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日本とあまりにも違う家電に対する米国の認識

2003/10/14 10:05
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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Benchmark Capitalのウィリアム・ガーレイの「Above the crowd」の最新コラムが発表された。「Beware the Digital Hand」である。正直にいうと、これを本欄で取り上げようかどうか、かなり迷った。ガーレイはこのコラムで、コンシューマーエレクトロニクス産業がいかにこれから大変になっていくか(恩恵を受けるのは消費者ばかりなり)ということを、デジタルハンド(アダム・スミスのインビジブルハンドとの対比で)なる大仰な言葉を使って語るのであるが、その結論部分

「As we look towards the future of the consumer electronics industry, the digital hand will ensure two realties. First, consumers will be blown away by the incredible products they are able to buy at shockingly low prices. Second, companies will be blown away by how incredibly hard they have to work in a shockingly competitive industry.」

を読んでも、何をいまさら、という感が否めない。ネット時代の到来による産業構造変化・社会構造変化の本質に「消費者天国・供給者地獄」という性格が根強く存在するということは、もう誰もが気づいていることだからだ。

品質よりも値段を重視するアメリカ人

それでもなお、このコラムをご紹介しようと思った理由は、アメリカという国やアメリカ人とコンシューマーエレクトロニクスの関係が、日本におけるそれと比べてどれほど違うかという点が、まぁ少しは参考になるかな、と思ったからである。

アメリカ人には日本人ほどに、コンシューマーエレクトロニクスへの思い入れはない。ある程度の機能がついていて安ければ何でもいいと大半のアメリカ人は思っている、ということが、このガーレイのコラムから浮き彫りになってくる。特に「安ければいい」というアメリカ人の感覚というのは、なかなか日本に住んでいては実感できない感覚の一つかもしれない。

たとえば、ガーレイは、コンシューマーエレクトロニクス製品の付加価値が半導体に集中してくる話をしたあとで、こう書く。

「The first is that semi-conductors are increasingly incorporating the majority of the features and functionalities by which any manufacturer would differentiate their product. If you want to become a consumer electronics manufacturer, simply call LSI, Zoran, ESS, and more recently MediaTek, and they will immediately deliver the goods you need. Don’t know how to integrate chips? No problem, a reference design is on its way. Be it DVD’s, HDTVs, or digital cameras, the barriers to entry for hardware providers are quickly approaching zero.」

コンシューマーエレクトロニクス・メーカーになりたければ、半導体会社からチップを買ってきてインテグレートするだけでいい。DVDだろうがHDTVだろうがデジタルカメラであろうが、ハードウェア・プロバイダになるための参入障壁は限りなくゼロに近づいている。何をバカな、と思う日本の読者の皆さんも多いことだろう。

ただ、最近話題になっているデルの家電参入の背景には、アメリカ人にとって、家電というのは、そんな程度のものでよいのだ、という見切りがあるということは理解しておいたほうがいい。

「半導体が同じなら性能も同じ」

そして、ガーレイは、中国からの輸入で事業展開するApex Digitalについて、こんなふうに書く。

「Even more serious for the consumer electronics industry than pressure from PC makers is that from Chinese importers such as Apex Digital. Wal-Mart currently advertises an APEX DVD Player for $43.86. It plays DVDs, CDs, and MP3’s. It can decode Dolby Digital and Dolby DTS, and supports S-Video output. This product works and it works well. So do all price-leading products that APEX sells. After all, they use the same semiconductors as all the other manufacturers. And, at forty-three bucks, consumers will start to view these devices as disposable, a nice trade off for the obsolescence that is an inherent part of any digitized industry. Remarkably, APEX has quietly leapt to the top of the US DVD market.」

ウォルマートがAPEX DVDプレイヤーを43ドルちょっとで売り出した話をしている。半導体が同じなのだから性能も同じ。安いApexは素晴らしい。そういう感覚である。

「With product differentiation on the wane, distribution will play a greater role. Gateway has already leveraged its direct model with early success. This could bode resultantly well for Dell. Furthermore, do not be surprised if retailers like Wal-Mart and Best Buy create in-store brands similar to what Wal-Mart already does in every other line it sells. Best Buy is already doing this in PCs, and it should be even easier in electronics due to lower support costs.」

そして製品の差別化が衰微していくのであれば、ディストリビューションが勝負。デルも出てきたし、ウォルマートやベストバイのような巨大小売業者も独自ブランド展開してくるだろう(PCよりもサポートコストが小さいんだからやらないわけがない)。つまりは、

「Never forget that the undisputed leader of the PC industry has a supply chain and distribution advantage, not a technological one.」

PC産業においても技術を持つ企業が負けてサプライチェーンとディストリビューションの勝負になってデルが勝ったことを忘れるなという、このコラムの最後の最後の文章に結びつくわけだ。

内需が強い産業が海外でも成功する

ところで、「内需が良い」ということは、「XXX発世界へ」(XXXはアメリカとか日本とか国や地域の名前が入る)というグローバル展開ができる必要条件である(十分条件ではないが)。

ビジネスソフトの世界におけるアメリカの「内需は良い」。まだ海のものとも山のものともわからないソフトにきちんとカネを払って企業が導入する度合いは、アメリカは世界中のどこよりも良かった。だからビジネスソフトはアメリカで市場創造し、「アメリカ発世界へ」とグローバル展開できた。

でもここで垣間見てきたように、コンシューマーエレクトロニクスの世界におけるアメリカの「内需は良くない」。最終需要者のこだわりや期待があんまりないところでは、何でもいいから安いものを持ってくる人が勝ちやすく、製品・技術のイノベーションによる市場創造ができにくい。その点、「日本の内需」のほうが圧倒的にいいから、日本で市場創造して「日本発世界へ」という大きなチャンスがある。これが日本の論理である。

コモディティでは生産プロセスの方が重要という理屈

ただ、ガーレイは、もうコンシューマーエレクトロニクス世界も、PC世界と同じように、付加価値は遅かれ早かれ半導体やその他部品の中に埋め込まれ、それはあまねく誰にも同じように供給されるのであるから、「Process excellence」を持つデルのようなアメリカ企業が勝つ、メーカーがパッケージ段階における製品イノベーションで付加価値をつけて勝つ余地はない、と考えている。これがアメリカの論理である。

この論理の違いは、日米の内需の質がおそろしく隔たっていることによって生まれたものである。

産業全体が成熟化する中で、ローエンド・コモディティからどのくらいハイエンドな製品に対してまで米国の論理が波及していくのか、日本の論理が通用する市場はハイエンド・ニッチにしかあり得ないのかそれとももっと大きいのか、真のコンシューマーエレクトロニクス事業とは実は半導体事業やディスプレイのような部品事業のことを言うのではないのか、そんなあたりが今後の論議の焦点になってきているのである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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