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AppleはTiVoを買収してパーソナルビデオレコーダーに参入するか

2003/05/16 10:00
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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公開企業ではあるが、いまシリコンバレーで最もホットな会社の1つがTiVoである。

TiVoのユーザは皆、「TiVoは私たちの生活を変えた。もうTiVoなしでは生きられない」とTiVo信者になってしまうほど、TiVoのPVR(Personal Video Recorder)製品・サービスの完成度は高い。しかし、創業以来、未公開段階・公開時の資金調達、提携相手企業からの投資などを合わせれば、最低でも300億円から400億円のカネを新市場創造につぎ込んで、しかもまだ利益を出せていないだけに、何かと話題になることが多い会社である。

TiVoはAppleに買収してもらったら?

そのTiVoは、いまこそ、Appleのジョブズに買収してもらったらいいんじゃないの、と主張する「Is TiVo NeXT?」を読んでみよう。なかなか面白い。

「Everyone who has TiVo (TIVO) loves TiVo; it is to television what Macintosh was to computing -- a revelation. Which is exactly why Apple (AAPL) should buy TiVo and once again redefine the intersection of culture and technology.」

コンピューティングにおけるMacintoshとテレビにおけるTiVoをアナロジーとして置くのはとても正しいと思う。

でも後半の「だからAppleがTiVoを買収して、文化と技術の接点を、もう1回(Macでやってくれたようにの含意)、再定義すべきだ」というのは論理的には短絡。ただ、議論としては楽しい。筆者もそれをわかった上で、遊びながら書いている感じの文章。いかにシリコンバレーが、Macintoshを生み出したAppleという会社を尊敬し、そしてジョブズという男に畏怖の念を抱き続けているかが、この一文からもよくうかがえる。

「Folks love TiVo for the same reason they loved the Mac in 1984 and the iPod in 2001: It gives control back to the end user. TiVo viewers call the shots regarding when, how, and -- soon -- even where they watch. Once content or access is purchased, the end user is in charge, just like with the iPod.」

TiVoとMacintosh(1984年)とiPod(2001年)に共通するのは、エンドユーザがコントロールできるべく、現在の産業構造を本来あるべき姿に戻す、という意味合いだ。

これは、この連載で何度も繰り返し議論しているテーマにつながる。特に「ハリウッド対シリコンバレー、「ステイシスト」と「ダイナミスト」の激しい戦い」をご参照ください。

コンテンツ産業に立ち向かえるのはAppleだけ

しかしTiVoの困難は、Entertainmant産業との摩擦、軋轢であり、TiVoの競争者であるReplayTVはEntertainment産業から訴訟を受けて、結局は破産法申請に至った。

これについては、バックナンバーの「シリコンバレー対ハリウッド、訴訟にはこんなにカネがかかる」も合わせてご参照。その他、提携相手であったAOLが独自仕様のPVR・Mystroを出したり、といったTiVo受難のくだりは、興味のある方は原文をどうぞ(ちなみに、Mystroのシリコンバレーでの評判は最悪である)。

そして、筆者であるJohn Battelleは、

「So it's time for Apple to step in. Steve Jobs is the only man in techland who can stand up to the content companies on his own terms. Not only does he understand the entertainment industry -- his other company, Pixar, is a Hollywood hit machine -- but he also deeply understands the consumer. Apple's "Rip. Mix. Burn." approach has captured the essence of how consumers feel about music: It's theirs.」

テクノロジー産業において、コンテンツ企業に対して、立ち向かえるのはジョブズただ1人(エンターテイメント産業と消費者の両方を知り尽くしているから)だ、だからAppleが今こそ、とエールを送るわけだ。

「Also, TiVo is similar to Jobs's erstwhile NeXT Software -- an expensive and risky endeavor, but eerily prescient. When Jobs returned to Apple, he brought NeXT with him, and its core technologies are burrowed deep into OS X, the elegant operating system at the center of Apple's new "iLife" media strategy.」

ジョブズはAppleに復帰してすぐ、NeXT Software(これもジョブズが創業した会社だ、覚えている読者はたくさん居るかな? 僕の世代のキャノンの人は絶対覚えているはず)を買収して社内に取り込んだわけだが、TiVoを、NeXTと同じではないかと筆者はいう(ちなみに、僕はTiVoをNeXTと同じ場所に置くのは、TiVoに対してフェアでないという気がする)。

ここで、この文章のタイトルの「NeXT」が、「次」という意味の「next」と、Appleに買収された「NeXT」の両義になっていることがわかる仕掛けになっている(もちろんタイトルの「NeXT」ですぐに「NeXT」社を思い出した人もいるでしょうが)。

Appleならテレビ世界を変えられる

「Jobs could do the same with TiVo. With a depressed market cap and nearly 625,000 customers, TiVo is a steal. Jobs would have to unwind some messy licensing agreements, but he's done that before. His next step would be to apply Apple's design elegance and create an "iTV" device that integrates with Macintosh OS X, the Internet, and your cable or satellite box. Talk about a revolution. Once Apple turned on the marketing and PR offensive, we'd have one hell of a Hollywood drama unfolding. And with Jobs in the lead role, it'd be awfully fun to watch.」

が結論部分。TiVoはAppleにとっては「掘り出し物」だよ。Appleのデザインエレガンスをぶち込んで、Macintosh OS XとインターネットとTVチューナーを全部インテグレートさせて、我々のテレビ経験を一変させてしまってくれよ。期待してるぜ。

確かに、AppleがTiVoを買収すれば、Appleは、Macintosh-iPod-iTunes-TiVoを併せ持つことで、これからのIT産業とコンテンツ産業のさらなる融合、産業再構築の流れにおいて、本当に面白いポジションを得るに違いなく、確かにユニバーサル買収なんかよりずっとエキサイティングだ。

ところで、1週間前に、TiVoのCEO、マイケル・ラムジーと会って、1時間ほど話をする機会があった。彼はジョブズとも旧知で、Appleの新しいiTunesサービスについても非常に高く評価していた。

TiVoは「買収のシグナル」をまだ出していない

AppleとTiVoのケミストリーは決して悪くないな、と感じた僕は、思い切って、「AppleがTiVoを買収したらどうかっていうアイデアについてはどう思う?」と聞いてみた。

ラムジーの答えは、むろん本音かどうかは全くわからないが、

「インダストリーで買収が起こるときっていうのは、必ず買収される側が、何らかのシグナルを出しているから事が始まるものなんだ。どんなシグナルかって。いや言葉では説明できないけれど、微妙な微妙なシグナルだ。関係者の心の揺れ、みたいなものと言ってもいいかもしれない。そのシグナルをまだTiVoはぜんぜん出していない。我々はまだ自分たちの独力での成功を強く信じているし。だから、そういうことは起こらないよ」

であった。

なかなか含蓄の深い受け答えで、僕はそれを聞いて、色々な意味で、一つ賢くなった気がしたのだった。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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