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Googleを取り巻く苛酷な競争

2003/08/28 10:05
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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昨日に引き続きGoogleの話を。今日はGoogleを取り巻く苛酷な競争について。

まずは事業の観点から。8月25日のサンノゼ・マーキュリー・ニュース「Net giants battle for targeted ad market」は、オンライン広告産業における競争という視点を提供する。

検索広告の市場規模は70億ドルに

「Online advertisers have realized that placing ads beside search results reap better results than the banner ads that many Internet users find annoying. Advertising sales from Internet searches are estimated to be more than $2 billion this year, and are predicted to grow 35 percent annually -- hitting nearly $7 billion by 2007, according to U.S. Bancorp Piper Jaffray.」

インターネット・サーチから発生する広告の市場規模は、今年の20億ドルから年率35%で伸びて、2007年には70億ドル市場になるとの予測。まずはこの市場の奪い合いが競争の現場だ。

この2007年70億ドルという数字は、3月に発表されたU.S. Bancorp Piper Jaffrayの「The Golden Search」というレポートが根拠なので、特にものすごく新しいというものではないが、約8000億円の新市場(既存市場からのシフトだとはいえ)は小さくないから、

「Now the competition among Google, Yahoo, software giant Microsoft -- and even eBay -- is in full swing. The good news: It could to lead to a better Internet experience for the Web visitor.」

Googleがその競争の先頭を走っているわけだが、Overtureを買収したYahoo、Microsoft、eBayまでが「in full swing」、大競争に入ったというわけである。競争の結果、恩恵をこうむるのはユーザ。ネット時代の競争はどうしても、供給者地獄・消費者天国の様相を示しやすくなる。

スーツケース殺人の記事にスーツケースの広告

ところで、まだまだサーチ技術は発展途上である。

「One of Google's new services offers ads that match the content of articles appearing on news Web sites. Recently, the New York Post ran an article about a murder in which the victim's body parts were packed in a suitcase. Google put a suitcase ad beside the online version of the Post article.」

Googleはニュース記事に関連する広告を掲載する新しいサービスを始めたが、ニューヨークポストの「被害者のバラバラ死体をスーツケースに詰めた殺人事件」の記事に、Googleは、スーツケースの会社の広告を出してしまった、というお粗末な話。まだこんな段階なのである。

そしてGoogleにとって最も気になるのはYahoo。何しろYahooがサーチをGoogleにアウトソースしたことでGoogleの事業は飛躍的に発展してきたわけだから。

「Yahoo hopes that its earlier acquisition of search technology company Inktomi, matched up with Overture's properties -- like Fast and Alta Vista -- will push it ahead of Google in search experience. But it will take some time to integrate those properties, and so far Yahoo has relied on Google, a former ally, to conduct a good deal of its searches. Now that Yahoo is competing for users with Google -- for advertising dollars -- Yahoo wants to drop dependence on Google's technology and replace it with a revamped Inktomi, but the rollout is happening slowly.」

Overtureの買収によって、Yahooには今、InktomiとFastとAlta Vistaの技術が揃った。ただこの技術の統合にはまだ時間がかかる。GoogleとYahooのビジネス上の関係は、両者の水面下での技術開発競争の進展度合いによって決まってくるとみていいだろう。Googleが技術的に先行し続け、顧客にとってのサーチ経験という一点においてすべての他社技術を圧倒的に凌駕し続けていけば、YahooもGoogleとの関係を維持することになろうが、競争はまだ始まったばかりなのである。

e-Commerce Timesの「Why Google Is Not the Next Microsoft」では、Googleが「次のMicrosoft」ではない理由を、

「The amount of choice in the marketplace might mark the biggest difference between Google and Microsoft. Even though consumers who conduct searches on Yahoo actually are using the Google engine, there are still myriad other choices.」

検索エンジンにはまだまだたくさんの選択肢があるからだ、と書いている。

サーチ技術の勝負はまだついてない

ただ、この表現はちょっと乱暴である。Microsoftだって、最初から独走ぶっちぎりで現在の地位を築いたわけではない。本連載8月22日の「ハイテク業界の「スチューピッド・カンパニー」」でもちょっと触れたが、Microsoftの1984年売り上げは、わずか5500万ドル。グローバルの売り上げでたかだか数十億円規模だった。Microsoftの売り上げが10億ドル($1 billion)を越えるのは、1990年頃のことである。だから、MicrosoftとGoogleを比べるのならば、1980年代後半のMicrosoftと現在のGoogleを比べて議論しなければならないはずである。1980年代後半、Appleがハードに固執せず、もしもOSのライセンス戦略を積極的に展開していたら、今のIT産業の勢力図はずいぶん違ったものとなっていたはずだ。ネット産業におけるサーチ技術をめぐる競争もまだそういう段階にある。だから誰も競争を諦めたりしないのである。

さてネット上ではまだ読めないが、昨日郵送で届いたBusiness 2.0の最新号(2003年9月号)の表紙からは、「Will Microsoft “Netscape” Google?」という記事のタイトルが目に飛び込んでくる。「Netscape」という言葉は、ついに、「先行する競争者をどんなことをしてでも叩き潰す」という動詞になってしまった。MicrosoftがGoogleを90年代後半のNetscapeと同じ視線で眺めていることは自明である。問題はあのときと同じような意志と力が今のMicrosoftにあるかどうかであろう。

新しい検索技術も登場

ところで、純粋なサーチ技術の競争も、まだ終わったわけではない。

シリコンバレーでボツボツと話題になってきているのが、Kaltixというサーチエンジンのベンチャーである。サイトには、Coming Soonとしか書かれていないが、8月11日のCNET News.comで紹介されている。

「Kaltix was formed in recent months by three members of Stanford's PageRank team--a research group created to advance the mathematical algorithm developed by Google co-founder and Stanford alum Larry Page that cemented Google's fame.」

「PageRank has helped steer people to Web sites like no other search technology before it, harnessing the link structure of the Web to determine the most popular pages. Now, Kaltix hopes to improve upon PageRank, with an attempt to speed up the underlying PageRank computations.」

スタンフォードのPageRank研究チームから出たベンチャーで、Googleの6-7年前を彷彿させる。基本的にはPageRank計算の速度向上技術が中核技術になっているようだが、

「"Kaltix is a 'stealth mode' start-up...(leveraging) research done at Stanford University as well as several new technologies developed at Kaltix to provide large-scale personalized and context-sensitive search," a Kaltix representative said, declining to comment further.」

将来的にはパーソナライゼーションで特徴付けたいと今のところは考えているようだ。ただ、創業期のベンチャーの構想というのは、よほど早期から確固とした技術に裏打ちされていない限り、事業という観点から重要なことに重点的にリソース配分するから、このベンチャーがステルスモードを抜けてPublicityを始めるころにまだ「large-scale personalized and context-sensitive search」というのが切り札になっているかどうかは、保証の限りではない。ただ、楽しみなベンチャーであることは確かだ。

そして最後に、オープンソースのサーチエンジン・プロジェクト Nutch。これも、8月18日のCNET News.comで紹介され、日本語訳もCNET Japanで掲載されたからお読みになった方も多いかもしれない。CNET Japan・山岸編集長も自身のBlogで、この記事をフォローしている。彼は、

「検索エンジン市場はもう飽和したかなという状況で参入してきたGoogleがあっという間にこれだけのポジションを作り上げ、Googleが支配的になると今度はソフトウェア業界の重鎮の肝いりで、オープンソースの検索エンジンプロジェクトが立ち上がる。状況が安定化するのを許さず、これでもかこれでもかと新陳代謝を繰り返すシリコンバレーの生態系には本当に圧倒される。でも、それが面白い。」

と書いているが、確かにシリコンバレーの新しいものを生み出す力は衰えていない。

ただ、このNutchについては、Pacifica Fundの同僚・Tim OrenがそのBlogで、

「A pack of text indexing, web crawling technorati have started an open source indexer project. This looks like a great idea on multiple fronts: spreading the knowledge of how such things work, having an engine where the biases are transparent, and providing a platform for experimentation by those not employed at Google or Yahoo.」

と書いているように、(1)サーチエンジンがどういうふうに作られているのかという知識を普及させる、(2)サーチ結果の偏向についてアルゴリズムがトランスペアレントになっているエンジンを持つことができる、(3)GoogleやYahooに勤めないエンジニアでも実験できるプラットフォームが提供される、という社会的・教育的・啓蒙的な意義の大きさを強調している。確かに、完成度という点で、Nutchを今すぐGoogleの競合ととらえるのは少し無理があろう。Timが言うような長期的な意義のほうが大きいに違いない。Linuxがフィンランドで産声を上げたのは1990年代初めのこと。Nutchも5-6年たったときに、ビジネスの苛烈な競争の果てにその時点で支配的地位についたサーチエンジンに対する脅威として屹立することができるのであろうか。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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