最終更新時刻:2008年9月5日(金) 23時13分

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今までのLinuxビジネスは革新的じゃない

公開日時:
2003/08/26 10:05
著者:
umeda

Linux再考」というCNET News.comの7月30日のコラムを読んでみよう。書いたのはIan Murdock。

「Ian Murdock is a long-time Linux user, developer and advocate. He founded Debian, a Linux distribution project, in 1993. He is also a co-founder and chairman of Progeny, a Linux distribution company that sells Linux as a platform.」

Debianの創始者で10年来のLinuxユーザ・開発者・提唱者。Progeny社の共同創業者である。

本連載7月14日の「コモディティ化時代のソフトウェア開発」で取り上げたあのIan Murdockである。7月7日の「オープンソースが引き起こすパラダイムシフト」もあわせて予備知識として読んでおくと、このコラムがより面白く読めることと思う。

Tim O'Reillyが、Ian MurdockのProgenyを「ソフトウェアがコモディティ化する時代に当然現れるべきDellモデルに相当するものに現時点ではもっとも近い試み」と高く評価していたのを思い出していただきたい。

Linuxは製品ではない

Linuxの成功は、Linuxがどれだけ速く普及しているかというような数字で議論されることが多いが、それは本質的ではないとMurdockは冒頭で書く。

「To me, this kind of "Linux as product" mentality misses the entire point of Linux and the open-source development model that created it.

Linux is not a product. Rather, Linux is a collection of software components, individually crafted by thousands of independent hands around the world, with each component changing and evolving on its own independent timetable.

To think of Linux as a product is to freeze an inherently dynamic thing in time and to close something that is inherently open. It cannot be done without losing something--and something significant at that.

No, Linux is not a product. It is a process.」

Linuxは製品ではないのだ。Linuxはソフトウェア部品の集積なのだ。その部品1つ1つが世界中の大勢の人たちによって作られ、それぞれ独自に変化し、それぞれ固有のタイムテーブルを持って進化しているものなのだ。Linuxは製品ではなくてプロセスなのだと、彼は強調する。

このMurdockという人の文章は、曖昧なところがなく、語るべき内容に深い自信がうかがえる。

Linuxディストリビュータの現在は、

「They collect "best of class" open-source technologies and integrate them into complete offerings.」

であるが、

「Does this mean that the only way to commercialize Linux is to sell the integrated solution as a traditional, "one size fits all" product? To do so, I reiterate, is to miss the entire point of Linux, because Linux is fundamentally different from traditional operating system products--both technologically and, for lack of a better word, culturally.」

「one size fits all」Linuxを売ることがLinux商用化の唯一の道であるというのは間違いだ。Linuxは従来のOSと根源的に違うものなのだから。技術的にもカルチャーという面からも。

「Yet the business models that are built around today's leading commercial Linux distributions are remarkably similar to those built around the proprietary operating systems they seek to replace」

今のやり方は、置き換えようとしているProprietaryなOSの周りに出来上がったビジネスと酷似しているではないか。それではダメなのだ。

Linuxとは何か

次の文章がとても大切だ。5つの短い文章が畳み掛けるようにつながっているから、番号を振ろう。

(1) It's an open platform that is not owned or controlled by any single company.

(2) It comes with unmatched customization, optimization and integration possibilities.

(3) It is the ideal "invisible engine" for driving the next generation of applications and services.

(4) And it gives its users greater control over the evolution of the underlying platform, putting the user firmly in control of product release timelines and rollout schedules.

(5) In short, with Linux, the balance of power has finally shifted back from company to user.

Linuxによって、ベンダーからユーザへの真のパワーシフトが起こる。

従来のベンダーがコントロールするOSでは、

「The seller, rather than the customer, once again controls the evolution of the platform and dictates the timeline on which the customer must release or implement new products and services」(ユーザではなくベンダーがプラットフォームの進化をコントロールする)

が欠点。現時点での「one size fits all」Linux製品アプローチでは、

「Linux-as-product approach complicates or eliminates the ability to customize, optimize and integrate. Sure, the product can be modified--but only at the cost of losing service and support.」(カスタマイズ、最適化、インテグレーションができない。製品の修正はできるがそうなるとサービスもサポートも受けられない)

が欠点。

Linuxビジネスには新しいモデルが必要

Linuxディストリビュータは、こうしたLinuxの可能性をちゃんと生かすことを前提とした新しいビジネスモデルを作らなければならないのだと、Murdockは主張する。

「The Linux distribution industry needs to start looking at Linux in a new and different way--as a platform to be shared rather than as a product to be owned. Linux distributors need business models that better match the fundamental differences that Linux brings to the market in technology, culture and process. They need business models that preserve the magic that has made Linux what it is today.」

これが、Tim O'Reillyが評価するMurdockの「ソフトウェア界のDellモデル」構築へのビジョン・ステートメントなのであろう。

そしてMurdockは、Proprietary技術に対する言葉として、インフラ技術という言葉を使い、

「Linux is clearly an infrastructure technology. After all, it grew out of the Internet, the most recent infrastructure technology to shake the foundations of the information technology industry. Imagine if the Internet had at some point changed from an infrastructure technology to a proprietary technology. Where would that have left us?」

「By pursuing traditional platform lock-in strategies, the Linux distribution industry is in effect attempting to turn an infrastructure technology into a proprietary technology. The source code may be available, but what good is that if I'm stuck with the company who gives it to me?」

と結論付ける。Linuxディストリビュータが今のままロックイン戦略を追及するならば、Linuxをインフラ技術からProprieatry技術に転落させることになってしまうぞ。

顧客はLinuxの何を買うのか?

さて、このコラムを補足する文章が、筆者のIan Murdockによって書かれた。8月11日の彼のBlogを読んでみよう。

「Some people clearly got it, and others clearly didn’t.」

この文章を読んで完全に理解した奴もいたが、そうでないのもたくさん居た。

「A number of people said, “But it has to be a product! Otherwise, how can you sell it?” This line of argument proves my point - so many people are used to thinking about operating systems as products that they assume this new and very different operating system called “Linux” must automatically be made to fit the same mold. Trouble is, the fact that Linux is new and different is precisely why everyone is interested in it.」

「でも製品でなきゃだめだよ、そうしなきゃ売れないじゃないか」と多くの人が言った。こういう連中がたくさん居ること自身が、自分の論点の正しさを証明しているのだ。Linuxが新しく違うものだからこそ皆が面白がっているにもかかわらず、Linux製品という概念によって、Linuxが古い仕組みの中に閉じ込められようとしているのだ。

「Others pointed out that customers buy products, not processes. A very good point. However, I never said that selling products was a bad idea; rather, I said that Linux isn't the product customers want to buy. Customers want to buy products that Linux enables, whether it's a less expensive desktop OS, an open-standards-based point-of-sale or NAS solution that doesn't lock them in to a platform vendor, or a device like TiVo that does something completely new and innovative. In fact, the customer often doesn't even need to know the product is based on Linux - in most cases, quite frankly, that is completely irrelevant.」

「顧客はプロセスではなく製品を買うのだ」と指摘する人も居た。自分は製品を売るのが悪いアイデアだといった覚えはない。自分が主張するのは、Linuxというもの自身は、顧客が買いたい製品じゃあないだろう、ということだ。顧客が買いたいのはLinuxによってenableされた製品だ。ほとんどの場合、Linuxが使われていることすら顧客が意識しないということでいいんだ。

「Ok, so Linux is a process, not a product. How do you build a business around that? I have a few ideas. My customers aren't the end users, but rather the various product vendors that have decided to base their products on Linux, whether it's because they don't have to pay a royalty to Microsoft for every unit they ship, or because they don't want to be locked in to a platform vendor, or because they appreciate the unprecedented ability to customize and integrate that Linux provides. Point is, my customers want to buy the power that Linux brings to bear, and that power lies largely in the process used to create it, not the end product that is one instance of the process used to create it.」

Linuxが製品ではなくてプロセスだと認めたとして、どんなビジネスをその周辺に作ることができるのか。「I have a few ideas.」という文章から、Murdockが創業したProgeny社のサイトにリンクが張ってある。ポイントは、エンドユーザに製品を提供するベンダー向けの事業であること。その製品開発プロセスに貢献する価値に重きを置いているということなのだろう。

このコラムに寄せられたコメントで、Murdockの考えとぴったり一致したものは、

「"Linux is a product developed by a process. The point is that it's the process, not the product, that makes Linux special."」

だったという。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

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「Linux≡ソフトウェア部品の集積」という考えは真実でこそあれ、あまりにも洞察が浅い幼稚な考えなのでは。もし単にソフトウェア部品の集積なら、メモリアロケータがむやみやたらに大量にあってよい(昔のBSDはリリースのたびにメモリアロケータが増えるとすらいわれていた)し、異種のvirtual memoryが同時に稼働していたってよい。そして、それに起因する無駄に対して一切文句をいってはならなくなる(メモリアロケータの乱立は結果として無駄な空きメモリを大量に残し、メモリの使用効率を悪化させてしまった)。

もう1つ、部品の集積という考えの欠陥として、部品の全てが互いに協調動作することによって、初めてOSが成り立つという事実を完全に無視してしまっている。例えば、スケジューラだけをリアルタイム向けにしたところで、メモリアロケータがしょっちゅうブロックしてCPUを手放しているのでは、遅延の見積りが難しくてリアルタイムにならない。バランスがとれない部品を組み合わせたところで、決して無条件に動くものが作れるわけではない。

似たようなミスマッチが生じることがある例として思い出したのが、紳士服のコーディネート。単にブランドをそろえればよい、上下をそろえればよいというほど簡単なものではない。上着の素材や柄、シャツやタイの色、靴の形、さらにはそれを着る者の仕事まで、全てのバランスがとれなければうまいコーディネートにはならないのだ。しかし、紳士服の場合はバランスをとるのはプライマリにはそれを着るものの責任になる。多種のビジネスに関わる多々の人々が身に着ける服ゆえ、一番正しい服を選択できるのは自分自身しかいない。エレガントな紳士服を着ている人は、その裏で自分で選んださまざまな服を試し、多くの失敗を乗り越えた上で自分にぴったりのコーディネートにたどり着いているのだ。

「Linux≡ソフトウェア部品の集積」は、高々「コーディネートに使える服はいろいろある」と述べているに過ぎない。それらの組み合わせにより色使いやシルエットが作られ、全体のバランスが決まること、さらにコーディネートに善し悪しや、クラシックに代表される基準があることまではっきりと理解している様子がない。Progenyのビジネスこそなんとなくコーディネートを考えているように見えるものの、ソフトウェアの世界でクラシックを打ち建てるぐらいの覚悟がなければ単に着せかえ人形の衣装を作る会社で終ってしまうだろう。

  谷村 正剛 on 2003/08/26

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