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その技術は本当に「製品」になりますか?

2003/09/30 10:05
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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新しい技術を「製品」化しようとしているベンチャーや研究開発プロジェクトを評価するとき、構想されている「製品」が、本当に「製品」(Product)なのか、それとも実はただの「機能」(feature)に過ぎないのか、そのあたりを見極めようと試みるのが常だ。そこが見極められないと、事業化戦略が正しいものかどうかが判断できないからだ。

「製品」とは単独で消費者に訴求できるもの。「機能」に過ぎないのならば、それは某かの「製品」や「サービス」にバンドルされなければならない。

「製品」のように見えても、それだけが顧客にいきなり提供されたのでは売れず、実は「機能」だったんだなぁと、あとから気づくこともある。

デジタル・ビデオ・レコーダーは製品かそれとも機能か

いま盛んに議論されているのが、DVR(Digital Video Recorder)は、果たして「製品」なのか、それとも「機能」に過ぎないのか、ということである。

TiVoはDVRを「製品」として構想して市場に投入したが、いま、サテライトのDirecTVのサービスに「機能」としてバンドルされて初めて、売れ行きが伸びている。

Wired誌の10月号が長文のDVRについての記事を掲載している。この分野に興味のある方はぜひ原文をどうぞ。無償で読めます。

「Although TiVo engendered panic in the industry after it appeared, it's proved a hard sell with consumers as a stand-alone device (see "TiVo's Turning Point," page 5). Forrester discovered last year that 70 percent of consumers didn't even know what a DVR was.」(TiVoの登場はテレビ業界にパニックを引き起こしたが、消費者に対してスタンドアローン・デバイスとして売り込むことが困難であったことが証明された。Forresterによれば、70%の消費者はDVRが何か全く知らないまま。)

TiVoは調達した膨大な資金をマーケティングにぶち込んだのは有名な話だが、それでも単独で消費者の認知を得るのが難しかったわけである。

「Around the same time, satellite companies started building DVRs into their set-top boxes - and sales finally started to take off. In the growing competition between cable and satellite, DVRs have become bait to lure subscribers. When cable providers started pushing video-on-demand, satellite companies - unable to deliver on-demand service - countered with DVRs. They've become so popular that cable operators like Time Warner and Comcast are now offering the systems as well. In the past year, the number of DVR-equipped households has more than doubled to 4 million. Forrester projects that in three years, 27 percent of US homes will have DVRs and one-third will have video-on-demand. Either way, control shifts from the networks to the viewer.」(サテライト会社がバンドルしたら、初めて市場がテイクオフし始めた。Forresterは、3年後には米国家庭の27%がDVRを持つようになると予測している。)

この長文記事の5ページ目は「TiVo's Turning Point --- It redefined television. Now comes competition.」というコラムになっている。タイトルは「TiVoの岐路・TiVoはテレビを再定義したが競争に直面す」。

「For TiVo, the hard part is over. Now comes the really hard part: competition.」

TiVoにとっての「the hard part」(大変な仕事)は終わった、という意味は、DVRのパイオニアとして「好きなテレビ番組を時間にとらわれずに見ることができることだ」 (We're convinced: Time-shifting rules.) という消費者の価値を明らかにしたことだ。

そしていま、TiVoは「the really hard part」(本当に大変な仕事)に直面している。それは競争だ。

「Making a DVR isn't rocket science: Buy a hard drive, add some graphics chips, a bit of software, and voila! Forty-nine patents and 100 more pending make up a mere paper wall between TiVo and DVR commoditization. It took Linux programmer Isaac Richards and a handful of fellow programmers less than a year to slap together MythTV, a full-featured, open source knockoff, in their spare time. Sony, one of the original manufacturers of the TiVo box, is now bundling its own DVR software into PCs and DVD players. Last October, Microsoft began stuffing its UltimateTV DVR technology into the Media Center platform for PCs. Then there are the cable set-top box makers, like Scientific-Atlanta and Motorola, and the promise of standard-issue DVR cable boxes - TiVo's greatest threat.」

DVRを作るのはロケットサイエンスではないから、作ろうとすればすぐにできる。SonyもMicrosoftも、自前の技術でDVR「機能」を「製品」に組み込み始めている。これがDVRをめぐる現実である。

最初に動くことで不利になる

August CapitalのAndrew Anker は、彼のVentureBlogの中で、「First Mover Disadvantage」という文章を書いている。

このBlogは、Forbes誌の「TiVo Sales Remain Tepid Despite Fanatic Fans」という記事を参照しながら書かれたものである。

Forbesの記事では、

「The tepid sales have even prompted technology writer Brendan Koerner to declare in Slate magazine last year that TiVo was "destined for the ash heap of history," condemned to fail by what the writer called "first-mover disadvantage."

"First movers, the theory goes, are too smart for their own good, churning out gizmos that are too expensive or too complex for the average customer's tastes," Koerner wrote.」

こんなふうに、「First Mover Disadvantage」(最初に動いたことにより不利)という視点でTiVoを総括している。

Andrewは、このフォーブスの「First Mover Disadvantage」という視点については、そうである部分は認めるとしたうえで、より本質的な問題は、

「But to me, TiVo suffers from another great entrepreneurial problem -- it's a feature, not a product.」

DVRが「製品」(Product)ではなくて「機能」(feature)に過ぎない点だ、と述べる。

「I have the bundled DirecTV/TiVo and it works beautifully. Rather than purchase a normal satellite receiver, I got one with TiVo inside. No integration issues, no separate device. TiVo is great functionality, but it needs to be built into TVs, DVD players, cable and satellite receivers. It's too hard a value proposition to explain and too complicated a device to set up on its own.」

いまDirecTV/Tivoバンドルを使っているが、美しくワークしている。インテグレーションの問題もなければ、別々のデバイスを買わなければいけないということもない。TiVoは素晴らしい機能性を持っている。でもその機能は、テレビやDVDやケーブル・サテライト・レシーバに組み込まれなければならなかったのだ。単独では、その価値を説明することも大変だったし、デバイスをセットアップするのも複雑すぎたのだ。

Andrewは、TiVoがDVRという本来「機能」であるべきものを「製品」として考えたことに問題があったのであって、単なる「First Mover Disadvantage」だけの問題ではないのだと主張するわけである。

もちろん、「機能」だから悪くて「製品」だからいい、というのではない。

自らが「製品」化しようとしているものが「製品」なのか「機能」なのか、「機能」なのであればそれがどのくらい固有の技術を「機能」化したものなのか。そのあたりの見極めが正しくできることで、はじめて正しい戦略が決定されるのである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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