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PC技術の構造的転換を示す「遠心力」というキーワード

2003/06/24 10:05
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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IT産業は間違いなく大きな転換点を迎えている。その変化していく先の姿をできるだけ正確に描こうとする試みを、この連載ではできるだけご紹介しようとしている。

次代を語るためにDecentralizationというキーワードが適切なのか、それともPC産業の歴史に照らして「ネットブーム第2幕」が始まるととらえたほうがいいのかという議論については、「歴史は繰り返すか?ネットブーム第2幕でIT産業の構造が変わる」で今月初めにご紹介した。

今日のコラムは、Arnold Klingの「The Centrifuge Moves You」。

彼がひねり出してきたキーワードは、遠心力(centrifugal force)である。

今はPCの構造的転換点

「The wireless revolution is creating a centrifugal force. Before the advent of protocols like Bluetooth and Wi-Fi, information technology was dominated by centripetal forces, which drove everything closer to the central personal computing device. Now, we have centrifugal forces, which are pulling the personal computer apart.」

求心力(centripetal force)に支配されてきたこれまでのIT産業。すべてのものを中央のpersonal computing deviceに近づけようとするのが求心力なのに対して、ワイヤレス革命がもたらすのは遠心力。PCをバラバラにしていく方向に働く力のことである。

だから、このコラムの冒頭の文章は、

「The information technology industry is undergoing its most fundamental transformation in almost 25 years. The personal computer, which was at the heart of the last major transformation, is disintegrating. The future looks very different from the recent past.」

1つ前の産業構造転換をもたらした心臓部であるPCがdisintegrateされる新時代だから、25年ぶりの産業構造転換だというわけ。

彼の論旨をじっくりと追いかけてみることにしよう。

「One way to describe what is happening is that inventors are finding ways to pull apart the components of the personal computer and re-assemble them in different ways.」

PCのコンポーネントを1回バラバラにして、別のやり方でre-assembleする試みとして、iPodをはじめとする様々な製品を位置づける。そして象徴的な事例として、インテルが開発中のWireless Pocket serverを紹介している。

「The personal server mounts on any PC that can recognize wireless devices: 'Any computer becomes your computer,' said Want."」

このWireless Pocket Serverを持っていれば、ワイヤレスデバイスを認識するPCは、すべてあなたのPCになってしまう。

「Back in the 20th century, the imperative of personal computing was integration. We needed a display, input devices, mouse, processor, modem, and storage media in a single machine. Above all, we needed software to assemble these parts into a functional whole. Peripherals were built under the assumption that they would be physically connected to the main hardware.」

PC時代のルールはintegration。つまり、ありとあらゆるコンポーネントを1つのPCの中にintegrateしたから、それらを機能させるためのソフトも必要だった。周辺機器はPCと物理的に接続するという前提条件で作られていた。

「Today, we are seeing the outlines of a different design strategy. Wireless radio signals can provide the digital connection between devices. Instead of assuming that your device is designed to attach to a standard personal computer, you can be relatively agnostic about what other types of devices your gadget might encounter.」

この文章のキーワードは、different design strategyというところだろう。PC周りのコンポーネントや機器の設計戦略が変わることが強調されている。

遠心力がもたらす3つのインパクト

そして、彼は、この遠心力のもたらすインパクトを、3つの対立軸で議論する。

(1) Transactions vs. Documents
(2) Hardware vs. Software
(3) Bureaucracy vs. Ad Hocracy

である。

第1の「Transactions vs. Documents」は、

「The personal computer was designed by researchers at Xerox, and its evolution was driven by document production. Word processing, spreadsheets, and graphics software were designed primarily to produce documents, particularly for business meetings and presentations. The "paperless office" turned out to be a cruel joke.」

PC時代というのは何だかんだ言っても、ワープロ、スプレッドシート、グラフィックソフトウェアといったキラーアプリは、文書を作るための機能が大半であった。だからペーパーレスオフィスなんて実現しなかった。でも遠心力が働く世界だと、DocumentよりもTransactionのほうへ力点が移動する。

第2の「Hardware vs. Software」は、

「For the usual personal computer applications, the user experience is determined primarily by software. The hardware was commoditized. With the centrifugal trend toward separate components, the software can be simpler, because the devices are more specialized, with much of the user interface embedded in the hardware. In fact, to the extent that communication among disparate devices requires clearly-articulated standards, it is the software that will be commoditized.」

PC時代はハードウェアがコモディティ化してしまったが、遠心力が働く新しい時代は、ソフトウェアがコモディティ化する番だ。

第3の「Bureaucracy vs. Ad Hocracy」は、

「Compared with the mainframe, the personal computer fosters decentralization. Nonetheless, it still wound up being a tool for paper-pushers. A depressing amount of the output of the PC consists of presentations delivered to committees. The transaction-focused era of mobile computing will be less oriented toward fixed committees. Instead, particularly as social software evolves, we will see teams that form quickly, accomplish a task, and then dissolve.」

PCで紙を大量に作り出してそれを会議に上げて決済を受けて、みたいな仕事の仕方から、ソーシャルソフトウェア的な世界の進化もあいまって、チームが迅速に動いてどんどん仕事を片付けていくようなスタイルに変わっていくだろう。

日本での議論とも似ているが・・・

ここまで読んで、「何だ、これはユビキタスについて日本で語られている話に似ているではないか」と思った人も居るかもしれない。

そういう人は、ぜひこの文章の原文に当たって、なるほどこういう英語を使って、こういう論理を展開すると、アメリカ人には理解されやすいのかということを実感してもらえたらよいと思う。こういう文章を暗記して頭の引き出しに入れておくと、日本企業の先端技術や、日本発の面白いハードウェアやガジェットの話をするときに、なかなか奥行きの深い議論ができるのである。この文章の一部を使いながら、日本発の先端技術の例をちりばめたら、かなりレベルの高いIT産業のアメリカ人から、「うーん、面白い!!!」と言われること請け合いである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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