってしまったのである。

Googleの公開時の時価総額がどのくらいになるかというのが話題になっているが、今は桁の問題だけを議論すればいいと思う。

わかりやすいように日本円換算のざっくりとした数字を使ってお話しすることにするが、Googleの場合、公開時の時価総額として、1兆円から2兆円という数字が、いま一人歩きしている。公開時に1兆円とか2兆円というのは尋常な数字ではない。しかもGoogleの場合、非公開段階での資金調達すら早い段階でストップして、ひたすら自力で「怪物」へと育っていったから、Google関係者だけに莫大な富がもたらされるだろう。まぁそのことはいい。

公開時に1兆円とか2兆円とかいう数字になることの真の問題は、公開したあと、Googleの株には本当にさらに上がっていく余地があるのか、つまりGoogle株を買う一般投資家にとって、お楽しみは本当に残っているのか、ということだ。

この兆円単位の数字というのは、Googleが、ネット企業の雄であるeBayやAmazonやYahooに近い価値をもう既に持っているはずだということが一つの論拠になっている。eBayやAmazonやYahooの時価総額が2兆円から4兆円の間くらい。この数字が既にバブルだという議論もあるが、そのことはちょっと置いておく。

Googleはインテル、マイクロソフト・クラスの超怪物になれるか

1兆円か2兆円で公開してから、さらに10倍以上の時価総額に成長していく可能性はあるのだろうかと考えれば、今度は、次の高峰として、インテル、マイクロソフト・クラスの「超怪物」(時価総額が20兆円から30兆円)になる以外に道はないのである。そして、仮にそうなっていくとしても、途方もない時間がかかるだろうということを忘れてはいけない。

通常のIPOというのは、IPO直後の時価総額が数百億円というところである(これをAとしよう)。ここから10倍に成長して数千億円規模(これをBとしよう)。さらに10倍に成長していまのeBayやAmazonやYahooくらい(これをCとしよう)。さらに10倍でインテル、マイクロソフト・クラスである(これをDとしよう)。Googleは、AとBを未公開段階ですっ飛ばして、Cというかなり上の段階からIPOしようという話なのである。

いまのシリコンバレーは、「未公開段階できちんと利益の見込める会社にしてからでないと公開できない」という新しいルールが適用されて、普通のベンチャー群から、Aになれそうなのがそろそろ列をなしてきた感じがあるのだが、Googleはこの新しいルールが生んだ鬼っ子として、Cまで一気に行ってしまおうとしている。ここに問題の本質がある。

2001年4月の「グーグルはいつEXITできるのか」で、「バブル崩壊前ならばもうとっくに株式公開(IPO)できて、株価が高騰していただろう」と書いたわけだが、ときがバブルともバブル崩壊とも無縁の状況であれば、Googleは、AとBの間くらいでIPOして、公開企業としてCへと成長していくというようなシナリオ(一般投資家にも楽しみがある枠組み)が描けただろうと思う。

GoogleのIPOがOpenIPOになるかどうかはまだわからないが(OpenIPOについては、先週の本欄「グーグル開発チームの渾然一体としたパワー」の中で軽く説明した)、OpenIPOのベースとなるダッチ・オークションという方式については、このサイトの説明がわかりやすいので、どうぞご参照を。GoogleがIPOするなら株を買いたいなという人は、以上の解説をよく理解した上で、自己責任でGoogle株を買ってください。

簡単に書こうと思ったが、まだ言いたいことの半分もいかないうちに、けっこう長くなってしまった。GoogleのIPOをめぐる英文記事や解説をご紹介しつつのさらなる議論は、明日、また続きを。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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