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先進的オタクユーザーは危険なお客

2003/05/27 10:00
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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Wi-FiをHome Entertainment Applicationに使おうという動きがあれこれと出ているが、Alan ReiterのBLOG(Forbes誌で技術系BLOGベスト5に選ばれたBLOG)で「WiFi for home entertainment applications」を読んでいたら、Martian Technologyの創業者の話が出ていて面白かった。

「Om's MIT Technology Review article leads with how Steve Dossick was frustrated with the limitations of his home WiFi network so he created Martian Technology, which now sells a 40GB and 120GB WiFi-enabled file server」

ここで参照されているMIT Technology Reviewの元の記事はアクセスが面倒なので、ご紹介しない。

また同社の製品に興味のある人はリリースをどうぞ。

今日のテーマは、Wi-Fiの家庭アプリではなく、創業の動機についてである。このMartian Technologyは、創業者が彼の自分の家のWi-Fi Networkの限界にフラストレーションを感じて作られた会社で、「40GB and 120GB WiFi-enabled file server」を開発して、つい最近、商品にして出した。こういうのを、僕は、Early adoptor型創業動機と呼んでいる。

Geekの多いシリコンバレーでは、世間知らずのGeekたちが考えがちな「自分のために問題解決をすれば、全世界の人がきっと喜んで、カネを出してくれるに違いない」というナイーブなEarly adoptor型創業動機で、スタートアップ企業が作られることが多い。もちろん中にはビッグヒットになることもあるから、それを否定しているのでは全くないが、失敗に終わるケースもかなり多い創業動機である。

失敗に終わることが多いのは、このタイプの創業者が、自分がいかに特殊なカテゴリーの人間なのかを、過小評価していることに起因する。

初期顧客にEarly adoptorを持つことの危険性

創業動機についてではないが、Early adopterについて書かれたBLOG「Why Early Adopters are Dangerous Customers」を読んでみよう。このBLOGは、この連載で、ベンチャーキャピタルがBLOGを始めたという話を書いたときに少し触れた、CIAのベンチャーキャピタル「In-Q-Tel」のCharles Hudsonが書き始めたBLOGである。

Charlesは自分がEarly adopterなのだと自認した上で、

「This applies to any and all products, from high-tech gadgets to enterprise software. I have identified four reasons why early adopter customers can be very dangerous for companies:」

ベンチャーが初期顧客にEarly adopterを持つことの危険を4分類している。

第1のポイントは、

「Early adopters often feel the pain most acutely and are willing to endure a fair amount of pain to get a solution to the problem.」

彼らは、普通の人にとってはどうでもいいことにまで、ものすごくPainを感じて、何とかそれを解決するために、かなりのPainをいとわない。

第2のポイントは、

「Early adopters are, by definition, several years ahead of the curve and always will be.」

彼らは、だいたい数年先を走っている。

第3のポイントは、

「Early adopters are often more technically fluent than your average adopter.」

彼らはだいたいGeekで、技術について普通の人たちよりもものすごく詳しい。

第4のポイントは、

「Many early adopters could care less about reducing complexity.」

彼らは、複雑さを軽減しようということに対して鈍感である。

これら4つのポイントについては、だいたい最初の1行で雰囲気はつかめると思うが、その解説は原文にあたってください。

Early adoptorの顧客の声を聞きすぎるのも危険

そして、

「After reading this, you might ask yourself (and I often ask myself) why companies even bother with early-adopting customers. For all of our faults, early-adopting customers provide companies with an enormous amout of feedback on new products. The problem is not so much with early adopting customers; the real issue is how a company, a start-up in particular, digests and integrates the feedback that it gets from these very particular customers. Early adopting customers also tend to be great spokespeople for products that they really enjoy. We want to tell our friends about the latest gadget that we think can influence their lives and people often listen to what their favorite technophile is up to.」

この文章は、ベンチャーキャピタリストらしいいい分析だ。

Early adopting customersは、製品に対して膨大なフィードバックをくれる。問題はそういうフィードバックがたくさんあること自身ではなくて、製品開発者側が、そのフィードバックをしたのがものすごく特別なタイプの顧客であることを忘れて、そのフィードバックにとらわれ過ぎることにあるということだ。しかもEarly adopterは熱狂的な製品支援者だったりするから、逆に始末が悪いこともあるわけである。

冒頭に戻って、創業者自身が、Early adopterだと、こういう罠に陥りやすいのが、きっとわかっていただけると思う。これは、日本企業の製品開発においても有効な話だと思います。

さて最後に余談になるが、僕自身は、Early adopterでは全くない。僕のことをよく知っている人は、皆、そのことをよく知っている。一応、技術系のバックグラウンドはあるから、やろうと思えばできることも多いはずなのだが、early adopterとして、あれこれと新製品を試したりということは、日常生活ではいっさいしない(そういう性格に気づいたから技術者・研究者を目指すのをやめたという経緯もある)。

第1のポイントの「大したPainでもないのにそれを解決しようとして時間を浪費する」なんて、いちばんばかばかしいことだと思っている。そんな暇があったら本を読んだり、野球を見たり、犬と遊んだりしていたい。まあLaggardというほどひどくはないが、Early majorityの後ろの方ではないかと思う。

ただ、そういう自分自身の性向が、今のベンチャーキャピタルの仕事には、けっこう向いている。一般顧客の立場で、心からクールに、ベンチャーを評価できるからだ。Charles Hudsonもそうだが、シリコンバレーのベンチャーキャピタルの連中の中には、けっこう隠れGeekが多いから、僕などは希少価値があるのだ。何事も希少性こそが価値を生む、というのが僕の人生観なので、勝手にそう思い込んでいるだけなのかもしれないが。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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