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ハイテク投資はタイミングを読み誤ると大変なことになる

2003/05/26 10:00
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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少し前になるが、CNET Japanで「カスピアン、プロケットの新興勢が、シスコ、ジュニパーに挑戦状」という記事が出ていた。この記事で紹介されたCaspian Networksという会社は、筋のいい技術ゆえ「知る人ぞ知る」という感じで長いこと注目されていた会社。そこがようやくこの4月になって製品を出したので、こんな形で取り上げられたのだ。

Caspian Networksは、僕のシリコンバレーでの師匠、ゴードン・ベルがエンジェルとして投資し、精神的にも支援を続けている会社である。ゴードンについては、この連載の前身である僕の個人サイト時代のBLOGで何回か取り上げたので、ここでは紹介は省く。バックナンバーに収録した「MyLifeBits」、「ゴードン・ベルの続き」、「天才ゴードン・ベルのMyLifeBitsプロジェクト」をぜひ読んでみてください。ゴードンという「正真正銘の天才」に間近で接した人間として、その魅力をできる限り伝えようとして書いた文章です。

桁外れの資金調達を実現したCaspian Networks

さて冒頭でご紹介したCNET Japanの記事では、「2億6200万ドルの資金をベンチャーキャピタルから集め、今回ハイエンドのルータ市場に参入したCaspianだが」とさらりと書いてあるが、いくら筋のいい技術の会社とはいえ、2億6200万ドルという巨額の資金を、製品を出す前に調達するということができるのは、尋常な世界ではない。

2億6200万ドルは、100円換算なら262億円、120円換算ならその2割増しということで52億円足して、314億円。日本の大企業に勤める読者の方なら想像がつくと思うが、こういう巨額の投資を、研究開発型新製品にぶちこめる会社など、ほとんど存在しないということがよくわかるでしょう。

ただ紆余曲折もあった。公開情報ではないが、Caspian Networksの資金調達の歴史を、ベンチャーキャピタルが利用する有料データベースから引っ張ってきてご紹介することにしよう。

これまでに5回の資金調達をしている。創業時の98年6月に300万ドル(推定)調達(ここでゴードンは投資したはず)、99年9月に1400万ドル調達、2000年3月に4000万ドル調達。2000年12月に8500万ドル調達。詳細な数字は転記しないが、ここまではバブルの時代の余韻が残っていたため、資金調達するごとに企業価値が上がるという循環で進んでいた。ここまでの調達金額が1億4200万ドル。しかしこれだけカネをつぎ込んでも製品ができなかった。そしてバブル崩壊後の2002年2月、企業価値を大幅に下げて、1億2000万ドルを調達。ベンチャー世界での資金調達の最新動向については、「シリコンバレーVCの新しいゲームのルール」をご参照。いつ次の資金調達ができるかわからないから、最後の勝負ということで、1億2000万ドルの資金を手にしたのである。

時代を先取りしすぎるのも問題

何ともすさまじい世界であるが、Caspianの大きな誤算は、色々な意味で、Caspianの技術や事業構想が、時代を先取りし過ぎていたということである。もちろん、時代を先取りしていたからこそ、創業がバブル時に間に合い、だからこそ巨額の資金調達ができたということはある。もう少し待ってから、などと考えていたとしたら、バブル崩壊に遭遇してしまい、創業してこれだけのカネを集めて研究開発につぎ込む、ということなどできなかっただろうからだ。ゴードンのような人だと「だからよかったのだ、これからが勝負だ、さあ前だけ向いて走れ」と間違いなく心の中で思っているはずだ。

それはさておき、CIAのベンチャーキャピタル・In-Q-TelのCharles HudsonがそのBLOGの中で「Why "the when" Matters for Cutting Edge Technology」という面白い文章を書いている。これを読んで、ゴードンとCaspianのことをまず思ったので、そのことから書き始めたら、長くなってしまったので、こちらの紹介は軽くということにしておこう。

投資家にとっての最大の難問は市場化のタイミング

テーマは、タイトルに書かれている通り、最先端技術の開発には「the when」(いつなのか)ということがとてつもなく重要だ、ということである。

「As a venture investor, one of the really difficult questions to get my hands around is this real question of the market and when it will develop.」

「If you really think about it, though, the question of "when" a market really emerges and is addressable has very real consequences for anyone involved in cutting edge technology.」

投資家にとって最大の難問は、市場がいつ立ち上がるかをどう見切るかという問題である。そしてそれを読み間違うと大変なことになる。たとえばCaspianの例で言えば、企業価値を下げて資金調達が行なわれた2002年2月時点で、その企業価値よりも高い段階で投資した過去の投資家は皆、損を出さざるを得なくなっている。

「Why “When” Matters」

なぜ「When」がそんなに重要なのか。その理由をCharlesはこうまとめる。

「I'd argue that being wrong by 1-2 years on when a market will actually develop has some really damaging effects for private companies, some of which I will list below:」

市場の立ち上がりを1-2年読み違うことが、具体的にベンチャーにどんなダメージを与えるのか。4つのポイントを挙げている。

(1) Two Years of Extra Financing

(2) Two Years of Cost Reduction

(3) Two Years Educating your Competition

(4) Appearance of Being Stale

2年間、そのベンチャーが予定より長く市場が立ち上がらないでもがいているうちに、世界中で様々な開発が進んでいるわけだから、そのベンチャーが何をやっているかを競争者が学んで、技術をゼロから開発しなくても、市場から色々と技術を調達して挑戦を仕掛けてくるので、勝ちにくくなる。余計に資金調達もしなければならなくなるし、その間に出てきた競争者に比べての魅力度も下がって、生気のない会社とみなされてしまいがちだ。

確かにその通り。ただ、こういう苦境を、苦境とも思わずに、苦境を楽しむような「真の起業家」がその会社を引っ張っていると、こんな分析など吹き飛ばしてしまうようなブレークスルーを突如生み出すことがある。そこがまた、シリコンバレーの面白いところなのである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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