お使いのブラウザは最新版ではありません。最新のブラウザでご覧ください。

CNET Japan ブログ

「死の谷」を越えるアンディ・グローブの直感力

2003/05/07 10:00
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
ブログ管理

最近のエントリー

アンディ・グローブという人は、本当にもの凄いオーラをいつも周囲に発している人らしい。

インテルの日本法人に長く勤め、今はシリコンバレーでニューコアテクノロジーという半導体ベンチャーを創業した渡辺誠一郎さんがこんなことを言っていた。

「アンディ・グローブの半径数メートルの空気は、いつもぴりぴりと怖いくらいに張り詰めていた。そしてそのみなぎる緊張感が波状に伝わり、インテル全体を覆っていました」(「日本のモノづくりは死なず」より)

余談だが、僕は「日本人一万人シリコンバレー移住計画」というプロジェクトを去年興して、その一環で、フォーサイト(新潮社定期購読誌)連載「シリコンバレーからの手紙」で、月に1回、シリコンバレーで活躍している(あるいはその予備軍の)日本人を1人選んでインタビューして、エッセイを書いている。

渡辺さんのインタビューもそのひとつである。新潮社に頼んで、この連載は、最新のものもバックナンバーも、ウェブ上で誰にでも読めるようにしてもらったので、興味のある方は是非そちらも読んでみてください。

今日取り上げる「Andy Grove on the Confident Leader」は、アンディ・グローブを、「イノベーターのジレンマ」のクリステンセン・ハーバード教授らがインタビューした記事

「Intel's famous chairman discusses decision making, intuition, and corporate governance with professor Clayton M. Christensen and Harvard Business School Publishing Editorial Director Walter Kiechel.」

である。

サンフランシスコの美しさに魅了されたアンディ

ところで冒頭で紹介されているアンディ・グローブの自伝「Swimming Across (Warner Books, 2001)」というのは素晴らしい本だ。日本語訳は「僕の起業は亡命から始まった!」である。この本はアンディの少年時代からカリフォルニアにやってくるまでの激動の前半生が描かれている。ハンガリーでの大変な経験のところももちろん読みごたえがあるが、亡命してアメリカにたどりついてから、アンディがアメリカという国の懐の深さに感動していく後半部分のほうを、僕は特に、興味深く読んだ。最後の章の中で、東海岸から、大学院に進むためにサンフランシスコ・ベイエリアに車でやってくるくだりがある。

「I fell in love with San Francisco Bay Area from the moment I drove through a tunnel north of San Francisco and saw the city glittering in the sunshine. It was everything Professor Kolodney had suggested it would be. It was beautiful. It was friendly. It became home. I've lived in the Bay Area ever since.」

アンディは、苦労しながらニューヨークの大学で勉強しながらも、ニューヨークが好きになれない。Professor Kolodneyに、ニューヨークは寒いし雨が多くて汚くて嫌いだ、と愚痴をこぼす。故郷のブダペストの美しさが懐かしかったのだ。

そうするとProfessor Kolodneyは、ならばサンフランシスコに移ったほうがいいかもしれないな、とアンディに言う。それが頭を離れず、アンディは結局サンフランシスコにやってくる。そのときのシーン。僕の大好きな文章である。

次のフレームワークは誰にも分からない

今日はどうも話が脱線しがちだが、さて本論のインタビューを読んでみよう。

「when a company's understanding of itself shifts, when it changes its strategic paradigm, it sets out on a journey akin to moving from one mountain peak to another through what he calls a "valley of death."」

アンディ・グローブが言うところの「Strategic inflection point」(戦略的転換点)に企業や産業が巡り合うと、1つの山のピークから、もう1つの山のピークへと、「死の谷」を通って、たどりつかなければならない。そこをどういうリーダーシップで引っ張っていくのか。そんなことがテーマだ。

アンディは、インテルが現在あるのは、一世代前の大変化によって規定されたコンピュータ産業のフレームワークゆえのものだ、と前置きした上で、こんなことを言っている。

「That framework is changing now. The Internet is redefining software. The Internet is redefining the role of computing and communication and their interaction with each other. I still don't understand the new framework. I don't think any of us really do. But some aspects of it are pretty clear. It's proven to be not computing based but communications based. In it computing is going to be subordinated to the communication task. It is going to be very heavily dominated by the increasing portion of all intellectual property being created in digital form, stored in this platform, and therefore ready to be transported in digital form.」

インターネット時代の新しいフレームワークはまだ自分にもわからないし、誰にもわかっていない。

「None of us have a real understanding of where we are heading. I don't. I have senses about it. But decisions don't wait; investment decisions or personal decisions don't wait for that picture to be clarified. You have to make them when you have to make them. And try not to get too depressed in the journey, because there's a professional responsibility. If you are depressed, you can't motivate your staff to extraordinary measures. So you have to keep your own spirits up even though you well understand that you don't know what you're doing.」

どこに我々が向かっているのか、完全に理解している人なんていない。感覚としてわかる程度だ。でも、意思決定は待ってくれない。どれだけ「死の谷」を越えての旅が大変でも、リーダーはdepressしちゃいかん。それが、professional responsibilityなのだ。リーダーがdepressしたら誰もついてこない。「you have to keep your own spirits up」でなきゃダメだ。彼のオーラの一端が言葉になっている。

意思決定における直感の重要性

ここから議論は、Intuition(直感)の問題をめぐって行なわれる。

「Is there something about being a founder that gives you the self-confidence to make an irrational or intuitive decision that goes against the logic of the organization?」

議論の端緒は、クリステンセン教授の「組織の論理に反する非論理的・直感的意思決定を行うに足る自信というのは、創業者ゆえに生まれるものなのかどうか」という質問。そして直感はどう育てられるのかといった話に進む。ぜひじっくりと原文を読んでみてください。議論の中の

「You can promote intuition. You can recognize the innate aptitude of people to grasp what cannot be spelled out and cannot be shown by data, to be in tune with those vague attributes on the other side of that vague valley. And put them in positions where they can act on their intuition.」

というアンディの言葉が、彼の思想、シリコンバレーの思想をよく現している。

直感というのは伸ばすことができる。人間には生来、明確になっていない事象、データにも現れていない事象を把握する能力というのが備わっているものだ。直感で行動することができる場所に彼らを置いてやればいい。そうすれば伸びる。

シリコンバレーというのは、そういう考え方で次から次へとさまざまなトライアルが行なわれている場所である。だからむろん失敗も多いが、失敗を通じて人が育っていく。それは自らの直感に従って行動することによって、我々は深く学ぶことができ、成長することができるからなのである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
運営事務局に問題を報告

最新ブログエントリー

個人情報保護方針
利用規約
訂正
広告について
運営会社