昨日に引き続きアマゾンの新サービス「Search Inside the Book」について。
レッシグ教授もそのBlogで、
「Check out this story published online at Wired before in print about Amazon’s amazing new searchable book archive. Amazingly cool.」
「Amazingly Cool」と表現し、昨日ご紹介したWired誌の「The Great Library of Amazonia」をチェックせよと薦めている。このレッシグ教授の書き込みに対するコメントの中には、「Amazingly Cool」なんて言葉じゃまだ足りないぞ、この素晴らしさを表現する言葉がない
「To call this “amazingly cool” is an understatement. I lack the words to adequately describe it.」
なんてのまである。
多くのネットユーザーのハートをつかんだアマゾン
僕もその一人であるが、いろいろな人のBlogを読んでいると、アマゾンのこの新サービスに心躍らせて、何かをしゃべりたくなっている人がたくさん居るのがよく見て取れる。まぁこれが、Bloggerたちの嗜好に合致したサービスであることを割り引いても、久々に登場したインパクトの大きな新サービスと言えると思う。
Steven Johnsonは、Slate誌に「The Best Search Idea Since Google」で、
「Amazon.com's announcement this week of its new "search inside" feature—allowing full-text searches of over 120,000 books in its new digital archive—will probably turn out to be one of those transformative Web moments when a tool suddenly appears and six months later you can't imagine life without it.」
あるツールが突如現れて6ヵ月後にはもう人々はそれ無しでは暮らせなくなるという「ウェブが社会を変化させた瞬間」の一つだ、と書く。そして、
「For logical reasons, Amazon seems to have designed "search inside" to help readers find text in books that they haven't bought yet. But there's just as much opportunity to apply "search inside" to books you already own.」
この新サービスは、論理的には、まだ買っていない本をこれから探すためにデザインされたサービスだが、もう既に持っている本の中身をサーチするのにも使えるぞと提案する。
「We tend to think of search requests as generally taking the form of "find me something I've never seen before." But real-life search is often different: You're looking for something you have seen before, but you've somehow mislaid or only half-remembered. You search for your glasses or your car keys. Or, in the case of books, you search for that paragraph about the Russian revolution's impact on literacy rates that you read somewhere a few years ago. You know it's in a book somewhere on your shelf, you just can't remember which one.
"Search inside" could be the perfect solution to this common problem.」
サーチというのは、「全く見たこともないものを探す」のではなく、「過去に見たことがあるがどこに書かれていたか忘れてしまったものを探す」という局面が実際には多く、そういう課題への完璧な解決策だという。これは僕も全く同感である。アマゾンにとってのメリットは、
「Knowing something about my existing library gives Amazon even more information about my tastes for its recommendation engine.」
「A promising corollary effect of a "search inside your library" tool would be the creation of a new kind of personalized filter, this time run through other people's book collections.」
さらなる個人情報充実ゆえの質の高い推薦機能である。ひいては顧客のアマゾン依存度を高める効果になるとSteven Johnsonは言う。
元アマゾンのGlenn Fleishmanは、そのBlogの中で、
「Amazon launched its book-searching feature today; we were talking about this idea all the way back in late 1996 when I worked there as catalog manager. It's so cool to see it come to fruition. It took a long time for rights, technology, and integration to make it happen.」
アイデア自身は96年頃からあったが、長い時間をかけて、ついに現実のものとなったかと感慨深げである。
「All of this is to the good for authors: it allows our work to be seen as useful in context, and to increase sales based on utility.」
そして、サービス構想者側の立場からなので当然だが、この新サービスは、本の著者にとっても良いことだと無邪気に断定している。
作家団体からは「本が売れなくなる」という懸念も
しかし、ニューヨークタイムズは10月27日、「Amazon Offer Worries Authors」の中で、Authors Guildの反対意見をこう紹介している。
「Paul Aiken, executive director of the Authors Guild, a writers' trade group, regarded the practice as dubious. He said that publishers did not have the right to make the contents of books available without the authors' permission. "We find it a matter of serious concern," Mr. Aiken said.」
アマゾンは出版社との間で話を詰めてこの新サービスをスタートしたわけだが、著者の許可なく本の中身を見せる権利など出版社にはない、という論理である。CNET Japan「「本が売れなくなる」:米アマゾンの全頁検索に米作家団体が反発」も同じAuthors Guildについての記事である。
さて、出版社の中で最も進歩的で、新しい価値観で新しいビジネスをと考えていろいろとやってきたオライリーが最も複雑な立場に立っているのが皮肉といえば皮肉である。TechDirtは、さすがにセンスよく、Tim O'Reillyが「アマゾンの新サービスに圧倒された」と言いつつも、出版社としてはこの新サービスへの参加を見送ったことをいち早くBlogで取り上げた。元ネタはWall Street Journalの報道である。
「Tim O'Reilly has decided not to participate in the program for now. 'If they end up being a Google for published content...we need to think better about what publishers get out of it,' he said." The link is for the WSJ, so you have to pay to read the story. Anyway, this is a bit surprising since (a) O'Reilly is usually really open about stuff and (b) Bezos and O'Reilly are pretty close. As for O'Reilly's question, isn't "what publishers get out it" a lot more attention and potential sales? Already the Amazon search feature has made me add a few books to my wishlist.」
Glenn Fleishmanも前掲Blogの中でこんなふうに触れているように、
「I've been using O'Reilly's Safari Bookshelf for a few months, and it's a similar idea taken a step further. For a fee per month, you're licensing the rights to search and read any page in a book on their site up to a certain number of books at one time.」
オライリーがスタートしたSafari Bookshelfというサービスは、月極め定額料金を支払えば、オライリーの著作物すべてを自由にサーチできてどこでも読めるというものである。
オライリーのような本は検索できない方が良い
「Unfair Use? Amazon's Free Book Giveaway」というBrian DearのBlogは、アマゾンの新サービスは素晴らしすぎ、凄すぎるので、問題が大きくなりすぎて、結局は長続きしないのではないか、という意見を書いた。
これに対しては、Tim O'Reilly自身がコメントを書き込んでいるので、ちょっと驚いた。画面の下のほうまでスクロールしていくとTim O'Reillyの真摯なコメントが読める。バランスの取れたいい意見と思った。彼は、アマゾンの新サービスは、本屋での立ち読みに限りなく近いので、大半の本にとっては「良いこと」つまり「売れる機会」が増えるのではないかと書いた後、
「Where I do think there is a potential problem is that certain types of books are used for occasional reference, and for those types of book, the ability to search and look up specific types of information without buying the book can be useful in and of itself. As a result, I think you'll see far fewer reference publishers participating at this stage. After all, we know that online access to our material is valuable enough that people will pay for it.」
ときどき参照すればいいタイプの本の場合に潜在的な問題があると指摘している。
そう明示的には書かれていないが、だからオライリーはこのサービスに参加せず、有料のSafariサービスを継続する決心をしたというわけなのだろう。そしてこう続ける。
「Right now, I think it's important to wait and see how this pans out. It's a great innovation if it works out. I'd hate to see it get caught in the kind of overhyped copyright backlash that we've seen around online music.」
今は、この新サービスの展開をじっくりと観察することが重要、もしうまく進めば素晴らしいイノベーションなのだから、音楽の世界で起こったような過剰なコピーライト問題へと発展しないでほしいと、Tim O'Reillyは希望するのである。
昨日の最後で引用したMITのHenry JenkinsがそのBlogで、こう書くように、
「Of course, the intellectual property issues here boggle the mind. We can expect some interesting dramas to play out in the coming months.」
しばらくは、このアマゾンの新サービスについてのIP関係での議論が活発化するものと思われる。
僕個人としても、これからしばらく、何かを検索したいときは、アマゾンのこの新サービスも試してみようと決め、Amazon.comをお気に入りのいい場所に移し、あれこれと実験を続けることにした。
それでたまたまGoogleのPagerank周辺のことを調べる必要があって、「Pagerank Algorithm」をキーワードにこの新サービスを試してみた。そうしたら、「Mining the Web: Analysis of Hypertext and Semi Structured Data」という最新の教科書が出ていることを初めて知った。
アマゾンのこの新サービスを使ったら、必要な箇所は全部読めて、いま僕が必要なことについては全部わかった。ダウンロードはできないけれど、また同じようにして検索すればその部分が読めるというのは、その本を所有しているのに限りなく近い気分だ。この本は54.95ドルと高いが、新しくていい教科書だろうこということはよくわかった。でも僕はまだこの本を買っていない。いやたぶん買わないだろう。でも人から尋ねられれば、この本のことを紹介するだろう。それで誰かがこの本のことを知り、実際に何冊か売れるのかもしれない。いやこの本を知った誰かも、それでも僕のように検索だけで済ませるかもしれない。いやいや、難しい問題である。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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有償コンテンツは売れるか、売れるビジネスモデルを作れるか、が以前梅田コラムでもテーマになりましたね。
本は、読まないと買うかどうかの決定がしづらい、読んでしまうと、もう読んだんだから、買う必要がない。
この辺が、音楽コンテンツと違うところ。音楽は聴いて、欲しい=所有したい、と思うと買う。
その意味で、全文検索がどの程度の見せ方になるか、逆にどういう仕掛けにしたとき、売れるビジネスモデルになるか、それがポイントでしょう。
私は、むしろ販促につながるのではないか、と思います。
ただ、それにつけても、日本が知的生産性でいよいよ立ち遅れるなあ、という感慨の方が深いです。
アルファベット26文字はスキャンとOCRでほとんど、テキスト化できます。
欧米はDTPでほとんどの本が制作されているので、スキャンしなくとも、PDFからのテキスト抽出や全文検索が、いとも簡単に行えます。
一方日本。DTPもまだまだ。
コストはスキャニングすると、100円/ページが最低でもかかります。数式やアルファベット交じりだと更にコストは上がります。
のどのところまできちんと取ろうとすると、一冊破棄してページ毎、一枚の紙に戻す必要があり、これも
コスト。
全文検索日本版はなかなかお目にかかれそうもありません。