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年収500〜1000万円の仕事がなくなっていく米国

2003/09/05 10:05
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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本連載8月20日「HPの復活をやりとげたフィオリーナ」を書いたのとほぼ同時に、サンノゼマーキュリーニュースに「HP results miss target; jobs cut」が出た。四半期の業績がターゲットに達しなかったため、その業績発表と一緒に1300人のレイオフもアナウンスした。何だか罰ゲームみたいだ。

「HP continues to experience significant churn in its workforce. Before the Compaq merger, HP had 153,500 employees worldwide. HP now has 139,800 employees, down from 141,400 three months ago. The company was in the process of laying off 3,500 employees, and with Tuesday's announcement an additional 1,300 will be let go. But HP continues to hire new employees, particularly through outsourcing deals where it acquires the computer administrators who work for its services customers.」

HPのAfter acquisition managementについては、本連載5月22日「HP・コンパック統合に見る、大胆なリーダシップの重要性」で詳しく解説したのでそちらをご参照いただくとして、HPでは本当に激しいリストラがものすごいスピードで続けられている。Compaqとの合併時に15万3500人だった雇用は、3カ月前に14万1400人。現時点で13万9800人。さらに既存雇用の削減が続いて一方で、アウトソーシングディール(顧客企業の情報システム部門を人も含めて丸ごと抱え込む)で、人が増えている。

「"We acted more aggressively to reduce head count than originally planned," Fiorina said.」

そこで、フィオリーナは言う。計画していた以上に、もっともっと人を減らしてきた。

「The company didn't say how many jobs would be lost in Silicon Valley, but Wayman noted that HP's services businesses would build up their workforces in low-cost areas such as Poland, Costa Rica, the Philippines, China and India. Wayman noted that HP already has 8,000 employees in India.」

HPはシリコンバレー史を象徴する存在であるが、HPのサービス部門は、シリコンバレーの雇用には目もくれず、雇用を低コスト国にどんどんシフトしている。

海辺の絶壁にある米国の技術雇用

仕事仲間の渡辺千賀が、そのBlogで、「Silicon Valleyの空洞化」という怖い話を書いている。彼女が参照している記事は同じくサンノゼマーキュリーニュースの「Some technology jobs head abroad -- and they may not be coming back」であるが、記事の原文よりも彼女のBlogのほうがうんと怖い。

「4-8万ドルというと、500万から1000万円というレベルだが、そういうあたりの技術関係の職がなくなっていく、ということ。」

という話であるが、

「グローバルに仕事が移転する時代では、ある時首を切られて、それ以降全く仕事がなくなってしまう、ということが十分起こり得る。

なんというか、海辺の絶壁を想像してしまう。水際ぎりぎりにぽっかり横穴が開いていて、その中で安穏と暮らしていると、だんだん潮が満ちてきて、海の水がじわじわと穴の中に入ってくる。今にまた潮が引いて、元通りの安穏とした暮らしに戻れるのではないかと思って耐えているが、ついに水は腰の辺りを超え、首あたりまで来る。どこかで決意して、荒海に泳ぎ出て、さらに上のほうにある穴によじ登った人だけが生き残ることができる。」

と彼女は書く。

日本語という障壁がある分、また「雇用は聖域」と企業が考えがちな分、同じ先進国でも、アメリカよりも日本にはそういう切迫感が少ない。けれど、こういうことの影響はいずれ少しずつでも出てくるはず。グローバルに仕事が移転する時代にどう生き抜くかということを、今後ますますきちんと議論していかなければなるまい。

オフショア開発が米国内の仕事を減らす

ところで、Robert X. Cringelyは、PBSサイトに「Body Count: Why Moving to India Won't Really Help IT」という文章を書いている。IBMをはじめとするIT企業は、オフショアリングとか称して、どんどんソフトウェア関係の仕事を海外に移転させているが、

「The only real result of all this job-shifting will be tens of thousands of older engineers in the U.S. who will find themselves working at Home Depot. You see, "offshoring" is another word for age discrimination.」

それは、現実には、米国内の「older engineers」をホームデポで働かせるという結果になる。オフショアリングは年齢差別、年代差別そのものだ。「older engineers」って、いくつくらいの人のことか。まぁ40歳以上っていうところだろうか、アメリカの感覚だと。

Cringelyは、インドなどの低コスト国に仕事を移すことは、コスト効果はあっても、真の顧客満足に結びつくプラス効果は生み出されない、と主張する。

「I am talking abut switching from headcount AND costs to true productivity -- getting the work done and the customer served as efficiently as possible. And this comes entirely down to hiring. It is not who you get rid of, but whom you keep.」

「Just as an example, there are programmers who are a hundred or a thousand times more productive than their coworkers, and every Silicon Valley startup is constantly on the lookout for that kind of genius. Those people work in big companies, too, but their impact is muted.」

まわりの連中よりも何百倍も何千倍も優秀なプログラマーというのは居るものだ。そういう能力を持った人は大企業にも勤めている。でも大企業だとそういう人のインパクトが薄められる。そういう才能をきちんと雇用し、大企業の中でもちゃんと活かせ、そうすれば、顧客満足もうんと上がる。同じ成果を低コストでということばかりでなく、そういうプラス効果を考えなきゃダメだ。

タイトルを読んだとき、僕は、この文章にはもう少し「人にやさしい」ことが書かれているのかと思って読み進めてみたら、あに図らんや、であった。

超ハイレベルな人材の雇用しか残らなくなる

つまりは、Cringelyの議論も、「4-8万ドルというと、500万から1000万円というレベルだが、そういうあたりの技術関係の職がなくなっていく」ということと相通ずる話なのだ。Cringelyが大切にしろと主張するリソースは、低コスト国に移転してもいい「4-8万ドルのリソース」ではなく、年収10万ドル以上稼ぐ能力を持った希少なリソースに違いないからである。

「Ironically, there lies here an enormous opportunity for someone. An organization of talented people that can get its collective head around this problem and begin to see its industry, its work, and its goals in a different way will have a terrific advantage. IBM and companies like it are vulnerable.」

IBMをはじめとするIT企業がオフショアリングをやってコスト削減に邁進する中、もっと高付加価値を生み出せる「An organization of talented people」(才能溢れる人々の組織)にはチャンスあり。このCringelyの結論こそが、競争社会アメリカのロジックなのである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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