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既存の音楽産業に対する不満から、アップルのユニバーサル・ミュージック買収に熱い期待

2003/04/15 10:00
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umeda

シリコンバレーで経営コンサルティングを行なう傍ら、ベンチャーキャピタリストとしても活躍する梅田望夫さんが、IT業界の先を読むのに役立つ英文コンテンツを毎日紹介していきます。これを読めば、英語と業界動向を読む力が同時に身に付くはず(このブログの更新は2004年12月30日で終了しました)。
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そうそう音楽配信のことばかり書いてもいられないのだが、アップルによるユニバーサル・ミュージック買収についての報道があってから、いろいろと面白いコンテンツが出てきたので、もう1日だけ、その関連の話をしよう。

まず、Tim O'Reillyが4月11日に書いたBLOGから。

著作権侵害よりもマスプロダクションの弊害の方が問題

「In Piracy is Progressive Taxation, I described how obscurity, not piracy, was the greatest problem for artists. The Christian Science Monitor just did a story called Independent's Day that describes the success of numerous small independent music labels, many of them started by artists.」

これが冒頭。参照している2つの記事のうち最初のものは、Tim自身が昨年書いたものである。「著作権侵害は累進課税である」というタイトルからもわかるように、この論文は、「誰からも知られることなく埋もれてしまう膨大な量の作品」のほうにこそ解決すべき真の問題があるのであって、売れに売れている作品の著作権侵害は、累進課税のようにみなして容認するほうがよいという立場を取っている。(ご参考 )

参照している第2の記事は、「Independents' day」というThe Christian Science Monitorの記事で、たくさんの独立系音楽レーベルの成功について、特にアーティストが始めたものの話を総括したものである。

デジタル音楽で新しいビジネスモデルは作れるか

最近のシリコンバレーの論調は、「悪いのは音楽レーベルなのだ、デジタル技術は音楽産業そのものを破壊し尽くしてしまうのではなくて、古いビジネスモデルでコスト構造が高くて問題だらけの既存音楽レーベルだけを破壊するもので、その先に新しいもっと素晴らしい音楽産業の仕組みを作るべきだ」というもので、その手がかりとして、アーティスト主導の独立系レーベルの考え方が位置づけられている。

「The article opens "What record industry slump? Independent labels say business has never been better." It describes how grassroots marketing, closer relationships with the target market, and lower costs, with more of the profits passed on to the artists, make successes out of records that would never have gotten over the profitability threshhold at the majors.」

草の根的マーケティング、ターゲット市場とのより密接な関係、低コスト構造、アーティストにもっと厚い利益を、といった組み合わせで、旧来の音楽レーベルでは不可能なビジネスモデルが可能になったとしている。

ジョブズならきっと上手くやれる

もちろん、アップルのジョブズに期待の声援が送られているのも音楽レーベル買収後の破壊と創造を期待してのものだ。本件をスクープしたL.A. Timesの4月14日の第2報「Jobs Thinks 'Different' and Many Marvel」(無料の利用登録が必要)は、サブタイトルが「Buying Universal Music could put Apple in a position to determine digital music's future.」となっており、

「If Apple Computer Inc. winds up with a blockbuster deal to purchase Universal Music Group, it will be because Apple Chief Executive Steve Jobs believes he has discovered the secret to selling music online.」

「Think different」のジョブズは有料オンライン音楽事業成功の秘密・秘訣を発見したと確信しているのではないか、だから買収話が出てきたのに違いないと、アップルへのそんな期待を強く表明した記事になっている。

さて、冒頭のBLOGの翌々日の4月13日にTim O'Reillyが書いたBLOGは、MacWizards MusicのGeorge Ziemannから届いたメールを、Georgeの許可を得て転載する形で書かれている。そのメールの始まりは、

「Currently, if you do a google search on RIAA statistics, I'm number one and two; you are three and four, and your article refers to me, so I know you know who I am.」

Googleで検索すると、俺(George)が最初に出てきて、お前(Tim)が次に来るけれど、と書いてあるのは、「諸悪の根源」と見られているRIAAのstatisticsについてである。去年の12月に書かれたGeorgeによるRIAA statistics分析は、実に細かな数字が出ていて面白いので、興味のある人は読んでみるといい。

Georgeの論点は、RIAAは、「NapsterやKaZaAのようなファイル交換によって、CD売上げが落ちた」と主張しているけれど、統計をきちんと見ていくと、1作品あたりの売上を上げて楽に利益を上げようとして、世の中に出す作品数を絞る、という音楽レーベルの戦略転換が墓穴を掘っているだけなんじゃないの、というものである。なお、昨年の音楽市場についてはこちらの記事をご参考。

冒頭でご紹介したTimの昨年の論考における問題意識、つまり、「誰からも知られることなく埋もれてしまう膨大な量の作品」のほうにこそ解決すべき真の問題があるということと呼応している(そもそも世に出るチャンスも少なくなっているではないか)のである。

まあ、解説を続けるとキリがないので、このへんで終わりとするが、シリコンバレーのアンチ既存産業側の論理武装・情報公開の厚みと、既存音楽産業破壊を目指してのエネルギーを、少しは感じていただけただろうか。

そんな勢力の熱い声援を受けて、ジョブズは果たして本当にユニバーサルを買う決断をするのだろうか。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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