偶然が重なったのであろうが、先週は、M&Aディールが次々と話題になった週となった。
そこで先週を振り返って書かれたのが、サンノゼ・マーキュリー・ニュースの「Deal-making on rise in tech industry」である。書き出しは、「Goodbye, IPO. Hello, M&A.」で始まっている。月曜日(6月2日)には「ピープルソフトによるJ.D. Edwards買収発表」があり、水曜日(6月4日)には「PalmによるHandspring買収発表」があり、金曜日(6月6日)には「オラクルによるピープルソフト敵対買収提案」があった。
IT企業の再編はこれから本格化
「The last week has seen a spectacular string of proposed mergers and acquisitions that observers say is just the start of what is expected to be a period of rapid consolidation in the technology industry.」
でも、これはほんの始まりで、これからテクノロジー産業がどんどんconsolidateしていくという期待が表明されている。期待という意味は、米国は、とにかく産業構造がガラガラと変わっていくことを是とするからである。だからディールが動き出したことと呼応して、株価も上昇傾向を示している。
「Executives at large tech companies are increasingly accepting that the era of rocketing revenue growth may be over as the industry matures. Using their piles of cash, they're hunting for small and mid-size companies that will get them instant entry into new markets and access to new customers.」
オラクルのような巨大テクノロジー企業はキャッシュを潤沢に持っているので、そのキャッシュを使って、「small and mid-size companies」を買い集めにいっているわけだ。
「At the same time, many of these smaller players either have woeful stock prices or are running short of venture capital. With IPOs no longer an option and big corporate customers reluctant to buy products from shaky upstarts, their best bet to secure their financial future is to be bought by a Cisco Systems or Microsoft.」
そして同時に被買収サイドも、買収されたいと思っているから思惑が一致する。
「``The IPO windows are not going to open like they did before,'' said Ron Lissak, managing partner for Catapult Advisors, a San Francisco investment bank. ``So you're going to see a huge wave of consolidation.''」
IPOではなくて、M&Aによって、市場に滞留するEXIT願望者(株価が低迷して成長可能性が少なくなってきた公開企業、未公開で頑張ってサバイブしてきたベンチャー、そういった企業群の株式を持っている人たち)の期待が叶えられていくというのは、大筋、そういう方向であろうと思う。
本欄6月2日の「歴史は繰り返すか?ネットブーム第2幕でIT産業の構造が変わる」でご紹介した、ネットブーム第1幕、第2幕の定義を借用すれば、1994年に始まったネットブーム第1幕の最後の仕上げが、このM&Aによって行なわれ、それが一巡すると同時に、ネットブーム第2幕が幕を開けるのだろうと思う。
米国のIT企業は永続性を前提としない
ご承知のように、IT産業というのは、もの凄いスピードで進化している。
そういう構造を宿命的に持ったIT産業における企業とは、永続するものではなく、より短期的な「プロジェクトのようなもの」、というドライな割り切り方が、米国にはある。特に1970年代半ば以降に生まれた企業群には、そういう感覚が根強いと思う。
「企業はプロジェクト」なのだから、買収によってプロジェクトが終われば、プロジェクト・メンバーは解散である。
日本にはこの感覚が全くない。企業は共同体であってプロジェクトではないからだ。とにかく永続しなければならない。
いい悪い、好き嫌いの問題ではなく、この違いを把握した上で、どう考えるのか、というのが、とても重要である。
この激しいIT産業を生き抜く上で、プロジェクト的アプローチと共同体的アプローチの、どちらが優れているというものではない。
ただ、1つだけ言えることは、米国の流儀のほうが、シンプルに経営ができるということである。
日本企業が、そのシンプルな米国流を否定し、複雑で難しい共同体アプローチを取って、なおグローバル競争に勝つためには、米国企業の経営者よりも複雑で難しい課題に自分たちは直面しているのだ、という心構えが必要になる。もっと単純にいえば、日本企業の経営者には、米国企業の経営者以上の能力が要求されているのである。
しかしその認識と自覚が、日本企業の経営者にはない。このことこそが、日本のIT企業低迷の根源的理由なのである。
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IT産業に身を置く者にとっては非常に重たい命題です。経営者ではない我々がやるべきことは、ある領域において非常に強い技術・商品を持つこと(非常に強い顧客基盤を持つこと)ではないでしょうか?会社がプロジェクト単位にバラバラになったとしても、単独で勝てるようにするか、どこかに高く買って貰えるようにするかが、経営者ではない我々(40代)に課せられた目標のように思えます。
経営スタッフである私には、梅田さんが提示されている命題に対して答えを出すべき経営者をサポートするというもう1つ別のミッションもありますが。