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ベンチャーキャピタリストがBLOGを書く意味

2003/05/08 10:00
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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ベンチャーキャピタリストも少しずつだがBLOGを書き始めた。この流れがさらに大きいものになるのかどうか、それはまだわからないが、今日はそんな話をしよう。

もともと「IT産業に関連するBLOG」の書き手は、学者、コンサルタント、ジャーナリスト、評論家、技術者らが圧倒的に多く、経営者やベンチャーキャピタリストがBLOGを書く例はとても少ない。

昨年秋、BLOGの可能性を感じたとき、自分でBLOGを毎日書いてみるという実験を始めるとともに、Pacifica Fundの同僚のTim Orenに「お前もBLOGを書けよ」とけしかけてみた。誰から頼まれなくても膨大な量の最新技術の資料を渉猟し、いつもIT産業と技術について独自のPoint of ViewをメインテナンスしているTimは、お人好しで啓蒙家の面があるので、BLOGを書くのに向いていると思ったのだ。

しかし考えるべきは、ベンチャーキャピタルという仕事柄、ステルスモードのベンチャーにもたくさん会い、機密情報にも触れる機会の多い我々が、カジュアルに毎日BLOGで自分の考えを書くことにビジネス上のリスクにないのか、ということであった。

さんざん議論した結果、もちろんそういう点にはプロとして十分注意を払わなければならないが、それを乗り越えてもBLOGを始める価値があるという結論になった。そのあたりの「個人(Tim Oren)と組織(Pacifica Fund)の関係」についての姿勢を、Timが自己紹介の中で、こんなふうに書いている。

Point of ViewのないVCは役立たず

「What I write here is what interests me, and is my own opinion. I make no pretense to objectivity. A VC without a point of view is a useless VC. My opinions don't necessarily reflect those of my partners or the firm, something I find out regularly.」

これはあくまでもTim Oren個人の意見であること。Point of ViewのないVCは役立たずだから、自分のPoint of viewを公開しているわけだが、ファンド全体や他の3人のパートナー(Himanshu Choksi, 僕、岡本行夫さん)やファンドとしての意見を反映したものではないこと。

「This is not the official Pacifica Fund site. If you are an entrepreneur who wants to send a business proposal to the fund, don't use the blog mailing address.」

そして、Business Planを送ってくるのであればファンド・オフィシャルなe-mail addressに送ってきてほしいということ。

「Just because I blog about something doesn't mean we're looking for proposals in that area. I'm interested in a lot of things that aren't suitable for venture investing or that have zilch chance of being accepted by the partnership.」

このBLOGの中で書いているからといって、我々が投資したい対象であるとは必ずしも限らないこと。

BLOGは知的実力をアピールするチャンス

さて、Pacifica Fundは、米国VC業界への新規参入者で、しかもファンドサイズもそれほど大きくない。だから、我々の知的実力を、あらゆる機会を利用して、米国VCワールドにアピールしていかなければならない。僕らは、BLOGブームもそのチャンスの1つだと考えたのである。そして「See how it goes!」ということで、TimのBLOGを、1月末に公開した。

彼が11月から実験的に内輪で書き溜めていたアーカイブも一緒にアップした。その時点では、ベンチャーキャピタルでBLOGを書き始めたのは、Pacifica Fundが始めてだったと思う。公開した日のうちに話題となり、アクセス数もぐんぐん伸びた。

Pacifica Fundに続いてBLOGを公開しはじめたのが、同じくシリコンバレーのAugust Capitalである。

これが公開されたのが、2月末。こちらは1人ではなく、Augustのパートナー3人が共同で書いている。

AugustがBLOGを公開した時点で、サイトのサイドバーの「Other VCs to read」は、Stewart Alsop(NEA)のFortuneコラムと、TimのBLOGだけだったから、Augustが2番目だったと思う。

CIAのベンチャーキャピタリストもBLOGを

続いて3月下旬にCharles HudsonがBLOGを始めた。彼の所属は、米国政府CIA(Central Intelligent Agency)のベンチャーキャピタル、In-Q-Telである。In-Q-TelはCIAが必要とする最先端技術を開発するベンチャーに投資するファンドである。余談だが、In-Q-Telと一緒に仕事をすると、ときに名刺を持たずファーストネームしか明らかにしない技術の超専門家が登場することがあったりして、なかなかクール。ときにそんなファンドで働くCharlesのBLOGを読むのも乙なものかもしれない。そのCharlesも数少ないリンクに、TimのBLOGとAugustのBLOGを載せているので、少しずつだが、コミュニティができ始めているということなのかもしれない。

まだまだ小さいコミュニティであるし、VCとBLOGという組み合わせにどういう意味があるのかはまだわからないが、少なくともこうして差別化というか固有化というか、そういう試みを仕掛けているわけだ。

たとえばNEAのStewart Alsopの仮想化についてのコラムについて本連載でも「エンタープライズコンピューティングのルールを変える仮想化の波」という形で取り上げたが、Stewartの原文に対しては、TimとAugustの両方がすぐに意見をBLOGに載せた。

TimのBLOG: Alsop and Virtualization
AugustのBLOG: Stewart Alsop on Virtualization

BLOGを通じて信頼関係を築く

この意見交換のやり取りの結果、August側も、先に意見表明したTimの考えに賛同していることがわかり、なるほどこうして信頼関係が築かれていくのかと実感した。実はAugustとPacificaは、Postiniという同じベンチャー企業に投資しているのだが、Postiniに対する投資家仲間という観点から言えば、Augustはより早い段階で多くの資金を投入して同社の経営に深く関与しているため、後のラウンドで彼らよりも少ない額を投資したPacificaとの投資家間での力関係は歴然としている。しかし、いったん、何かの理由で信頼関係が築かれれば、対等とまではいかずとも、ある種の役割分担ができるようになる。それがシリコンバレーのルール。TimのBLOGも、まぁ、その1つの契機となったとは言える。

さて、前置きが長くなってしまったので、今日は、雰囲気をつかむという意味で、AugustのBLOGを1つだけご紹介しておこう。

ベンチャーキャピタルは製品ではなく企業に投資する

4月9日の「VCs Invest In Companies, Not Products

「We saw a very interesting product presentation last week. I won't say anything about the sector or team as it's still something we're looking at pretty seriously. But the team giving the presentation made one of the classic errors in presenting to us: they spent the entire time talking about the product with almost none on the company.」

会社名もチームも技術もセクターも言えないけれど、と前置きした上で、面白いベンチャーからプレゼンを受けて、真剣に投資を考え始めたが、このベンチャーはプレゼンにおいて古典的な過ちを犯したと書く。彼らが、製品の話しかせず会社の話をしなかったからだ。

これは、タイトルの「VCs Invest In Companies, Not Products」という意味そのものの話である。

そして次にこの会社のビジネスは、「non-standard financial model」だという。その定義は、

「Anything other than "give us money, we'll build a product, then a sales channel, then collect profit" is what I would call non-standard to a VC. There is nothing wrong with non-standard, we're perfectly happy to think creatively. But a non-standard model needs to be sold to us in the same way as a new technology or business process.」

スタンダードなのは「投資してくれ、製品を開発して販売チャネルを開拓して、利益を生みます」というもので、それ以外は皆、non-standardだ。Non-standardであることは素晴らしいことだし、創造的に考えるのもけっこう。でもnon-standardなら特に、ちゃんとそのモデルも売り込んでくれなきゃだめだよ、と言っている。

「VCs invest in companies, not products. A great product is obviously an important place to start, don't get me wrong. But the industry outlook, competitive space, management team, financial model, sales channel, pricing structure, etc. are all important to the equation.」

素晴らしい製品はそのスタートポイントに過ぎないのである。

インダストリーの潮流、競合環境、マネジメントチーム、財務モデル、セールスチャネル、価格構造、などなども、方程式には同じように必要なのだ。

当たり前のことが書かれているように見えるかもしれないが、シリコンバレーのベンチャーといえども、最初は皆、ゼロからのスタートなので、とんがった技術や才能を持っているけれど、当たり前のことを知らないという連中もいる。むしろそんな連中の中にこそゴールドを見出すことも少なくない。

Pacifica Fundでも、そんな若い起業家向けに、我々のところにコンタクトする前に、ここを読んでね、というページを2つ、サイト内に用意している。

Pacifica Fund: Investment Approach: What it takes
Pacifica Fund: Process: A Closer Look

何かの参考になるかもしれません。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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