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エンジニアにとってシリコンバレーが天国な理由

2003/10/03 10:05
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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リーナス・トーバルズがNew York Times紙(9月28日)のインタビューでこんなことを言っている。

「Oh, how I hate that question. I've actually found the image of Silicon Valley as a hotbed of money-grubbing tech people to be pretty false, but maybe that's because the people I hang out with are all really engineers. They came here because this is where the action is. You go out for dinner, and all the tables are filled with engineers talking about things that won't be available to ''normal people'' for a few years. If ever.」

リーナスが「その質問は嫌いだ」とまず答えたそのquestionとは、

「Since you moved to Silicon Valley from Finland in 1997, how has the region's aggressive approach to money-making affected you?」(1997年にフィンランドからやってきて、この地域(シリコンバレー)の金儲けに対するアグレッシブなアプローチから、あなたはどんな影響を受けましたか?)

というものだ。

シリコンバレーはアクションが起こる場所

リーナスの答えは、「カネに貪欲な技術者ばかりが集まっている場所というシリコンバレーのイメージは、まったく間違っている。それは僕がいつも本物のエンジニアたちと一緒にいるからかもしれないけれど。彼らは皆、ここがアクションが起こる場所だからこそ、ここにやってきたんだ。ディナーに行けば、すべてのテーブルが、普通の人には何年か先にならないと手に入らない(またはずっと手に入らない)技術について話すエンジニアでいっぱいだ」。

「They came here because this is where the action is.」

という文章が肝心な部分だ。

ところで、「ほぼ日刊イトイ新聞」で、「シリコンの谷は、いま。」という上田ガクさんのシリコンバレーについての連載が少し前から始まっている。紹介文は、

「カレーといえばインド。おしゃれといえば、パリ。というように、コンピューターといえば、シリコンバレーですよね。いつごろからか、それは常識になってしまったようですが。そこでいま何が起こっているのか、どんな場所なのか、知ってるようで知らないと思いませんか。雑誌や本で読むと、なんだか野心的で活気があってものすごい場所のように思えるんだけれど、実際、どうなんでしょうか?けっこう気になるITやら起業やらのメッカのことを、そこに暮して仕事をしている人に聞いてみましょう。2年半前に、本場シリコンバレーで仕事がしたくて、日本から単身乗り込んだ、ソフトウェアエンジニアの上田ガクさん、よろしくお願いします。」

アメリカの中でも特殊なシリコンバレー

連載の第2回で、上田さんはこんなことを書いている。

「僕の同僚、元同僚から適当に選んだ9人と僕の10人を対象に出身地を並べてみると、インド、シカゴ、シカゴ、台湾、香港、象牙海岸(アフリカです!)、ロサンゼルス、地元ベイエリア、そして日本でした。改めて列挙してみて驚くべき事実を発見してしまいました。「地元の人間がほとんどいない」ということです。10人中1人しか地元の人がいません。地元出身でない9人のうち、大学で学ぶために、このシリコンバレーにやってきた人は2人、僕を含む残りの7人は働く段階になってこの地域にやってきました。」

リーナス・トーバルズもフィンランドからシリコンバレーにやってきたわけだが、リーナスが自然に言葉にする「They came here because this is where the action is.」という言葉の「They」は上田さんが書く「ランダムに選んだ10人」のイメージにぴったり重なっている。追記すれば、この「They」には、シリコンバレー以外のアメリカ出身で、シリコンバレー以外では生きられなくなってしまい、自らを他国からやってきた連中と同一化するアメリカ人も多数含まれる。

アメリカの他地域に行った経験がなく、いきなりシリコンバレーに来てしまった若い人には、アメリカをできるだけ旅行するようにいつも勧めているのだが、アメリカ旅行から戻ってくると、どれほどシリコンバレーがアメリカの中でも特殊な場所であるかを実感したと、皆、言う。

シリコンバレーではエンジニアが大切にされる

なぜ世界中からシリコンバレーにエンジニアが集まってくるのかということの答えに、リーナスは「because this is where the action is.」と言っているわけだが、上田さんはそれに加えて「ここはエンジニアが大切にされる場所なんだ」という実感を、語っている。

「シリコンバレーではどこの会社にいっても、エンジニアがとても大切にされているなと実感します。エンジニアはシリコンバレーの花形の職業なのかなと思います。「君はどんな仕事をしているの?」と聞かれて、「インターネット関連の会社で、エンジニアやってます」というと、「いいなぁ、かっこいいねー」といわれたりします。つくづくエンジニアを職業にするにはいい環境です。」

エンジニアにとってのシリコンバレーの魅力は、 (1)最先端に関わる仕事があること、(2)世界中から人々が集まっていることによる刺激、(3)エンジニアが尊敬される場所であること、の3つであると言えるかもしれない。

この「(2)世界中から人々が集まっていることによる刺激」に関連して、最後に少しだけテクノロジーやビジネスと関係のない話を一言。

村上春樹と柴田元幸から見たアメリカ

つい最近読んでたいへん面白かったのが、「村上春樹と柴田元幸のもうひとつのアメリカ」(三浦雅士著)だった。著者のインタビューの紹介文にはこうある。

「アメリカ文学をまるでポップカルチャーのように身近な存在に変えてくれた翻訳者、村上春樹と柴田元幸。佐藤友哉や舞城王太郎、小野正嗣など、いま活躍する若手作家に大きな影響を与えた二人を通して見えて来る文学の新しいかたちを、三浦雅士は最新評論『村上春樹と柴田元幸のもうひとつのアメリカ』(新書館)の中で解き明かしていく。」

この本の主題のひとつは、世界文学の変容とアメリカの関係についてなのであるが、本書の最終章で著者が「アメリカは世界の索引」という表現をしているのを読み、僕はたいへん深く共感した。関連部分を引用して今日は終わりにしよう。「世界中から人々が集まっていることによる刺激」について考える材料として。

「アメリカは世界の追憶の場所なのだ。世界を追憶すべき場所であると同時に、世界を追憶するよすがとなる場所なのだ。

アメリカは世界の雛形、ミニアチュールとして誕生した。それは世界についての世界にほかならなかった。旧世界に対する新世界というのはそういうことだ。理想世界は、世界の記憶の集積にほかならなかったのだ。まるで世界の幽霊のようなものだ。(中略)

実際、アメリカは世界の索引だといっていい。あらゆる都市に旧世界の都市の影が漂っている。(中略)

要するに世界という本のすべてのページをアメリカという索引から引くことができるのである。(中略)

ピンチョンは「重力の虹」でイギリスに向かい、アーヴィングは「熊を放つ」でオーストリアとユーゴスラヴィアに向かい、オースターは「孤独の発明」でフランスに向かい、エリクソンは「黒い時計の旅」でドイツに向かい、パワーズは「舞踏会へ向かう三人の農夫」でオランダに向かう。ミルハウザーにいたってはまるでドイツに住んでいるかのようだ。そしてダイベックはシカゴの中にポーランドを幻視する。アメリカは世界の索引なのだ。」(同書288ページから289ページからの引用)

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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