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シリコンバレーのベンチャー投資における5つの本質的変化

2003/04/28 10:00
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シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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ITバブル崩壊後の深い反省をこめて(または、したふりをして)、シリコンバレーでは「Back to basics」(基本に立ち戻れ)と、Basicsも知らない連中も含めて、皆が言う。Garage Technology VenturesのWilliam Reichertによる「The New Entrepreneurial Reality」を読みながら、これからのシリコンバレーについて考えてみよう。

10年間で米国のVC投資総額は30倍以上に

「The world of venture capital and entrepreneurship has changed dramatically over the past decade. Not just in obvious ways-we have belabored the foolishness of the Bubble, the lessons we hope everyone (else) has learned, and how we are all sensibly returning to the old ways. But the fact is, no matter how the statisticians spin the numbers, we are not just returning to the early '90s; we are not simply going "back to basics;" we are not recreating the earlier disciplined, sensible venture world, with lower valuations and greater patience. It is a new world we are facing.」

米国のベンチャーキャピタル投資額の90年代の推移は、ドラマチックだ。

NVCA(National Venture Capital Association)のサイトにいくと数字があるが、1990年から毎年のVC投資総額が、29億ドル、23億ドル、35億ドル、38億ドル、42億ドルと、年間数千億円規模で安定的に推移し、1995年から2000年まで、77億ドル、116億ドル、$152億ドル、$214億ドル、$550億ドル、$1064億ドルと、異常な勢いで伸びていった。2000年は何と10兆円を越えたのである。

そしてそれからシュリンクして、2001年411億ドル、2002年212億ドルとなった。しかし、2002年の数字は、1998年の214億ドルとほぼ同じでまだ90年代前半に比べて大きい。

4月16日に、2003年の第1四半期の数字(34億ドル)をご紹介したが、この数字を単純に4倍すると、136億ドルとなり、1997年の水準くらいとなる。今年のこれから出てくる四半期の数字3つが第1四半期の数字を上回ってくるようであれば、VC投資額が下げ止まったと言えるわけだがどうなることであろうか。

もう昔には戻れない

Reichertの

「But the fact is, no matter how the statisticians spin the numbers, we are not just returning to the early '90s; we are not simply going "back to basics;"」

というのは、90年代前半に戻るのが「Back to Basics」だと統計数字を振り回しながらいう奴らがいるが、つまりVC投資額の適正規模は年間で数千億円だからそこに戻れというような主張のことであるが、そんなに簡単にその時代に戻れるわけがない、と言っているわけだ。

ここまでの文章の意味がわかると、後の文章はずっと読みやすくなる。

5つの本質的変化

彼は5つのポイントを挙げている。Competition、Market Opportunities、Returns、Valutions、Talentである。

まずはCompetition。90年代前半までの「シリコンバレーの基本」というのは、「誰もシリコンバレーなどに注目していない」という前提が必要だった。つまり、インサイダーしか知らない素晴らしいベンチャーに密かに早い段階で投資するというのが成功の秘訣だったと彼は言う。

「Venture capitalists trade extensively on inside information. In other words, they depend on finding out information that others do not know in order to get into the best deals and do the deals on favorable terms. Nothing wrong with that. These are private transactions, and VCs have to work hard to find good deals and get an inside track.」

しかし、

「The number of players, the number of conferences, the number of newsletters, and the number of databases have all expanded and linked, distributing information about startups and investors much more efficiently.」

となってしまった今、そんなおいしい話はなかなかない。ちゃんと競争しなければいけなくなったということなのだ。

「For both venture investors and entrepreneurs, this makes the world a much more competitive place. This is good news for most, bad news for some.」

2000年にVCを始めた僕自身としては、インサイダーだけの閉じた世界だった昔よりも、現在の競争環境の方が、知恵の出し甲斐があって面白いと思う。

2番目がMarket Opportunity。

「The '90s represented an unprecedented era of infrastructure investment-in networks, telecommunications and enterprise software. As a result, many new companies emerged and grew at amazingly rapid rates, even after they became big. We are unlikely to see that kind of broad-based investment and growth any time in the next several years.」

90年代のようなインフラ投資の凄さに匹敵する波はしばらく来ない。だから勢いに乗って巨大企業が生まれるというよりは、

「We will see hundreds of excellent mid-sized companies emerge in thisnext wave of innovation.」

となる。

3番目がReturns。

「The increasing competitiveness of private equity, combined with the narrowing of market opportunities, mean that success will more often mean 3x and 5x returns, not 20x and 50x returns.」

投資したリターンが20倍とか50倍になる時代は終わり、3倍とか5倍といったところに期待値を下げなければならない。

4番目がValutions。Valuationというのは、VCがベンチャーに投資するときに算定する投資対象ベンチャーの企業価値のことである。

「But now the harsh reality coming from the venture community is "the zero pre-money term sheet." At some point, however, these harsh valuations drive quality entrepreneurs away from the venture capital marketplace, and they either find a way to raise capital from other sources, or they abandon their entrepreneurial aspirations altogether.」

この「the zero pre-money term sheet」というのは説明を要する。投資対象の投資直前の企業価値を、Pre-money Valuationという。そのPre money valuationを元に、投資額に対する保有株式の数を算出する。そのPre-money valuationがゼロという最近の事例は、投資家がすべての株式を持つのを原則とし、その中からインセンティブとして創業者や従業員にストックオプションプールを用意するという考え方である。しかしこれではあまりに行き過ぎで、起業家に厳しすぎるという筆者の意見に、僕も賛成である。いずれ、落ち着くところに落ち着いていくだろう。

そして最後がTalent。

「While the '90s bred a generation of unrealistic investors and entrepreneurs, this era also caused us to build out an extraordinary infrastructure of intellectual property, engineering talent, management expertise, support skill, technical standards, international networks, public policy frameworks, and organizational practices; all of which make the innovation and venture creation process more efficient going forward. The next generation of successful entrepreneurs and investors will find and exploit these resources, giving them an advantage that the ‘90s generation did not have.」

90年代にこれだけ莫大なカネが投じられた結果として、たくさんの人材がさまざまなベンチャー経験をした。そのすべてが結局はこの世界の財産なっているのだ。これは全くもって正しい。

そしてこのコラムは、次の文章で締めくくられる。

「In sum, the venture world today and going forward is not like the old world of the early '90s. The challenges are different, and the opportunities are different. For most, it won't be as much fun as it was in the '90s, but for those who understand the opportunities, it will be very profitable.」

こういう新しいルールのゲームを「面白みがなくなった」と思う人はこの世界から去ればよく、この新しいBasicsを心から楽しもうと思う連中だけが、次世代を担うのである。僕もその一部分でありたいと考えている。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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