お使いのブラウザは最新版ではありません。最新のブラウザでご覧ください。

CNET Japan ブログ

HP・コンパック統合に見る、大胆なリーダシップの重要性

2003/05/22 08:00
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
ブログ管理

最近のエントリー

2つの巨大な公開企業が合併し、四半期単位での業績を株主に逐一ウォッチされながら、合併後経営(After Acquisition Management)をExecuteしていくのは大変な力技である。HP・コンパックの合併後経営の舞台裏を報告した最新記事「Saving $3 Billion the HP Way」(Business 2.0誌)を読んでみよう。日本企業の経営とは全く違うダイナミズムを感じることができるはずだ。ここでは、買収という言葉ではなく合併という言葉を使うことにする。

この合併がアナウンスされたのは、2001年9月11日(同時多発テロ)直前の9月3日であった。9月10日に、当時ウェブ連載していたBizTech eBusiness上に「HPのコンパック買収が示唆する世界競争の現実」という文章をアップしたので、そのことを鮮明に記憶している。

HPとコンパックが合併マネジメントの責任者を選出

その合併アナウンスメントの直後に、HPとコンパックが、それぞれ合併後マネジメントの責任者を選任した、というところからこの記事は始まる。

「At Fiorina's side was Webb McKinney, the 33-year HP veteran who was considered the company's organizational mastermind. With Capellas was his young chief financial officer, Jeff Clarke, a numbers whiz whom Capellas admired as a bare-knuckles negotiator.」

HP側はHP生活一筋33年のMcKinneyを選び、コンパックはタフネゴシエータのCFO、Clarkeを選んだ。この2人は互いに面識がなかった。

「Fiorina and Capellas had picked them to tackle one of the toughest jobs imaginable: moving the largest technology merger in history from paper and promises into a functioning organism, in the midst of the worst technology slump in two decades.」

この2人が、「史上最大のテクノロジー企業の合併を、この20年で最悪のテクノロジー不況の真っ只中で行なうという、想像しうる範囲で最もタフな仕事」を引き受けることになったわけである。

「In the process, McKinney and Clarke would lead the redeployment of a combined 145,000 workers in 160 countries. They would be responsible for untangling 163 overlapping product lines -- from Intel-based home computers to Unix workstations to handhelds -- and firing more than 15,000 employees to meet the $2.5 billion in cost reductions that Fiorina was promising investors.」

160カ国・14万5000人の従業員を配置転換し、163の重複製品ラインの問題を解決し、1万5000人以上を解雇し、フィオリーナが投資家に約束している25億ドルのコスト削減を達成しなければならなかったわけだが、この25億ドルのコスト削減は、2002年12月、18カ月前倒しで実現された。

コンパックによるDEC買収の教訓が生きた4つのステップ

この難事を実現したプロセスが、この記事では、4つのステップで解説されている。その4つのステップの話の直前に、非常に重要なことが書かれている。

「Banging out new products at a speedy clip, though, is a cinch compared with what plagues mergers most of all -- the inability to make fast decisions. Few knew that better than Clarke, who had a ringside seat during Compaq's $9.6 billion acquisition of Digital Equipment in 1998. By the time the deal closed later that year, merger executives had failed to trim redundant product lines, and customers were left guessing about the fate of Digital products, such as its high-end Alpha servers. Amid the confusion, Dell (DELL) took just 15 months to slip past Compaq as the leader in domestic PC sales. "We screwed up," Compaq founder Ben Rosen said. "We learned you have to make a lot of correct decisions quickly."」

コンパック側でこの仕事についたClarkeは、1998年のコンパックによるDEC買収の一部始終を「リングサイドで見ていた」のである。その観察ゆえの教訓は、迅速な意思決定の重要性ということに尽きたのだ。

4つのステップとは、

Step 1: The Decision Factory(意思決定の工場)

Step 2: "Adopt-and-Go"(決心してどんどん進む)

Step 3: Feed the Fast Track(全速力で疾走)

Step 4: Enforce Cost Deadlines(コスト削減期限の強制)

である。

McKinneyとClarkeは、インテグレーションチームを組成したが、

「In just six months, the integration group, called the "clean team," would grow much faster than any startup. Within weeks of the merger's announcement, the team had 500 members; by March 2002, more than 900. Even after the merger closed in April 2002, it kept growing, peaking at more than 1,000 full-time employees.」

そのチームは、数週間で500名のチームに、半年後には900名のチームに、そして今も1000人のチームが専任で働いているわけだが、結局これが「意思決定の工場」として、迅速に物事を決めていった。

「The strategy, called adopt-and-go, was to get cross-company pairs of managers to meet daily to determine whose products had the most market share, the better brand, and so on. Then, at weekly presentations with McKinney and Clarke, managers had to offer up one for elimination. In four months, this game of managerial Survivor yielded a road map for product lines and helped close redundant warehouses and factories, ultimately saving $500 million in procurement costs. In the end, many Compaq products beat out HP's. But when it came to choosing a brand, HP was the clear winner. On business machines, HP will soon phase out the Compaq name.」

「adopt-and-go」と命名された戦略は、コンパック・HP両社の重複する製品ラインのいずれを残していずれを捨てるかを決めるもの。週ごとのMcKinneyとClarkeとのミーティングで、意思決定工場のマネジャーたちはその選択を提案しなければならなかった。そして決めたら執行する。多くの製品ラインでコンパック製品が残ったが、ブランドだけはHPに統一されていった。

荒っぽい決断でも迅速ならいい

僕の友人の1人は、HPのPC製品部門に勤めていたのだが、このプロセスによるかなり荒っぽい意思決定によって、コンパック側の製品ラインが存続することが決まったので、かなり機械的なプロセスでレイオフとなった。米国では、レイオフの背景にわかりやすい合理的な理由(例、製品が存続しなくなったので部門全員解雇のような)があったほうが、事がスムーズに運ぶのである。

ClarkeがコンパックによるDEC買収を「リングサイド」で観察して学んだのは、実はこのことだったのだ。荒っぽい決断でも迅速ならいい。素晴らしい決断をしようと時間をかけては、その決断は素晴らしいものではなくなる、ということだったのである。

「It helped HP get through the most painful part of integration planning: generating 18,000 pink slips.」

結果として、1万8000人が解雇された。その中にはきっと「将来のエース」と目された連中や、過去にHPに多大な貢献をした人たちもたくさん居たに違いない。でもそうやってでも、厳しい時代に生き残ることをHPは選択せざるを得なくなったのだ。このあたりのHPの話は、バックナンバーの「フィオリーナの挑戦」の中でも書いたので、そちらもご参照。日本企業の人は、このくだりを読んで、「そんなことまでして、仮にHPが復活できたとしても、そこに、いったい何の意味があるんだ?」と思うことでしょう、きっと。これは本当に、深遠なテーマなのです。

さて、そして存続が決まった側は、

「From the start, McKinney set up the clean team to ensure that the process wouldn't slow product launches. Once adopt-and-go had run its course, new-product managers got the resources they needed to keep moving.」

どんどん走れ、ということになったのである。

「If McKinney was seen as CEO of the integration team, Clarke served as his tough-minded CFO. "If there were issues that the teams couldn't resolve," McKinney explains, "Jeff and I would jump in." If those two couldn't resolve the impasse, they'd pass it to a committee chaired by Fiorina.」

こういうのを、米国では、トップのリーダーシップと呼ぶのである。

この記事のいちばん最後に、両社の売上高、コスト構造、コスト削減についての数字が出ている。ぜひ、じっくりと原文の全部を読んでいただきたい面白い記事であった。こういう話こそ、BLOGではなく、組織ジャーナリズムの取材力が生きるテーマなのである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
運営事務局に問題を報告

最新ブログエントリー

個人情報保護方針
利用規約
訂正
広告について
運営会社