7月24日(先週木曜日)、iPassが株式公開し、初日の終値が公開価格を33%上回った。
サンノゼマーキュリーニュースの「Networking firm's IPO lures investors」は、
「Technology companies are going public again, and actually making money -- though the bar is higher than it used to be for taking a company public.」
90年代後半のようなわけにはいかないが、またIPOの窓が開き始めたと楽観的な見通しを示した。
期待が膨らむテクノロジー企業のIPO
6月19日の本欄「米国の株式市場に起業家経済復活の兆し」で、FormFactorが株式を公開し、初日終値が公開価格を26%上回ったという話を書いたが、FormFactorとiPassの間の7月17日に、InterVideoのIPOもあった。そして、InterVideoも、初日終値が公開価格を37%上回った。
6月、7月の3つのテクノロジー企業IPOがどれもそこそこの成功を収めたことは、昨日ご紹介したAO100リスト(AlwaysOnが選んだ未公開企業ベスト100、iPassもリストの中に含まれている)などから少しずつ、IPOが後続してくることを意味している。
さてここまではイントロで、今日の主題は、シリコンバレーやIPOの話ではなく、SEC(米国証券取引委員会)のEDGARデータベースについてである。
EDGARデータベースを使ってみよう
公開企業になるということは情報開示が非常に厳しいということを意味しているが、我々潜在的株主は、米国の公開企業について、どのくらい詳細な情報が得られるのかを体感してみることにしよう。公開企業が実際にどのように経営しているかを、彼らの情報開示からきちんと勉強することは意味がある。そこで、SECのEDGARデータベースへのアクセスの仕方と、資料の読み方をご紹介しよう。
たとえば、先週株式公開したiPassを例に取ろう。
カンパニーサーチで、iPassをリストアップすると、たくさんの資料のリストが上がってくる。IPOした会社の場合、Form 424というのが、Prospectus(公開の目論見書)である。
iPassの目論見書はこんなふうになっている。とにかく膨大な情報量であることがわかると思う。
目論見書のチェックポイントはRisk Factor
目論見書で読むべきなのは、Risk Factorである。
つまり、株式公開にあたって、どういうリスクがあるのかを開示している項目を読むことである。このリスク情報開示が半端ではない。iPassの場合も、6ページ目から14ページ目まで、リスク要素の記述に8ページ強を費やしている。
リスク要素は、(1) iPass関連リスク<19項目>、(2) インダストリー全体のリスク<5項目>、(3) この株式公開に関連するリスク<6項目>の計30項目に及んでいる。
たとえば、この目論見書によれば、iPassの事業は、
「We are a global provider of software-enabled enterprise connectivity services for mobile workers. Our primary service offering, iPass Corporate Access, is designed to enable enterprises to provide their employees with secure access from approximately 150 countries to the enterprise’s internal networks through an easy-to-use interface. As opposed to telecommunications companies that own and operate physical networks, we provide our services through a virtual network. Our virtual network is enabled by our software, our scalable network architecture and our relationships with over 200 telecommunications carriers, Internet service providers and other network service providers around the globe.」
と総括されているが、こういう事業に興味のある人にとっては、この目論見書のRisk Factorを全部チェックすると、この業界で事業をやっていく上で押さえておかなければならない注意点がほぼすべて網羅されているので、とても勉強になるのである。
興味のある方は、FormFactorの目論見書、InterVideoの目論見書のRisk Factor項目もあわせてご参照ください。
年度ごと、四半期ごとの報告書も手に入る
SECのEDGARデータベースは、もちろん新規公開企業についての情報だけではない。たとえば、Amazon.com、eBayといったネット勝ち組企業について包括的に調べようと思ったら(Googleは未公開ですから情報はありません)、EDGARのメインページから、Historical EDGAR archivesに行って、年度を指定すれば、その年度のその会社の四半期単位、1年単位の詳細な報告書に簡単にアクセスすることができる。
Form 10-Kというのが、Annual Report(年度末報告書)である。たとえば、Amazonの2002年度10-k(Annual Report、2003年2月19日発表、87ページにも及ぶ) のメインボディはこれである。
さらに、Form 10-Qというのが、四半期ごとの報告書である。第1四半期(1-3月)の報告書が4月後半に出され、第2四半期(4-6月)の報告書は、7月24日にアップされた。四半期単位とはいえ、開示情報の豊富さを感じていただくことができると思う。たとえば興味ある会社の四半期の数字がニュースなどで発表されたら、EDGARに当たって、10-Qを読んでみる、というのも面白い勉強法の1つかと思う。
さて、このHistorical EDGAR archivesでは、1993年から現在に至る公開企業の情報へはすべてアクセスできる。だからインターネット時代が到来した後に公開された企業については、目論見書から、公開以来の10-Qや10-Kまで、読もうと思えば、すべて読むことができる。
eBay(98年)とAmazon(97年)の公開時の目論見書をご紹介しておきますので、公開時に開示していたリスク要素を読み、現在の彼らの姿と見比べてみたらいかがでしょう。
情報自体の付加価値がなくなる時代
僕は、1991年から92年まで、勤めていたコンサルティング会社のサンフランシスコ事務所で、IT産業がこれからどういう方向に向かっていくのかというような研究をしていたのだが、当時、ボストンにある本社の図書館に依頼して、IBMやDECやSunやAppleやIntelやMicrosoftといった会社の10-Kを過去にわたってたくさん取り寄せてもらうのに、大変なコストと時間を費やしたのをよく覚えている。毎日次々に郵送で届いてくるのは、コピーの束であった。
それが今は、世界中のどこからでも、EDGARデータベースに、瞬時に好きなだけ無償でアクセスできる。隔世の感がある。
たった10年の違いだが、情報洪水の度合いがぜんぜん違う。10年前は、たとえそれが公開情報であったにせよ、10-Kやその他の情報に無制限にアクセスできること(大きなコンサルティング会社に勤めていて、本社の図書館スタッフを自由に利用できたこと)に少しは価値が残っていたのだが、今はもうそういうことはほとんどなくなったことを痛感する。情報自身はタダで溢れているので、それをどう読み、どう使い、どう付加価値を生むかのピュアでシンプルな競争になってきたのである。いい時代になったようで、大変な時代だなぁとも思う。
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