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利益が出ている会社がなぜ「生ける屍」なのか

2003/06/18 10:05
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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ソフトウェア・スタートアップはベンチャーキャピタルから資金調達すべきか否か。

「すべきでない」という意見を持つJoel Spolsky(Fog Creek Software創業者)の「Fixing Venture Capital」をまず読み、それからベンチャーキャピタリスト側の意見・感想に耳を傾けてみることにしよう。

「When people ask me if they should seek venture capital for their software startups, I usually say no. At Fog Creek Software, we have never looked for venture capital. Here's why.」

Joelの基本的立場は「ソフトウェア・スタートアップはベンチャーキャピタルから資金調達すべきでない」である。

「大成功」でないとベンチャーキャピタルは満足しない

「The fundamental reason is that VCs do not have goals that are aligned with the goals of the company founders. This creates a built-in source of stress in the relationship. Specifically, founders would prefer reasonable success with high probability, while VCs are looking for fantastic hit-it-out-of-the-ballpark success with low probability.」

その根本的理由は、VCとスタートアップ創業者のゴールが違うから折り合いがつかず、両者の関係は緊張したものになる。創業者は、そこそこの成功でよいからその成功確率を高めたいと考えるのに対して、VCは成功確率が低くてもいいから大成功を、と期待するものだからだ、とJoelは言う。

VCはそういう賭けをたくさん打つ存在であり、スタートアップ創業者は1つのことに賭ける存在だから、こういう違いが出る。

「The difference in goals means that VCs are always going to want their companies to do risky things.」

VCは、投資先企業に、成長のための勝負をするよう迫る。つまり、リスキーなことをさせる。そのために投資しているわけだから。

「There's nothing controversial here. A VC would say, "that's what VC is for: investing in risky ideas." Fair enough. As long as the entrepreneur wants to take a 10% chance, VC may be the way to go.」

Joelは、創業者も10%の成功確率でよいから勝負をと考えるならばよいが、VCからの資金を調達しなくても、もっとコンサーバティブにゆっくりと会社を成長させていく道がある、という。

ソフトウェア企業の成長を測る4つのカーブ

横軸に時間軸をとり、縦軸に、売上高、従業員数、製品の知名度、コード(プログラム)の質の4つのカーブを描くとすれば、それらは、ほとんど同じ軌跡をたどる必要がある。これがJoelのいう成長の法則だ。

(1) 売り上げの成長が従業員の成長よりも速くなれば、人が足りなくて顧客サービスが適切でなくなる。(2)従業員の成長よりも売り上げの成長が遅ければ、経費がかかり過ぎて会社は立ち行かなくなる。(3)製品の知名度ばかりが上がってもコードの質が追いつかなければ、信用を失う。いったんこれをやると後からいくらコードを良くしてもダメ。これをマリンバ現象と彼は言う。(懐かしいなぁ、マリンバなんて)。

「Employees grows faster than code: Result: too many cooks working on code in the early days causes bad architecture. Software development works best when a single person creates the overall architecture and only later parcels out modules to different developers.」

そして、(4)ソフトウェア開発は、1人が全体のアーキテクチャを作るのがベストなので、それができるまでに従業員を増やして、大勢でコードを書き始めるとひどいアーキテクチャになってしまう。

その他、挙げれば色々あるが、この4つのカーブがシンクロナイズすることが重要ということだ。

「A small company growing at a natural pace has a reasonable chance of keeping these things in balance.」

このバランスをうまく取りながらゆったりとしたペースで成長させることは十分可能なのに、VCは急成長させてEXITしたいから、こういう成長を嫌がる。

「VCs try to speed things up by spending more money. They spend it on PR, and then you get problem 3 ("PR grows faster than code"). They spend it on employees, and then you get problem 4 ("too many cooks") and problem 2 ("high burn rate").」

VCはカネで時間を買うということで、物事をスピードアップさせるためにカネを使えというが、そうなると、(3)(4)(2)の問題の連鎖が起こる。

VC投資が必要ないのは限定的な場合だけ

では、これに対するベンチャーキャピタル側の意見・感想はどうか。August Capitalの「Don't Take the Money」では、ソフトウェア・スタートアップにいくつかの条件が揃っている場合のみ、VCからの投資は不要なのだという意見だ。

「If a company is on a steady organic growth track, can finance product development out of revenues, isn't involved in a highly competitive market where the first mover can achieve significant lock-in, and doesn't have a high-risk, high-return profile, it has no need for venture financing.」

その条件とは、(1)その会社が着実で地道な成長軌道を描き、(2)製品開発費を売り上げから賄うことができ、(3)最初に一気に動いた会社が総取りしてしまうような競争の激しい市場とは関わり合いがなく、(4)つまりハイリスク・ハイリターン型の事業ではない、という場合、VCからの資金調達は要らない。

「As Joel acknowledges, his advice to entrepreneurs largely only applies to software/web companies, and only those that can be bootstrapped. Venture capital is often required for software that has to (be) developed on a rapid schedule to keep up with changing hardware, or requires an expensive direct sales channel, or is competing in an application with strong first-mover advantages and network effects. In some cases, entrepreneurs like to involve experienced venture investors simply for corporate oversight and advice.」

Joelのアドバイスは、某かの理由で会社を独力で立ち上げることができたソフトウェア、ウェブ会社にのみ適用できるものだ。

Joelの論考も、Augustの意見・感想も、さまざまな話題についての議論を展開しているが、その部分は興味のある方は原文を当たってください。

儲かるだけの企業では「生ける屍」になってしまう世界

ところで僕は、97年にMUSE Associatesというコンサルティング会社をシリコンバレーで創業したが、この会社の成長過程は、Joelのソフトウェア会社の成長過程そのものである。ブートストラップは自己資金ですべてまかない、売り上げが立つようになってから、そのカネで人を雇って仕事を増やすというやり方で、Organic Growthを追求してきた。VCを含め第三者からの資金調達は全く考えなかったし、それは正しかった。

2000年にPacifica Fundというベンチャーキャピタルも始めたので、両方の立場がよくわかるのだが、VCは自分たちが投資した会社が、MUSE Associatesのような「きちんと利益は出して経営しているが、事業規模が小さく、経営者があまり成長を指向していない」会社になると、弱り果ててしまうのだ。EXITができず、投資した資金が、機関投資家と約束した7年とか10年といった期間内で現金化することができないからだ。だから、VCは、投資対象企業がそうなってしまうと、リビング・デッド(生ける屍)と呼ぶ。この言葉の意味を知ったとき、僕は、自分の大切な会社(それもそこそこうまくいって満足している会社)が、VC業界からは「生ける屍」なんて呼ばれるのかと、けっこうショックを受けたのを記憶している。

これから起業する人たちへの教訓は、起業家は、自分が始める事業の性格と、調達する資金の性格を、うまく合致させる必要があるということなのである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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