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リッチになりたければ本拠地の見直しを

2003/10/07 10:05
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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Forbesというのはカネに関してはとても下世話な雑誌で、「40歳未満で誰がいちばん金持ちか」とか「グローバルにみた場合はどうか」とかそういう特集をいつもやっている。9月17日号は、「The 400」というアメリカの400人の金持ち順位(もちろんゲイツが1位)の特集記事で、雑誌いっぱいを使いきっている。

同誌コラムニストのRich Karlgaardも、その号では、冗談半分という感じで「Where To Get Rich」(どこに行けばリッチになれるか)というコラムを書いている。

「If you agree, then put your chips on cities that: a) attract smart people; and b) are low-cost enough to incubate a business so it won't need much outside capital, which is dilutive to wealth building. In other words, look for cities with these attributes:」

リッチになるための場所の絶対条件として、a)優秀な人間を惹きつける場所、b)ビジネスをインキュベートするのに十分コストが安いこと、の2点を上げている。そしてこの文章では、さらにそれを、8つの属性にブレークダウンしていく。

リッチになるための場所の絶対条件

第1条件は、質の高い大学が存在すること。

「・Universities. Especially those with strong science and engineering departments. Modern innovation springs from a deep understanding of physics, electronics, math, chemistry and biology--not Proust. Business schools and law schools are nice, too, but are of ancillary importance.」

(特にサイエンスとエンジニアリングに強い大学。なぜならば、現代のイノベーションは、物理学、エレクトロニクス、数学、化学、バイオロジーについての深い理解から生まれるもので、プルーストを読むことで生まれるわけではない。ビジネススクールやロースクールもあるに越したことはないが副次的なものだ)

第2条件は、小学校から高校までの教育の質が一流であること。

第3条件は、実験・試行錯誤のためのキャピタルが豊富であること。これは主に、その地域に落ちる研究開発投資のことを言っている。

第4条件は、ビジネス上のリスクを取るためのキャピタル。こちらは起業のためのエンジェル資金やベンチャーキャピタル資金のこと。

第5条件は、税率が低くて、規制が少ないこと。

第6条件は、創造的混沌を愛する土地柄であること。

第7条件は、地域全体を楽観主義が覆っていること。

第8条件は、リスクテーカーへの敬意がある土地柄であること。

この8つの条件を見てわかるように、米国では、リッチになりたいと欲するのであれば、サイエンスやエンジニアリングの知識をもとに、脳みその中から何かを生み出し(無から有を生み出し)、その何かをもとに会社を作って成長させることだ、という暗黙の前提があるのである。その暗黙の前提が、この8つの条件にブレークダウンされているわけである。

余談だが、シリコンバレーという場所は、もともとはこのすべての条件を完璧に満足していた場所だった。しかしいま、1、3、4、6、7、8の6項目は相変わらず素晴らしいが、90年代後半のITバブルの後遺症で、Cost of Living(生きていくうえでのコスト)がおそろしく高くなってしまったのが致命的なマイナスになりつつある。たとえば、Cost of Livingが高くなると、給料があまり高くない学校の先生たちがこの地域で生活できなくなってしまうので、第2条件の小学校から高校までの教育の質を保てなくなる。

リスクテイカーを応援できるか

ところで、第8条件のところの文章が面白い。

「Here's a test. You gather 200 friends and acquaintances in a room--the sort of people who attended your wedding or might attend your funeral--and you clink a glass. The room goes silent. You announce: "I've just quit my job! I'm starting a company!" Watch the immediate reaction. In some communities, people will burst into applause. In others, people will stare at their shoelaces, check their watches and go home. Thriving communities applaud the bold risk-taker」(これは思考実験です。あなたの友人・知人が200人ひとつの部屋に集まったとしましょう。部屋が静かになりました。あなたはこう発表します。「仕事をやめて、会社をはじめることにしました。」その瞬間の部屋全体のリアクションを想像してみよう。あるコミュニティでは、割れんばかりの歓声・称賛の声でいっぱいになる。別のコミュニティでは、皆、下を向いて、時計を見て、家に帰ってしまう。繁栄するコミュニティは勇気あるリスクテーカーに拍手喝さいを送るものなのだ)

拙著「シリコンバレーは私をどう変えたか」の中で詳述したのだが、会社を辞めてシリコンバレーで独立しようとしたときに、シリコンバレー地域全体から受けた支援や励ましの暖かさみたいなものを、僕は一生忘れないだろう。同僚・友人・弁護士などは言うに及ばず、不動産屋のおばさん、家具屋のオヤジ、カーペット屋の兄ちゃん、近所の人にいたるすべての普通の人々が、「That's the way to go」(それが歩むべき道である)と、強い確信を持って、僕を勇気付けてくれた。この第8条件に関する文章は、そういう地域性のことを言っているのである。アメリカの他地域と比べても明らかに質が違うと、シリコンバレー以外で生まれたアメリカ人は皆そう言う。

さて、本連載9月29日「バブルの波に乗るのは悪いことか?」でも、少しおカネの話をしたが、若干舌足らずであったかもしれないと思ったので、少し補足しておきたいと思う。

自分にとって人生で最も重要なことは何か

僕のところに何かの縁で相談に来る若い人に、最近、まずこう質問するようになった。そういう話からしないと、なかなか、お互いにわかりあえないことが多かったという経験からである。

「Money(カネ)とPower(力)とPersonal Satisfaction(個人的な充実)の3要素で、君は何をFirst Priorityに生きていこうとしているの?」

ほとんどの人は、「この3つは絡み合っているから、1つを選ぶのは無理だ」とか「面白い仕事ができればいい」とか、あまり深く考えずにすぐに言うけれど、この3つの中のどれを最重要と思って生きていくのが自分にもっとも合っているかを考えることは、ものすごく大切だと思う。

Money(カネ)とPower(力)とPersonal Satisfaction(個人的な充実)の意味を考え抜いて、自分にとっての優先順位を決める。その決めるプロセスで自分を知るということが、とても重要な第一歩だと思うのだ。

わざとこの3つの要素は極端な表現をしておりPower(力)というのはやや表現が悪いかもしれないが、「人に対して、社会に対して強い影響力を行使したい」という社会性に関わる欲求を含むものと考える。大企業の事業部長になって思い通りの製品を世の中に出すとか、大組織の長になって人を自由に動かすとか、官僚や政治家になって大きな権力を行使したい、というのはわかりやすいPower指向である。ただ、たとえば「地球環境問題や途上国問題に取り組みたい」といった社会的欲求が強い人を例にとって考えてみても、その仕事を成し遂げることにこそ意味があると考える人はPower指向が強く、その仕事に関わっていられれば幸せという人はPersonal Satisfaction(個人的な充実)指向が強いと言える。

最近、森永卓郎氏がしきりに主張する「年収300万円で云々」という議論は、この3つの軸で言えば、Personal Satisfactionを早い段階から重視して生きよ、というメッセージである(と僕は解釈している)。PowerやMoneyに対するPersonal Satisfactionという選択を考える上では、とてもいいリトマス試験紙だ。年収300万円でも充実した人生を送れると、逆にそれだけ「自分の内的世界の充実」に自信を持てるというのはすごいことだ。そういう人は、迷わず、Personal SatisfactionをFirst priorityに生きていけばいいのである。米国のギークたちは、確かに、こういう雰囲気で生きている。

僕の場合、20代後半から30代前半にかけて、こんなことをあれこれ考えて、自分の場合、Money、Personal Satisfaction、Powerの順だなぁと思った。いろいろな意味で自由に一生を生きるには「カネは大事だ」というのが、僕にとっては崩せない最優先事項だったのである。まぁ、言ってみれば凡庸なのだ。ただ、Personal SatisfactionとPowerの間には、嗜好性として大差があったから、Moneyを最優先事項にしつつも、Personal Satisfactionをいつも意識して生きよう、その代わりPowerについてはまったく追い求めないことにと決めた。

もちろん、人は皆それぞれまったく違うバックグラウンドで生きているわけで、陳腐だが「己を知る」というのが大切。そんなふうに自分を見つめたとき、Money(カネ)が自分にとってかなり大事だと思う人は、若いときからもっとMoneyのことをきちんとよく考えたほうがいい、ということを言いたかったのでした。日本では「Moneyが大切」なんて言うのがはばかられる文化がありますので敢えて。

そして、今日、このRich Karlgaardのコラムをご紹介したのは、仮にMoneyを最優先事項としてしばらくの間生きていくと決めると、自分が拠点とすべき場所をどう選ぶか(僕の場合はシリコンバレーに94年に引っ越してきたが、当時、日本はそういう生き方をするのにあまり適した風土とは思えなかった)がとても大切になるという問題を提起したかったからなのである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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