最終更新時刻:2009年7月10日(金) 6時14分
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GoogleがIPOしない本当の理由

公開日時:
2003/04/21 10:00
著者:
umeda

金曜日に引き続きもう少しGoogleの話をしよう。Google創業者のSergey Brinが、先月、PC Forumの席上で言った「GoogleはしばらくIPOしない」という発言がCNET News.comの記事になった(CNET Japan上では要約が読める)。このGoogleのIPOの問題は面白い要素をたくさん含んだ話なので、少し補助線を引きながら、Sergeyの発言の裏を考えていこう。

肉声部分は、

「"That's a lot of work, and I'm lazy," Brin joked. "It requires filling out a lot of forms. The S1, in particular, seems like a really long one," he said, referring to the form required by the government to start the IPO process.」

「"Thus far, laziness has won out," he added. "There are so many other things for us to do."」

「"The distraction, I think, is a problem (as well as) having to deal with numbers on a quarterly basis," Brin said.」

である。

ただ、「IPOするのは膨大なペーパーワークが必要で困るよね」というのは冗談。「怠慢なんだよ、皆、たくさん仕事があってさ」というのも冗談。

「最後の四半期ごとに数字を出すことに費やすことで本来すべきことに集中できなくなる」というのは本当。

でもGoogleのボードミーティングで議論しているであろうシリアスな「IPO戦略」とは、どれも無縁のお気楽な発言だ。

PC Forumでの発言は全てカモフラージュ

つまり、PC ForumでのSergey発言は、IPOについての質問が出たら、こういう適当なことでも言ってシリアスに返事をせずに帰ってくる、という社内での事前の打ち合わせゆえのものであろう。

実は、SergeyのPC Forumでの発言内容は、Jeremy Allaire(前マクロメディアCTO)のBLOGに詳しい(PC Forumに出席したJeremyはほとんどのセッションについて簡潔なエッセンス・メモをこのBLOGで残している)。興味がある方は是非全文を読んでみてください。実はIPO以外の話の部分が面白いが、そこについて今は触れないでおく。

これを読む限り、インタビュアーのEsther DysonもIPOの話をシリアスに質問したのではなく、聴衆が聞きたがっているだろうから、一応形だけ聞くわね、という感じで聞いたものに過ぎないようである。

まあそれはともかく、GoogleのIPO戦略について、思いつくままに、1つずつ論点を挙げていこう。

(1) その会社がIPOできるに足る実績を挙げているか。Googleは150%も200%もその水準をクリアしている。だから皆、GoogleがどういうIPO戦略を取るのか固唾を飲んで見守っている。

(2) 株式市場がどうか。IPOするに足るだけの株式市場に戻ってきているか。CNETの記事でも、

「That Google is not eager to go public is understandable given that many technology stocks are trading near all-time lows and investors are distracted by the war in Iraq.」

と、この点に簡単には触れている。公開後すぐに、Google自身以外の理由で株価が暴落するというような事態は避けたいと思うのは当然だ。

GoogleがIPOしない本当の理由

ただ、GoogleがIPOをしばらく後に持っていきたいと考える理由はもっと別のところにある。

(3) IPO本来の目的は資金調達である。Googleは今、資金調達をする必要があるのか。この問題の論点は2つに分かれる。1つは資金調達をしないと立ち行かなくなるか、ということであるが、それは全くない。2002年の売り上げは3億ドルに達し、2003年は7億5000万ドルまでいくという読み。四半期で黒字化してからもう2年以上たつ。もの凄いパフォーマンスであり、資金調達をしなくてもやっていける。

(4) 資金調達についてのもう1つの論点は、競争者と比較して十分な将来への投資ができるだけの資金があるか。利益が出てそこそこ会社を回していくことはできても、今こそ勝負と、資金を投入してR&Dや顧客獲得にカネを突っ込まなければならないのではないか、ということだが、ここは意見が分かれるところだろう。

(5) では(4)の論点で資金調達が本当に必要だとしたとき、未公開のままVCから資金調達ができるのか。これはYesである。今ならGoogleが増資するといえば、VCだけでなくStrategic Investorも列をなすことであろう。つまり、資金調達が仮に必要だとしても、未公開のまま資金調達しようと思えばできる。

(6) IPO後のリスクは何か。IPO後に四半期単位での業績が悪くなったり、経済全体が悪くなったりすれば、時価総額が下がる。そうなると潜在的に買収のターゲットになる。Googleほどポテンシャルがあってうまくやっている会社は、非公開でいる間は、買収リスクは存在しないが、公開したら、マイクロソフトも含めた列強に買収されてしまうリスクが生じる。

GoogleがIPOを急がない理由は、(1)から(6)の複合的理由だと、僕は考える。

Googleのボードメンバーは、Dr. Eric E. Schmidt (Chairman and CEO、元Sun Microsystems CTO、ノベルCEO)、Sergey BrinとLarry Page、つまり2人の「若き天才」(創業者)、そして2人の超大物ベンチャーキャピタリストJohn Doerr (Kleiner Perkins Caufield & Byers)とMichael Moritz(Sequoia Capital)、そしてエンジェルでIT業界の重鎮のRam Shriram。まさにドリームチームである。

Googleは10年に1度の物件

ベンチャー世界のプロ中のプロたちが、Googleは10年に1度の物件だと信じている。だから、「小金のためのIPOを急げ」などとけちなことをいう奴は1人もいない。どうしたら、Googleを、Netscapeのように挫折させずに、時価総額1兆円を超えるような会社にまで成長させることができるかということだけを、皆が考え抜いているのである。そういう文脈の中で、ベストなIPO時期を模索しながら、いつまでどういうやり方で未公開状態のまま成長させるのかという「IPO戦略」がシリアスに議論されているに違いない。現代シリコンバレーの企業戦略に関わる仕事で最もエキサイティングなものは、Googleの戦略立案とその執行だと言えるだろう。

ちなみに、シリコンバレーのNASDAQ企業を時価総額順に上から並べたリストがある。これは、日々の株価によって時価総額順が変化するダイナミックなリストだ。

インテル、シスコ、オラクル、eBay、アプライド・マテリアル、ヤフー、サンマイクロといったところが、時価総額1兆円を超えて安定している会社の例であるが、Googleはそういうところまで行ける可能性を秘めた候補企業なのである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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このエントリーへのコメント

2

...and Mr. Mochio Umeda was not available during the peak period. Just exploit them! John Doerr said, "we are willing to offer our expertise and stimulate the innovation".

  Taka on 2003/04/24

1

Mike Moritz, Sequoia Capital and John Doerr, Kleiner Perkins Caufield & Byers spoke at Stanford on April 9 and April 23 respectively. The videos are available via Internet amaizingly for FREE. Both mentioned "Google".

Managing Director of PwC said to me, "Silicon Valley's economy is really bad, but the good thing is that the extremely smart people are available at very low price now". Mike and John must have been too busy to speak even at Stanford during the peak period.

http://etl.stanford.edu/2002-2003/homenew.html

  Taka on 2003/04/24

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