お使いのブラウザは最新版ではありません。最新のブラウザでご覧ください。

CNET Japan ブログ

ピープルソフトの取締役は「最も誰からも羨ましがられない仕事」

2003/06/23 10:05
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
ブログ管理

最近のエントリー

 オラクルによるピープルソフト敵対的買収提案から2週間、予想通り、もめにもめている。

そんな中、「最も誰からも羨ましがられない仕事」(most unenviable job)が、ピープルソフトの取締役たちである。

サンノゼ・マーキュリー・ニュースの「PeopleSoft board faces tough call」を読んでみよう。これを読んでから、CNET Japanのオラクル・ピープルソフト買収関連記事を追っていくと、今起きている現実について、アメリカの会社のコーポレート・ガバナンスについて(会社は誰のものかについて)の理解が深まるであろう。

オラクルによる敵対的買収

ご承知のように、6月6日、オラクルは敵対買収を仕掛け、6月12日、ピープルソフトは敵対的買収を正式拒否した

拒絶の理由は、独禁法に触れるのではないかという話と、買収提案価格が安すぎるという2点であった。

そこで、6月18日、オラクルは買収価格を、51億ドル(16ドル/株)から63億ドル(19.5ドル/株)に引き上げた

この間にいくつもの訴訟が起こっている。さてこれから、どういうプロセスで物事が進んでいくのか。

米国流のコーポレート・ガバナンス

カギを握るのがピープルソフト取締役会であり、取締役たちは、ピープルソフト株主の利益を損なわないような正当な判断をすることを求められているのだ。

このサンノゼ・マーキュリーの記事のタイトルは「PeopleSoft board faces tough call」。Tough callというのは、たとえば野球で、審判がセーフかアウトか、ほとんど同時だったときに難しい判定を下すようなときに使う言葉。

「PeopleSoft's board members have the legal duty to evaluate the Oracle bid, which Oracle raised by 22 percent Wednesday, and act in the best interests of shareholders, even if it means being acquired by their bitter cross-bay software rival.」

ピープルソフト取締役会は、63億ドルに引き上げられたオラクルからの買収提案を、株主の利益という観点から評価する法的責任を持っている。

「``The crux of the legal battle is, at what point do the directors have an obligation to drop'' their opposition ``and allow the shareholders to take the premium offer by Oracle?''」

これはロイヤーの発言だが、法的に見た最大の難所は、「どの時点で取締役が買収反対を取り下げて、株主にオラクルからのPremium offerを自由に受けられるようにさせる義務が生じるか」にある。この買収提案がピープルソフト経営陣にとっていかに嫌でも、ピープルソフト株主にとっては短期的に見て朗報である。

だからその権利を妨害してまで、自らの好悪の感情に流されて反対を言い続けることは、法的に許されない、ということなのである。

「``They are asking themselves, `What is the magic number? At what point can't we turn it down?' ''」

ここで言うマジックナンバーというのは、この数字をオラクルが出してきたら、もうノーとは言えない、という数字のことだ。その数字が、今、取締役たちの頭の中を駆け巡っている。

「Sometimes, however, courts have supported boards that have rejected a high offer that it believed would not benefit shareholders over the long term.」

もちろん、どんな買収提案が大きくなっても、長期的に見た株主にとっての利益にならないから反対したのだ、という論理が法廷で受け入れられることはある。ただ、そこでも客観的な評価に耐えうる論理がなければならない。

以上は、米国のコーポレートガバナンスに詳しい方にとっては自明の話なのではあるが、とかく、日本企業の経営のイメージを頭に置きながらこの敵対買収関連記事を読むと、どうしても「株主の利益という観点からの客観性」という視点が抜け落ちがちになるので、簡単に解説した次第である。

ピープルソフトの取締役の素顔

さて、ではその7人の取締役とは、どんな人々なのか。

まずは創業者である会長、David Duffield。1987年にピープルソフトを創業。もちろんビリオネア。

「Today, he dabbles in Lake Tahoe real estate and lives in a $10 million, 15,000-square-foot estate on the Nevada side of the lake.」

レイクタホというスキー場で有名なリゾート地に、12億円くらいの価値の、約1500平米の敷地の家を買って住んでいる。ビリオネアがどういうところに住むかというのは、価値観が垣間見えて面白い。僕の勝手な個人的感想で言えば、彼は、持っている資産に比べるとごく普通の家に住んでいる。

「In 1999, Duffield hired outsider Craig Conway to revive the company, which had been struggling after pioneering the market for human resources software. Duffield remains chairman of the board and still owns 9.2 percent of the company.」

1999年に、アウトサイダーのCraig Conway(現CEO)を雇ったが、会長として残り、9.2%の株式を保有している。CEOは外様。そして、63億ドルの買収提案ということは、彼にとっては5億8000万ドル、つまり約700億円くらいの価値の買収提案だということだ。

「Duffield established Maddie's Fund, a $200 million foundation devoted to rescuing dogs and cats that was named for his miniature schnauzer.」

犬と猫のレスキューのためのファンド設立に、私財を2億ドル投じた人でもある。

そしてCEOのCraig Conwayは、この買収提案に激怒して、オラクルに対して「極悪非道」という言葉を使った感想を言い話題となったが、元オラクルの人で、ラリー・エリソンとは犬猿の仲。オラクル買収反対の急先鋒は彼である。

「But pressure increases on Duffield and the rest of the board every time Oracle raises its bid, as it did Wednesday. Who will they eventually side with, Conway or shareholders?」

だから、オラクルが買収額を吊り上げるに従って、「Conwayにつくか(つまり反対)、株主につくか(つまり賛成)」をそれぞれの取締役が判断するプレッシャーは高まっていくのである。

ちなみに、他の5人の取締役は、皆、社外取締役である。比較的高齢の裕福でリタイアした人たちが多い。

オラクルによる敵対的買収は成立するか

この記事が書かれた直後の先週金曜日(20日)、ピープルソフトの取締役会は、オラクルの新しい条件での買収提案を蹴った

理由は、前回とほぼ同様。買収提案が安すぎるということに加えて、独禁法に引っかかることによって買収そのものが頓挫する可能性も含め、この買収のプロセスで事業が停滞することは、長期的に見てピープルソフトの株主にとってプラスにならない、という論理を展開している。オラクル側は、ピープルソフトは経営陣の利害で買収拒否をしているのであって、株主のほうを向いていないと反論
する。

金曜日(20日)のピープルソフトの終値は、17.42ドル。現時点で、オラクル提案は、12%のプレミアムがついている計算になる。

さて、読者の皆さんは、この敵対的買収が成立すると思いますか?

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
運営事務局に問題を報告

最新ブログエントリー

個人情報保護方針
利用規約
訂正
広告について
運営会社