6月19日(先週木曜日)、Formfactorが株式を公開、公開価格14ドルに対して、初日の終値は17.58ドル。1日で26%上昇した。
これをもって「IPOの窓が開いた」とまではまだ言えないが、シリコンバレー経済が底を打ち、これからが楽しみになってきたことを如実に示す明るいニュースである。特に、公開価格を初日終値が上回るというのは重要なサイン。
起業家経済のキャピタル・シリコンバレーにとっては、株式公開という窓がきちんと開いていてくれることが大切なのである。
普通の規模の株式公開が続いていくことが重要
Googleのような「十年に一度」の怪物の場合は、株式公開直後の時価総額が数千億円規模となるが、普通の株式公開の場合は、その規模は一桁小さく、Formfactorの場合も、初日終値の段階での時価総額は、5.9億ドル。つまり、700億円程度である。
産業全体にとっては、Googleのような怪物が株式公開して話題を集める以上に、こういう普通の株式公開が、日常的に淡々と行われていくことが、とても重要なのだ。
サンノゼ・マーキュリー・ニュースの「Year's first tech IPO starts strong」によれば、Formfactorの直近四半期の売り上げは1870万ドル。純利益は69万ドル。この四半期数字を単純に4倍し、少しの成長を加味してざっくり言えば、年間売上高100億円、純利益が4億円くらいの会社であると思えばいい。
Formfactorには日本語のサイトもあるので、詳しくはそちらをご参照いただければよいが、半導体製造ラインの最後の工程(テスト)で使われるウェハープローブカードという製品の会社である。巨大ではないが堅実、爆発的ではないがそこそこには成長性のあるニッチ市場で、きちんとした技術をもってきちんとした事業を展開し、売上高を100億円にして利益を出すと、時価総額が500億円から1000億円程度だと少し高過ぎるとしても数百億円規模で株式公開ができる、というのは、美しい姿なのである。
約2年前、2001年5月14日号の日経ビジネスに「米シリコンバレーの傷みは深刻、バブル期投資10兆円の後始末を」という文章を書いたが、その中で、
「未公開ベンチャーの企業価値は「頂上の高さ(公開直後または自社株売却直後の企業価値)」をまずイメージし、「今はその何合目にいるのか(進捗度合い)」を判断し、その2つの要素を掛け合わせて算定する。
だから「頂上の高さ」への期待が青天井に上がり、「進捗度合い」への判断も甘くなっていたバブル絶頂期(1998年末から2000年初頭)には、未公開ベンチャーの企業価値が信じられないほど暴騰していた。それが今は暴落し、ピーク時の2分の1から、場合によっては10分の1近くにまで下がっている。」
と書いた。
このFormfactor株式公開の意義は、未公開段階のベンチャーの時価総額を考える上での、バブル期にめちゃくちゃになってしまった「頂上の高さ(公開直後または自社株売却直後の企業価値)」が、もう一度きちんと再設定されたということなのである。そして、初日終値が公開価格を上回ったということは、その再設定を市場が受容したということなのである。
復活プロセスの4分の3を終了したシリコンバレー
同じ文章の中で、僕は、シリコンバレー復活までの道のりを、4段階のプロセスとして提示した。
「(1)バブル絶頂期に行われたこの10兆円投資の後始末がきちんと迅速に行われ(投資家は損を確定し、破綻ベンチャーは整理し)、(2)残すことに決めて追加投資を行った筋の良いベンチャーが順調に成長して企業価値を高め、(3)それを見た株式市場がIPOの道を再び開き、(4)これから新しく生まれる本物の技術ベンチャーへの投資にもカネがきちんと流れる――という4段階のプロセスが回って初めて、シリコンバレーは本当に復活する。バブルの後始末の泥沼に陥って活力を失わぬよう、すべての関係者が大胆で真摯な努力を続けていくことが、今求められているのである。」
このすべてが完了したとはまだ言えないが、Formfactor株式公開は、このプロセスの(1)(2)(3)までがある種の廻り方をしていることを意味している。
そして(4)はどうかといえば、2003年になって、VC側に新しい会社へ再びどんどん投資しようという機運が生まれている。
興味のある方は、同じくサンノゼ・マーキュリー・ニュースの「Chasing innovation」を読んでみてください。VCたちが、ある有望ベンチャーをめぐって「投資させてください」競争を繰り広げたという話である。
さぁ、またこれから、忙しくなるなぁ。
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