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ジョブズとビジネス、2つの視点からAppleのiTunesを見る

2003/06/04 09:30
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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アップルがiTunesサービスを開始(4月28日)して1カ月が経過した。このサービス事業の今後や成否はともかく、アップルは再び「時代の旬」を生きる企業になった。iTunesに刺激されて書かれた論考は、大きくは2つに分かれる。1つは、IT産業界の大物たちが「やっぱりジョブズは偉いなぁ、アップルは凄いよな」と脱帽しつつ称賛と期待を表明するもの。もう1つが、iTunesをきっかけとした新しい音楽配信事業の波やそれに付随する新しい事業モデルについて考察するものである。

まずは前者から。Fortune誌のStewart Alsopのコラム「I've Bitten the Apple: Steve Jobs Keeps Rocking My World」を読んでみよう。軽い読み物なので、解説はポイントだけにしておく。

Alsopは、まずコラムの冒頭では、僕が本欄でTiVoについて取り上げた「AppleはTiVoを買収してパーソナルビデオレコーダーに参入するか」で参照したJohn Battelleのコラムに噛み付いているが、それについては省略。

AlsopがジェネラルパートナーをつとめるNEA(ベンチャーキャピタル)はTiVoの最大株主であること、Stewart自身も億単位の自分のカネをTiVoに突っ込んでいることだけをここに付記しておこう。

Pixarの成功をなぞるiTunesの立ち上げ

Alsopの論点でいちばん面白いのは、今回のiTunesサービスを、ジョブズのPixarにおける成功と併置していることだ。

「In the past month Jobs has unveiled the iTunes Music Store with Apple and Finding Nemo with Pixar. The music initiative required Jobs' visionary personality to get the record labels over their deep fears of distributing music online. At the same time Jobs' vision of making popular movies has been so successful that Pixar is now in a position tonegotiate mano a mano with Walt Disney Co., which is worth more than ten times as much and generates 100 times as much revenue.」

Pixarにおけるディズニーと、iTunesにおけるレコード業界が等価だという置き方である。これは、シリコンバレーで、ジョブズ以外に、コンテンツメディア産業と戦えるものはいない、と皆が感じている背景である。こういうパーセプションを人々に与える根拠こそが、真のトラックレコード(成功の履歴)と称されるべきものなのであろう。

その後は、ジョブズが産業界に放った大ヒットを列挙している。(1)Apple II、(2)Macintosh、(3)レーザープリンタ、(4)Pixar、(5)インダストリアルデザイン、(6)OS X、(7)iLife、(8)iPod、そして(9)The New Apple Camera。

(1)から(8)までは実在のもの。(9)は、次は「アップルならではのデジカメ」を出してくれよ、というStewartの要望である。

やはり、20年以上にわたって、これだけのヒットを打ち続けるジョブズとアップルは、「Apple As Innovator」。次にご紹介するのはTim O’ReillyのBlogから、「Apple As Innovator」である。これは、ボルティモアサン紙の記者によるTimのインタビューの全文を再掲したものである。このボルティモアサンの記事自身は、

「the continuing saga of how Apple's fresh ideas sooner or later get hijacked by the Wintel crowd and re-sold as a Microsoft or Intel "innovation."」

どうせまたアップルの新しいアイデアは、ウィンテル陣営からハイジャックされてマイクロソフトやインテルの「イノベーション」の名のもので売られてしまうんだろうか、という問題意識で書かれた記事で、興味のある方は「Pirate and Pioneer」もご参照。

アップルは「技術」よりも「文化」のイノベーター

TimはこのBlogの中で、アップルのイノベーションの特徴をこう語っている。

「But what Apple does so well is to realize the potential in a technology, and to frame it in such a way that people discover that they need it. In a way, they are cultural innovators more than they are tech innovators. They have a really great sense of where technology is going.」

アップルが得意なのは、技術に内在する潜在能力を実現し、それを人々が「ああそれが必要なんだ」と認識できるような形でまとめあげることだったから、技術イノベータというよりも、文化イノベータと呼ぶべきだろう。そしてジョブズについては、こう表現する。

「Steve Jobs is a top caliber conceptual artist. His vision seems to be more of an aesthetic vision than a technical or even a marketing vision.」

ジョブズは最高のコンセプチュアルアーティストであり、彼のビジョンは、技術やマーケティングのビジョンというよりも、美的・芸術的なビジョンなのである。

アップルが続いているのはマイクロソフトのおかげ

若干、本筋からはずれるが、ジョブズがそうやってアップルで遊んでいられるのは、マイクロソフトのおかげじゃないか、というシニカルな視点を提供するのが、UCバークレイ経済学部のBrad DeLong教授である。彼のWiredでのコラム「So Much for Economic Principle」から。

「With the DOJ attempting to break up Microsoft for antitrust violations, Redmond quickly made it a top priority to keep competitors ostensibly healthy. This meant helping Apple remain afloat with a $150 million investment in 1998. Microsoft also poured money into making sure that Macintoshes running Microsoft Office could easily interoperate with Windows machines. And it poured still more money into making sure that Internet Explorer for the Macintosh was in no way inferior to the Windows version. Without Microsoft's assistance, I think Apple would have been shuttered.」

独禁法違反で提訴されたマイクロソフトにとって、競争者を生かしておくということが最優先事項となった。だから1998年につぶれそうになったアップルに投資したわけだし、OfficeやExplorerをマッキントッシュ用にきちんと動かすのに莫大なカネをつぎ込んでいる。だからアップルは生きていられるんだよ。

さて前者(アップル、ジョブズ論)の話はこのくらいにして、後者(音楽配信、新事業モデル)の話に移ろう。前者がだいぶ長くなってしまったので、こちらは簡単にしよう。

まずはCNET News.comの「Amazon vs. Apple in music downloads?」から。

「As millions of songs figuratively fly off the shelves of Apple Computer's recently launched iTunes Music Store, analysts are looking at Amazon.com as one of the likeliest candidates to take the next crack at the retail music-download business.」

アップルに続き、アマゾンが音楽配信事業に乗り出すのではないか、というアナリストの見方を紹介している。詳しくはCNET Japanに日本語訳もアップされているので、そちらもご参照。

AmazonブランドのiTunes Music Storeを

このCNETの記事に触発されて書かれたのが、「Apple Should Partner With Amazon On Amazon-Branded iTunes Music Store」である。「アップルはアマゾンと提携し、アマゾンブランドのiTunes Music Storeを」という提案である。

「I think it quite obvious that Apple should actually work with Amazon to distribute an Amazon-branded version of the iMS. Apple needs to have some friends out there, and it's high time the bigwigs at 1 Infinite Loop started thinking about expanding through licensing, at least in this area. This allow Apple to profit off of Amazon's work, and make no mistakethat Amazon will eventually enter this space with or without Apple. With so many people out there working on aping Apple's achievement, Apple should work on getting some of the proceeds from at least some of those competitors, especially those who are most likely to get it right. Far from diluting Apple's influence, such partnering and licensing would expand the company's reach.」

アマゾンは遅かれ早かれ、アップルと関係なく、この世界に参入してくる。だからアップルがアマゾンと提携するのは戦略上、自明のことではないか、というのが、このMac Observerの主張である。

「The time has come for Apple to think differently about this issue, and Amazon is the perfect company with whom to do so.」

この記事は、こう締めくくっているが、言外に、アップルはこういう提携が下手だからなぁ、という気分が見え隠れしている。アップルこそが「Think differently」しなきゃいかん、というのはそういう意味である。

そう、ここが天才ジョブズのアキレス腱。こういうモノの考え方が過去にできていたら、アップルはもっと違った会社になっていたはずなのである。

マイクロペイメントの専門家から見たiTunesの意義

そして最後に、Scott Loftesnessの「Micropayments Redux at the iTunes Music Store」をご紹介しておこう。この論考の最初から半分くらいは、iTunesサービスの優等生的なまとめになっている。面白みに欠けるがよくまとまっているので、そういうまとめが欲しい人は読んでみてください。ポイントは、オンライン決済・マイクロペイメントといったScottの専門領域から見たときに、iTunesサービスの意味を、こう表現している最後の部分である。

「Has Apple broken the code on micropayments? Yes and no. The success of the Store demonstrates that there is a broad market for premium content-sold ala Carte, immediately accessible, and fairly priced. In this sense, the Apple iTunes Music Store is the best micropayments proof point to date. Its success should encourage others to pursue similar models or to provide a cross-merchant micropayments infrastructure. The door is wide open.」

Scottは、この論考の中で、クレジットカードというコストの高い決済手段を使ってiTunesがどのようにビジネスをやっているかを分析した上で、死屍累々のマイクロペイメント界に対して「The door is wide open.」なのだとエールを送っている。

僕は個人的にはマイクロペイメントはものすごく難しいと感じているが、そのことについてはまたいずれ折に触れて、ということにしよう。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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