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インターネットの父 対 QoS不要論

2003/09/03 10:05
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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CNET Japanサイトに先週末掲載されたExpert Opinion、Dr. Lawrence Robertsの「「ベストエフォート」が死語となる日」を読んでいて、ああこれは、Dan Bricklinの「QoS不要論」と真っ向から対立する議論だなと思った。

本連載を始めて間もない4月9日の「QoSなしでもVoIPは上手くいく」で、Danの基本的な考え方はご紹介したわけだが、その後のDanの「QoS不要論」の深化をまだご紹介していなかったので、今日は、「「ベストエフォート」が死語となる日」との対比で、Dan Bricklinの最新論考「Why We Don't Need QOS: Trains, Cars, and Internet Quality of Service」へのリンクを張っておこう。

今日の内容については、友人の川野俊充君との議論でいろいろと刺激を受けたので、ぜひ川野君のサイトからトラックバックでも打っていただき、さらに議論が深まればいいなと思う。

ちなみに、「「ベストエフォート」が死語となる日」を書いたDr. Lawrence Robertsは、本連載5月26日「ハイテク投資はタイミングを読み誤ると大変なことになる」でご紹介したCaspian NetworksのCTO。彼の思想でCaspian Networksは百億円以上の資金を調達して勝負しているわけだから、Dan対Lawrenceの議論は、確信犯同士のものだといっていい。発表日時は少しずれているが、この2つの論考はほぼ同じ時期に書かれたものである。

ベストを尽くすだけではダメ

まずLawrenceの「「ベストエフォート」が死語となる日」は、

「現在のインターネットは成功を収めているが、これまであまり変化のなかったルータというアーキテクチャをベースに構築されている。現在のルータは、10年前のものとそれほど変わってはいない。しかし、インターネットの機能やIPテクノロジーに対する期待は高まる一方だ。」

「インターネットでリアルタイム性が重要視されるようになった現在、ルータがベストを尽くしたところで十分とはみなされないようになってきている。」

といった文章からもわかるように、次世代ルータは「ATM並みのサービスをIPの世界に提供し、きめ細やかにトラフィックをコントロールすることができる」そして「新たなレベルで確実な品質を保証する」ことが不可欠で、Caspian Network社の製品こそがそのニーズに応えるものだという主張である。

一方、Danの思想は、「Why We Don't Need QOS」というタイトルからもわかるように、

「I keep reading how all sorts of applications for the Internet will require new, "Quality of Service" (QOS) features in order to work. There is this feeling that special handling of "the right traffic" will be required to make things work. I believe that there are some dangerous flaws in this type of thinking. Not only can QOS make the Internet worse for applications we need and depend upon, it won't be able to help deliver on its promise. I also believe that while the need for QOS sounds intuitive at first, once you think about it a bit, you'll see that common sense argues against it in the context of the Internet.」

という冒頭の文章に集約されている。彼の論点は、QoSはアプリケーション側から見たときのインターネットの性質を悪くするばかりでなく、QoS論者が言っているほどの成果も実は上がらないのではないかという疑問を呈示している。この「Why We Don't Need QOS: Trains, Cars, and Internet Quality of Service」という論考は、かなり詳しくこれらの論点について議論しているので、興味のある方はぜひ原文をじっくりとお読みになってください。

コスト的に効率が良いのはどちらか?

この2つの論考を読み比べた川野君は、僕にこんなメールを送ってくれた。

「議論を思い切って比較してしまうと以下のようになると思います.

Dan:『小手先のプロトコル改良による通信品質の保証にこだわるより,単に容量を増設した方がよい』

Lawrence:『VoIPやビデオ会議などのアプリケーションの台頭により今後通信品質の保証(ネットワークの使用効率の向上)はますます重要になる』

どちらの命題も,異なる仮定の下では真なのですが,品質保証と容量増設がニーズを満たすための手段として交換可能であるとすると,ポイントは『ではコスト的に効率が良いのはどちらか?』ということになります.Danの議論では暗示的に大容量化の方がコストアドバンテージがあると言っており,これは私もその通りだと思っていますが,これを裏付けるファクトがないと説得力がありません.現在のインフラの容量増設に必要な費用とQoS対応ルータを入れるために必要な費用の比較,およびそれを負担するプレイヤーのマップなどがあればこのあたりの事情がはっきりすると思います.」

「Lawrenceの議論の弱いところは,品質保証の実現に必要な外在性に言及していないこと.つまり,あるトラフィックの品質を保証するためにはそのパケットが通過するネットワークが全てQoSに対応している必要があり,極論を言えば,世界中のルータをアップグレードしなくては厳密な通信品質の保証なんてできない,ということです.Lawrenceは10年前からルータが進歩していないことを新たな革命がやってくる兆しとしていますが,10年前からルータが大して進化しなくてもネットワークがスケールし,機能拡張が可能なようにインターネットプロトコルが設計されていたことこそがインターネット革命をもたらしたというのが一般的な認識ですし,今後もそうであり続けるでしょう.」

「容量増加と効率向上のどちらを優先すべきか.もちろん,両方実現できるのが理想ですが,二者択一を突き詰めると哲学的な問答になってしまいます.これはIPv4をIPv6にアップグレードすべきだという議論と同じ構図です.一つ言えるのは通信品質の保証がカネになるという確信がなければキャリアはQoS追求に走らないだろうということ.私個人としてはネットワークはバカでもシンプルで頑丈,運用コストが低いものであり続けるべきだと思います.」

さて、このあたりは色々と議論が分かれるところかと思う。

ご意見のある方は、どうぞコメント欄に書き込まれるか、トラックバックを打っていただければと思います。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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