最終更新時刻:2008年10月10日(金) 23時50分

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ハイテク業界の「スチューピッド・カンパニー」

公開日時:
2003/08/22 10:37
著者:
umeda

In Search of Stupidity: Over 20 Years of High-Tech Marketing Disasters」という新刊書に寄せて、Joel Spolskyが書いている文章が面白い。「In Search of Stupidity」には専用サイトがあり、その中でこう書かれているように、

「In 1982 Tom Peters and Robert Waterman kicked off the modern business book era with In Search of Excellence: Lessons from America’s Best-Run Companies. The book was a runaway best seller and soon authors from all corners of business life were exhorting companies and the people who worked in those companies to get out there and be excellent, control chaos, worship wow and grasp greatness.」

「Unfortunately, as time went by it became painfully obvious that many of the companies Peters and Waterman had profiled, particularly the high-tech ones, were something less than excellent. Firms such as Atari, Data General, DEC, IBM, Lanier, NCR, Wang, Xerox and others either crashed and burned or underwent painful and wrenching traumas you would have expected excellent companies to avoid. What went wrong?」

「Merrill R. (Rick) Chapman thinks he has an answer. He believes that high-tech companies periodically meltdown because they fail to learn from the lessons of the past and thus continue to make the same completely avoidable mistakes again and again and again. In Search of Stupidity: Over 20 Years of High-Tech Marketing Disasters chronicles high-tech stupidity from past to the present so that we can all move on to create new and unique catastrophes of our very own in the future.」

この本は、1982年に書かれたベストセラー「In Search of Excellence: Lessons from America’s Best-Run Companies」(邦訳は「エクセレント・カンパニー」)を意識した内容、意識したタイトルになっている。邦訳の仕方まで倣えば、「ステューピッド・カンパニー」だろうか。ハイテクマーケティング世界のバカな失敗の数々の物語が書かれているらしい。なかなか面白そうだ。

ギークとマーケティングの間の埋めようのない溝

では、この本に対する、Joel Spolskyが書いている文章を読んでみよう。

「Please imagine the most stereotypically pale, Jolt-drinking, Chinese-food-eating, video-game-playing, slashdot-reading Linux-command-line-dwelling dork.」

これが、Joelが描く、典型的なギークの描写(青っちろくて、Joltコーラばっかり飲み、中華料理のテイクアウトをいつも食べていて、暇があればゲームをしていて、スラッシュドットを読み、Linuxのコマンドラインの中で暮らしている変わり者)であるが、

「This is what our stereotypical programmer thinks: “Microsoft makes inferior products, but they have superior marketing, so everybody buys their stuff.”」

そういう典型的なプログラマーは、マイクロソフトはひどい製品だけれど、マーケティングが素晴らしかったから、皆が買っているんだ、なんて考えている。

「Ask him what he thinks about the marketing people in his own company. “They’re really stupid. Yesterday I got into a big argument with this stupid sales chick in the break room and after ten minutes it was totally clear that she had no clue what the difference between 802.11a and 802.11b is. Duh!”」

でもその彼に、自分の会社のマーケティングの人についてどう思うか、聞いてごらん。「あいつらはバカだ。昨日、セールスのバカの議論に10分付き合ってよくわかったけど、802.11aと802.11bの区別なんて、あいつら、全くわかってないんだ」

「What do marketing people do, young geek? “I don’t know. They play golf with customers or something, when they’re not making me correct their idiot spec sheets. If it was up to me I’d fire ‘em all.”」

じゃあ、マーケティングの人は何をやっているんだと思う、と尋ねると、「あいつらは客とゴルフでもやっているんだろう。あいつらが作った間違いだらけのスペックシートを俺に直させているとき以外はね。俺に権限があれば全員いますぐクビだ」

ギークとマーケティングの間の埋めようのない深い溝が、実に見事に描写されていると思う。

1984年と2001年のソフトウェアメーカーを比べると

このあと、この文章には、米国ソフトウェアメーカーの1984年のトップ10と、2001年のトップ10が並べて掲載されている。

マイクロソフトの1984年売り上げは、わずか5500万ドルで第2位。しかし、1984年のトップ10のマイクロソフト以外の会社は全部消え去り、2001年のトップ10売り上げの総計の69%はマイクロソフトの売り上げだ。

「The personal computer software market is Microsoft.」

そう、パソコンソフト市場とはマイクロソフトのことなのだ。

「Is this just superior marketing, as our imaginary geek claims? Or the result of an illegal monopoly? (Which begs the question: how did Microsoft get that monopoly? You can’t have it both ways.)」

それが、ギークが言うように、マーケティングが優れていたからだ、とか、不法の独占ゆえということで単純に片付けられると思う?

ここまでが前置き。

マイクロソフトだけが致命的なミスを犯さなかった

「In Search of Stupidity: Over 20 Years of High-Tech Marketing Disasters」は、マイクロソフトについてこう書いている。

「According to Rick Chapman, the answer is simpler: Microsoft was the only company on the list that never made a fatal, stupid mistake.」

マイクロソフトだけが、致命的でバカなミステイクを犯さなかったたった1つの会社だったのである、と。

「But for every other software company that once had market leadership and saw it go down the drain, you can point to one or two giant blunders that steered the boat into an iceberg. Micropro fiddled around rewriting the printer architecture instead of upgrading their flagship product, WordStar. Lotus wasted a year and a half shoehorning 123 to run on 640kb machines; by the time they were done Excel was shipping and 640kb machines were a dim memory. Digital Research wildly overcharged for CP/M-86 and lost a chance to be the de-facto standard for PC operating systems. VisiCorp sued themselves out of existence. Ashton-Tate never missed an opportunity to piss off dBase developers, poisoning the fragile ecology that is so vital to a platform vendor’s success.」

このくだりは、80年代のPC産業勃興期を知っている僕と同世代以上の読者には懐かしいところ。解説は省略。

続けてJoelはこう書く。

「I'm a programmer, of course, so I tend to blame the marketing people for these stupid mistakes. Almost all of them revolve around a failure of non-technical business people to understand basic technology facts.」

自分もプログラマーだから、マーケティングが犯すバカなミステイクを責めがちだ。そういう失敗の大半は、基本的な技術的事実がわからないビジネスピープルゆえの失敗だから。ここではジョン・スカリーとニュートンの失敗が例に挙げられている。

「If you ask me, and I’m biased, no software company can succeed unless there is a programmer at the helm. So far the evidence backs me up. But many of these boneheaded mistakes come from the programmers themselves.」

でも一方、プログラマーサイドがいつも正しいというのも嘘だ。彼らが犯す失敗もけっこうきつい。

「Netscape's monumental decision to rewrite their browser instead of improving the old code base cost them several years of Internet time, during which their market share went from around 90% to about 4%, and this was the programmers’ idea. Of course, the nontechnical and inexperienced management of that company had no idea why this was a bad idea. There are still scads of programmers who defend Netscape’s ground-up rewrite. “The old code really sucked, Joel!” Yeah, uh-huh. Such programmers should be admired for their love of clean code, but they shouldn’t be allowed within 100 feet of any business decisions, since it’s obvious that clean code is more important to them than shipping, uh, software.」

このくだりもおかしい。Netscapeの失敗を、ソフトウェア開発方針の失敗と断じている。クリーンなコードを過度に愛するプログラマーは、ビジネス意思決定の半径100フィート以内に近づけるなと。

この本の結論は、

「you have to have a management team that thoroughly understands and loves programming, but they have to understand and love business, too. Finding a leader with strong aptitude in both dimensions is difficult, but it’s the only way to avoid making one of those fatal mistakes that Rick catalogs lovingly in this book.」

とのこと。シリコンバレーでは、プログラマーとビジネスピープルの対立を「ギーク対スーツ」と表現することが多いが、ギークとスーツの上位に、両方の能力を兼ね備えたマネジメントチームが必要というのが結論。ただ、この結論だけ読むよりも、細部の面白さを満喫すべき本なのだと思う。

ぜひ僕も、この20年間を振り返る意味でも、これからじっくりとこの本を楽しんでみようと思っている。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

1

コンサルタントの山崎です。
この数年間を振り返ると、一番大きな賭けを
技術的な影響度とマーケティング的側面の両方から
アプローチした『米IBMのLinux戦略』があげられる。

当初、メインフレームから、UNIX、PCサーバまでを
同一の製品ライン(zpix)とし、呼び名も『eServer』。
すべての製品でLinux搭載を可能とするものだ。

それまで、米IBMの社内で抱えていた大きな問題があった。
(1)各製品ラインの営業マンが同一顧客企業に各々の製品を提案する。つまり、顧客サイドで社内コンフリクトが勃発していた。
(2)オープンシステムの時代に変わったが、
米IBMは社内に文化(基本ソフト)が異なる4個の
プロダクトを継続サポートしなければならなかった。
反面、当時、ドットコムのSunやオンライン・セーリングのDellの勢いを止めることができなかった。
(3)安価なPCサーバ(Intel/Microsoft Windows)の市場拡大は同社プロダクト影響が時間の問題となった。
(4)HPはサーバ製品をx86、及び、Itanium 2で統一するインテンションを公表していた。
これら課題に対し、IBMが取ったビジネス戦略が
『全サーバラインでLinuxを基本ソフトとする』決定だった。

このプロジェクトを進めるに際し、関係者に聞いた話では、米IBMはIGS(IBM Global Service)によるサービス・ビジネスを拡大して来た経緯があり、
この点が他社との差別化がであると認識。
その後、Linux採用による技術的影響度を社内で評価、社会的影響度やマーケティング側面では、
多くの著名調査会社が同プロジェクトに投入された。
米IBMの本社はニューヨークのアーモンクにあるが、
経営幹部の直下には、『Market Intelligence』と呼ばれる経営戦略、市場動向、製品企画、販売企画、
などを統括する部署があり、所属メンバーは各々、
ハードウェアやソフトウェア、サービス事業所の戦略企画部門と兼任であり、米IBM幹部への戦略提言も
この『Market Intelligence』で実施されるという。
つまり、米IBMにおける『マーケティング』のポジションは日本企業と比較して、とても経営ディシジョンに近いところにある。
さらに注意しなければいけない点として、Big Blueのような巨大な組織にもかかわらず、最近、次々に市場に影響度のあるビジネス戦略(Utility Computing、
Grid Computing,Storage Tank,Websphere v5.0.2,etc.)が競合他社よりも先手でなされている背景には、先行者利益を獲得するため組織内の情報伝達が
高地から落ちる水の如く、とてもシステマティックになっている点だ。ここに、かつてのIBM社内権力争いの姿はほとんど見うけられないという。
つまり、米IBMはガースナー氏の経営刷新後、
経営トップのビジネス戦略は技術面と戦略マーケティング両面で進められ、実施の段はシステマティックに情報伝達され、その途中プロセスでの意思決定が途絶えることなく、しかも、逐次、顧客サイドで起こった結果が迅速に上流へ伝達されるわけだ。

米IBMは昔のBig Blueと異なっている。

  山崎牧雄 on 2003/08/23

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