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ハイテク業界の再編を予想して投資活動を活発化させるバイアウト・ファンド

2003/06/05 09:10
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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Nasdaqが久しぶりに上昇傾向を示している。5月末の数字は1595.91。微増ではあるが4カ月連続のアップ(1月末1320、2月末1337、3月末1341、4月末1464)は、バブル絶頂期の90年代後半以来のことである。

ただ、IT産業の構造変化期において株価の推移を予測することは難しい。単に景気がよくなるから株価が上がるという単純な構図ではなく、景気が戻ったところで本格的な構造変化が起きるからである。

今日は、「Where the Smart Money Is Flowing」という、Fortune誌の記事をご紹介しよう。テーマは、シリコンバレーで最も注目される投資ファンド、シルバーレイクパートナーズについてである。豊富な取材に基づいて書かれた内容の記事なので、こういう領域に関心のある方にとっては一読の価値がある。

僕がシルバーレイクに始めて興味を持ったのは、1999年9月に同じくFortune誌に書かれた記事「The deal of the next century」がきっかけだった。PDFファイルだが、これも原文にあたることができる。

バブルの絶頂期、多くの有力ベンチャーキャピタルが1000億円単位の資金調達をしてメガファンド化していった時期に、シルバーレイクは、テクノロジー企業を対象としたバイアウト・ファンドをスタートさせ20億ドル以上を調達した。

逆張りの手法で攻めるバイアウト・ファンド

「The Silver Lake partners are wagering on a whole new way to invest in infotech - the biggest, baddest LBO fund ever to hit Silicon Valley. They've raised more than $2 billion in a matter of months. Can they make it work?」

バイアウト・ファンドというのは、市場でつく企業価値が企業の実態以上に高い「ホットと認識されている産業」に対しては、有効にワークしない。つまり、将来の成長を期待して高値がつくテクノロジー産業はバイアウト・ファンドの対象外というのが常識だったから、彼らの逆張りが話題になったわけだ。

さて、今日ご紹介する新しいFortune記事「Where the Smart Money Is Flowing」は、しばらく投資をストップしていたシルバーレイクが最近活発に投資を始めたという話から始まっている。

「Silver Lake made nine investments, totaling $1.3 billion, between its founding in mid-1999 and early 2001. And then it stopped. That's right. Even as stock prices were collapsing, presumably creating attractive buying opportunities, Silver Lake tended to its existing portfolio and otherwise sat on its hands. But early this year it ratcheted up the investment machine again. First it took a $200 million stake in contract manufacturer Flextronics. Then it bought $177 million of public debt in bankrupt telephone carrier WorldCom (more on these bets later).」

シルバーレイクは、1999年に調達した資金のうち、13億ドルを、1999年半ばから2001年初頭までに投資したが、そこで投資をストップ。でも、今年に入って、2億ドルをEMSのフレクトロニクスへ、1億7700万ドルを倒産したワールドコムのpublic debtに投資した。

経営統合がおきそうな分野のお買い得物件を探す

彼らの現在の投資方針を一言で言うと、

「Today Silver Lake is scouring the tech landscape for new investments, especially in areas ripe for consolidation such as software, services, and telecom.」

となる。ソフト、サービス、テレコム産業において、合併や買収によってconsolidationが起こりそうな物件の中で、その価値に比べて値段が安いと判断したときに投資するというわけだ。

6月2日に、PeopleSoftによる17億ドルでのJ.D. Edwards買収が報道されたが、「in areas ripe for consolidation such as software, services, and telecom」、まさにこういうことがこれから次々と起こるであろうと読んでの投資戦略なのである。

では、なぜ今年に入ってから投資を再び活発化させたのか。

「So why invest now? McNamee offers three reasons. First, tech stocks appear to be priced about right. With the Nasdaq recently at 1500--down some 70% from its March 2000 peak--the bust survivors are far less expensive than they used to be. More important, he says, the intelligence from Silver Lake's portfolio companies--most notably Seagate, the disk-drive maker it took private in 2000 and public again in December--suggests that things have stopped getting worse for market leaders. And if you believe, as Silver Lake's partners do, that the exuberance that drove up tech stocks now is working in reverse, things begin to seem pretty good. "People dramatically overinvested on Y2K," says Davidson. "Now people are saying they'll never invest in technology again. That's just crazy. It's silly to think businesses won't want to differentiate themselves. And technology is the way to do that."」

Nasdaqの1500という数字はだいたい正しいのではないか、ピーク時からは70%ダウンで、十分に調整が完了したという認識が背景にある。そして今は、90年代のバブル時と全く逆の心理的冷え込みがあって、テクノロジーへの投資は2度としない、なんて言っている人が多いが、それはおかしい、企業が自らを差別化することを望まないなんてことはありえないんだし、だとすればITによってその差別化は実現されるわけだから。

アメリカ全体の景気はともかく、テクノロジー産業については2002年の末くらいで底を打った、という認識は、僕も含め、シリコンバレーにおいては常識に近くなっている。むろんだからといってNasdaqがまたぐんぐん上がっていくかといえば、そう簡単な話ではないわけだが。

さて、この記事では、「99年から2001年初頭までに投資した13億ドルのうち最大の投資」つまりHDDメーカーのシーゲートを非公開化するために行なった投資について詳述している。それについては去年書いた「今こそ上場の意味を問い直せ」(日経ビジネス7月22日号)も合わせてご参照ください。実際には、シーゲートは2002年12月に再公開し、シルバーレイクは、そのトランザクションで上場益を得た。

最近のフレクトロニクスへの投資については、こんな解説がある。

「Silver Lake bought $200 million in convertible debt in Flextronics in February. Shares of all contract manufacturers are down, a result of industry overcapacity and slowdowns by buyers. Flextronics' big customers include Cisco and Hewlett-Packard, and Silver Lake figures that if it's right about a turnaround, market leader Flextronics is a bargain at the bottom of a cycle.」

バブル期に脚光を浴びたEMSもここ数年、苦しみ続けた。苦しんで いる間に、株価は暴落した。シルバーレイクは、EMS界のリーダーの1つ、フレクトロニクスについている企業価値が、実態価値よりも安くなっていると判断して投資したわけである。

シルバーレイクの投資についての個別のより詳しい話は、ぜひ原文をあたってください。

シルバーレイクに見るプロ中のプロによるチームプレー

さて最後に、このシルバーレイクのパートナーたちを描写している部分が面白かったので、そこを引用しておこう。「プロ中のプロを集めて、それぞれが役割を分担しながら大きな仕事をする」というのは、シリコンバレーの仕事の文化において最もすぐれた部分だと思うが、そのいい例が現れている。

「The partners quickly assumed roles they continue to play: McNamee the visionary and idea man; Roux the operations guru, portfolio company coach, and firefighter; Davidson the Silicon Valley financial expert; and Hutchins the architect of LBOs and other complex instruments tech investors typically don't touch.」

ドリームチームと呼ばれる4人のうち、McNameeは「visionary and idea man」。彼がビジョナリー。司令塔である。Rouxは「operations guru, portfolio company coach, and firefighter」。つまり投資先の経営オペレーションの鬼である。投資先を指導し、何かあればすぐに火消しに駆けつける。Davidsonは、「Silicon Valley financial expert」。数字にめちゃくちゃ強いCFO。そしてHutchinsは「architect of LBOs and other complex instruments tech investors typically don't touch」。バイアウトは通常のベンチャーキャピタル投資などに比べてものすごく複雑な構造をしているので、その投資スキームの全体アーキテクチャをデザインするプロということである。

こういう連中が何を考え、どこに投資しようとしているのかというのは、これからのIT産業を考える上で、貴重な情報なのである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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