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データベースの権威が望遠鏡に注目する理由

2003/09/22 10:05
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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「World Wide Telescope」という言葉を聞いたことがありますか。

Telescopeは文字通り、望遠鏡。ワールドワイド望遠鏡とは、データベースの権威、MicrosoftのJim Gray(1998年チューリング賞受賞者)が提唱するコンピュータサイエンス研究の新しいプラットフォームのことである。彼のサイトの自己紹介の最後に、こんな文章がある。

「Jim also is working with the astronomy community to build the world-wide telescope .. When all the world's astronomy data is on the Internet and is accessible as a single distributed database, the Internet will be the world's best telescope. This is part of the larger agenda of getting all information online and easily accessible (digital libraries, digital government, online science, ...).」

Jimは、天文学コミュニティと協力してワールドワイド望遠鏡を作ろうとしている。世界中のすべての天文学データがインターネット上にのり、1つの分散データベースとしてアクセス可能になれば、インターネットは世界最高の望遠鏡になる。この試みは、すべての情報をオンライン化し簡単にアクセス可能とするというより大きなアジェンダの一部である。

Microsoft Researchサイトの「The World-Wide Telescope, an Archetype for Online Science」から、2002年6月の同名の論文(PDFファイル)がリンクされている。アブストラクトのみ引用しておくことにしよう。

「Most scientific data will never be directly examined by scientists; rather it will be put into online databases where it will be analyzed and summarized by computer programs. Scientists increasingly see their instruments through online scientific archives and analysis tools, rather than examining the raw data. Today this analysis is primarily driven by scientists asking queries, but scientific archives are becoming active databases that self-organize and recognize interesting and anomalous facts as data arrives. In some fields, data from many different archives can be cross-correlated to produce new insights. Astronomy presents an excellent example of these trends; and, federating Astronomy archives presents interesting challenges for computer scientists.」

アブストラクトの最後の部分が重要だ。「たくさんの異なるアーカイブからのデータが相互に関連しあって、新しい洞察を生み出すということが多くの分野で起ころうとしている。天文学はこうしたトレンドの素晴らしい例を提示している。天文学アーカイブを合体させることはコンピュータ科学者に興味深い挑戦機会を差し出しているのである。」

興味のある方はぜひ原文をどうぞ。深い示唆に富む論文である。

また、それ以外にも、Jim Grayのサイト左側のバーの「Talks」に飛ぶと、彼が最近行なったスピーチのPowerPointファイルがたくさんある。サイズが大きいファイル群なので、ここではリンクは張らないが、プレゼンテーション資料も読むと、よりいっそう理解が深まると思う。

Webサービスとグリッドが可能にする仮想天文台

そのプレゼンテーション資料の中にこんなフレーズがある。

「How to build the World Wide Telescope? Web Services & Grid Enable Virtual Observatory」

どうやってワールドワイド望遠鏡を作るのか。Webサービスとグリッドが仮想天文台を可能にするのだ。

Jim Grayは、ITにおける最先端技術であるWebサービスとグリッドのためのスケールの大きなアプリケーションプラットフォームとしてこのワールドワイド望遠鏡を構想・提唱し、コンピュータサイエンス研究の最先端を思い切り追及できる場を用意しようとしているのである。

実は僕もこのWorld Wide Telescopeについて知ったのはつい先週のことである。

天文データはビジネスにならないからいい

9月18日夜、Xerox PARCで開かれたJim Grayの別テーマの講演会に出かけ、偶然、この話を聞いたのである。

「ワールドワイド望遠鏡を研究のプラットフォームにすべきだという理由は、天文データは商業的に無価値だからだ」

Jim Grayはこう言った。なるほどなぁと、深く感心した。

あとから、ネット上に公開されているプレゼンテーション資料を読んだら、こんな記述があった。

「It has no commercial value.

- No privacy concerns

- Can freely share results with others

- Great for experimenting with algorithms」

つまり、プライバシーについての懸念もなく、結果を自由に皆と分かち合うことができるから、アルゴリズムの実験に最適だ、と。

さらに、Jimは、このワールドワイド望遠鏡によって宇宙の成り立ちを研究するという課題自身が面白いし、データのボリュームが巨大である点が、研究プラットフォームとして素晴らしいのだ、と語った。そして、こんなことも言った。

「これは純粋なサイエンスだから素晴らしいんだ。バイオテクノロジーのデータなんかを取り扱うと、これでどうやってビジネスに結びつけるか、どうやってこのデータで金儲けをするのか、すぐそういう話になる。ワールドワイド望遠鏡の天文データは絶対にそうならない。商売になんて絶対にならないんだから。」

そして彼は、SkyServerサイトにつないで、聴衆に対して、デモンストレーションをしてくれた。このサイトにはこう書かれている。

「This website presents data from the Sloan Digital Sky Survey, a project to make a map of the entire universe. We would like to show you the beauty of the universe, and let you share our excitement as we build the largest map in the history of the world.」(このサイトでは、全宇宙の地図を作るプロジェクト「Sloan Digital Sky Survey」からのデータをお見せします。宇宙の美しさをお見せして、世界史上最大の地図を作ろうとしているエキサイトメントをあなたとシェアしたいのです)

残念ながら、天文学については全く素人の僕には、Jim Grayがこのサイトを使ってやってくれたデモのどこがどう素晴らしいのかを、ここでご説明することができない。日本のBlogや日記サイトを巡回すると、天文学と情報技術の両方に精通した方がいらっしゃるようなので、このワールドワイド望遠鏡プロジェクトの意義など、専門家の立場から、ぜひご教示いただければありがたいと思う。

最先端の活動を教育に生かす

僕がJim Grayから感じたのは、スケールの大きな超一流の研究者は、考え抜いて、いい問題設定をするものだなぁ、ということであった。

そしてこのワールドワイド望遠鏡からもう一つ感じたのは、最先端をきちんと取り入れた教育の重要性である。ことにインターネットが一般に普及した1994年以降約10年間のサイエンステクノロジー分野の進歩(研究自身の進歩もさることながら、その最先端の活動が広くネットで公開されていること)の現実を、子供たちの教育の中で少しずつでも織りまぜていくのといかないのとでは、子供たちの興味の広がり方が全く違ってくるだろうなぁ、ということを痛感したのであった。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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